亡き人 2
「ああ・・・、やっぱりだ。」
感心する青年。
「うっわー、すっげえスプラッタでしたねー。
私、霊、初めて見たから、すんげえビビりましたよー。
皆あんなんなんですかー?」
その能天気さに、とまどう青年。
「・・・ほんと何か色々と驚くなあ。
今まで来てた霊、全部恐いのばかりだったのに
あなたみたいな霊、初めてですよ。」
「だから、私まで霊扱いにしないで・・・、ん?」
再び青年が指差すので、自分の足元を見る。
「ほらあー、足、あるじゃん、・・・って
ああっ、浮いてるーーーーーーーーーっっっ!」
あまりのショックに、フラフラとよろけたら
頭が床をすりぬけて
下の階の部屋の天井から突き出てしまった。
「うわっ!」
慌てて戻ってくる。
「下の階、カップ麺の容器とかすげえ散らかってたよー!
汚部屋! またまた初めて見たけど、あれ、汚部屋!
下、どんな人が住んでるの?
って、そんな事はどうでも良くて
私、倒れる事も出来ないのか・・・。
うそ・・・、本当に霊になっちゃってるんだ・・・。」
ドロドロと陰気臭く落ち込んだが、さっさと立ち直る。
「でもまあ、なっちゃったもんはしょうがないよね。
えーと、どうやったら成仏できるんかな?」
「ぼくはただ見えるだけなんで
それはわからないんです。
すみません・・・。」
「あっ、いやいや
あなたのせいじゃないから気にしないで。
ちょっと浮遊しつつ、何とか模索してみるわ。
と言っても、これからどこに行けば良いんやら・・・。
もしかして、世界の観光地とか行けるんかな?
だったら、まずは
ちょっくらアルゼンチンに行ってみる。
お騒がせしてすいませんでしたー。
じゃ、そういうこってー。」
「あっ、ちょ・・・」
男性が止める間もなく、壁をすり抜け出て行った。
と思ったら、すぐに舞い戻ってきた。
「・・・何か、戻ってくるんだけどー。」
「そうなんですか。
何となくそういう気はしてたんですよね。」
「だよねー、好きなとこに行けるんなら
霊、ウハウハだもんねー。」
「はああ・・・
私、ここに地縛しちゃってるんかもー。」
落ち込む霊に、青年が申し出をした。
「あのですね、もし良かったら
ここにいてくれませんか?」
「へ? それはありがたいけど、でも何で?」
「ぼく、何か憑いてこられやすいらしくて
しょっちゅう恐い霊が来るんですよ。
でもあなたが来たら
さっきの霊、いなくなっちゃったでしょ?
あなたは恐くないんで
ここにいて守ってくれたらな、と。」
「ああ、なるほど、番人ならず番霊ってわけね。
でも私にそんな力があるんかなあ?」
「ぼく、見えると言っても
そんなにはっきりじゃないんですよ。
でもあなたの事ははっきり見えるし、会話も出来る。
凄く強い霊じゃないかと思うんです。」
「うーん、もしかしたら私たち、何か因縁があるんかも?
守護霊だったりしてー。」
「それはわかりませんけど・・・。」
ヘラヘラ笑う霊に、少し嫌がる青年。
「私もどうしたら良いか
よくわかんないしなあ・・・。」
考え込む霊だったが、答はひとつしかない。
「うん、成仏できるまで、ここでお世話になるよ。」
「ほんとですか? じゃ、よろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ。」
お互いに頭を下げ合うふたりであった。




