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亡き人  作者: あしゅ
21/40

亡き人 21

太郎がバイトを終えて店を出た時

時計はもう、夜の11時を回っていた。

 

ポツポツと人が行き来する繁華街の中

道の向こうから、中年男性が話し掛けてきた。

「長野太郎か?」

 

「・・・はい・・・?」

太郎には見覚えのない男性だった。

 

 

「私はこの店の除霊をしていた者だ。

 だが先日クビになった。

 私の代わりにきみが除霊した、と聞いてな。」

 

太郎はハッとした。

その瞬間、ゼロが現われた。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーーン!」

 

「あっ・・・」

今来ちゃマズい! と太郎は思ったけど

呼んだのは多分、自分である。

 

 

「何だ? この霊は!」

驚いて叫ぶ男の方を、ゼロが見る。

「何だと言うおまえこそ何者だ!」

 

ゼロの、すぐ噛み付き返す狂犬のような反応に

男は ふふっ と微笑みながら、大声で名乗った。

 

「私は、スピリチュアル・長崎だ!」

 

あ、九州きた!!!

 

 

「・・・・・・・・」

ゼロは無言でモジモジした。

「何だ? その反応は。」

 

「あのお・・・、あまり道端で叫ばない方が良い名前かと・・・。」

目を逸らしながら、申し訳なさそうに言うので

余計に失礼さが増している。

 

 

「人の仕事を奪った上に、名まで愚弄するのか!」

「え?

 マジシャンの仕事を奪った覚えなんかないけど?」

「誰がマジシャンだ!」

 

「・・・だって、黒の上下スーツに蝶ネクタイにステッキ

 マジシャン以外の何者でもないじゃんー。」

 

怒りでワナワナと震える男に、太郎が慌てる。

「ゼロさん、この人、店を除霊してた人らしいですよ。」

 

その説明に、最大にいらん感想を言うゼロ。

「え? 男だったの? 女かと思ってたー。」

「何故だ?」

 

男の問いに、ゼロがズケズケと言う。

「だってごまかし方が、せせこましいもん。

 数箇所ほころびを残しといて

 チマチマお呼ばれにあずかろうなどさあ。

 バーン! と完璧に仕事をしてたら

 口コミで評判も広まるだろうに。

 そのセコさで、女霊能者の仕事だと思い込んでたよー。」

 

 

「ゼロさん・・・、もう止めてください。」

太郎がゼロを小声でたしなめる。

 

「え、何で?」

「その人、憤死しそうですよ。」

 

男のステッキを持つ手が、ブルブルと震えてるのを見て

ゾッとしたゼロが太郎に 逃げよう、と耳打ちしたところに

「逃がさんぞ!」

と、男が叫んだ。

 

 


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