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亡き人  作者: あしゅ
18/40

亡き人 18

「だからさ、UFOっているいない、じゃないと思うの。

 だって、“未確認飛行物体” って意味なんでしょ?

 世間で確認できていない飛行物体って、あるじゃん。

 軍の開発途中の戦闘機とか偵察機とかさ。

 何で UFO = 宇宙人の乗り物 になってんの?

 てかさ、私が確認できない、ってだけでも

 UFO扱いして良いと思うの!」

 

ゼロがいつものように、自論を好き勝手に喋りまくる中

血まみれちゃんの様子が、いつもと違っていた。

どことなく、ソワソワしている。

 

 

「ん? どうしたの? 排卵日か?」

ゼロのくだらないギャグに、血まみれちゃんが髪を逆立てて怒る。

 

・・・と言っても、血まみれちゃんは無表情である。

普段はボーッと宙を眺めて静止している。

たまの意思表示も、首を縦に振るか横に振るかでしか出来ない。

 

だけど、しつこく一方的に喋りかけている内に

ゼロは、血まみれちゃんの感情の微妙な変化を

読み取れるようになっていた。

 

 

「ごめんごめん、死人に排卵日、何の卵だよ? っちゅう

 高度なブラックジョークだってばー。」

能天気にヘラヘラ笑うゼロに

血まみれちゃんが真面目な顔で、時計を見る。

 

「えーと、今、夜中の11時過ぎ。 それが?」

次に血まみれちゃんは、太郎の椅子を見た。

 

「ああ、わかった。

 『太郎の帰宅が遅くて心配』 って言いたいんだね?」

血まみれちゃんが首をブンブンと縦に振る。

 

 

「ちょ、やややや止めてーーーっ。

 おめえ首のところもケガしてるから

 千切れそうで、ハラハラさせられるって。」

ゼロが血まみれちゃんの首を押さえると、傷が少し消えた。

 

「あれっ? 治ったよ、ここ! 少しだけど。」

自分の手の平を見つめるゼロ。

 

「んー、この治癒能力、何か不安定だよね。

 この前、試してみた時は治らなかったのに。

 法則とかがあるんだろうか?」

 

 

考え込もうとするゼロに

血まみれちゃんが、必死にゼロの顔を覗き込む。

「あ、ごめん、太郎の話だったね。」

 

ゼロがカレンダーを見ながら言う。

「確かに最近、太郎の帰りが軒並み遅い。

 これは・・・。」

 

血まみれちゃんが身構える。

「彼女でも出来たのかなー?」

血まみれちゃん、カクッと肩をわずかに落とす。

 

「おっ、良いリアクションが出来るようになったじゃん。」

笑うゼロに、血まみれちゃんが涙目で訴える。

 

 

「うーん、太郎も青春真っ盛りだし

 放っといて良いんじゃないか、とも思うけど

 横道に逸れて、人生の目標をフイにする可能性もあるわけだし

 ああいう真面目くんほど、ハジケやすいしねえ・・・。」

 

何のかんの言って、血まみれちゃんの頼み事には弱いゼロ。

「わかった。

 どこで何をしてるんか、確認しとこう。

 んじゃ、帰りは太郎と一緒になると思う。

 行ってくるね。」

 

 

血まみれちゃんがうなずくのを見た後

ゼロが、ハヤタがウルトラマンに変身する時のようなポーズを取った。

 

「アルゼンチン!!!」

 

ゼロの姿が、血まみれちゃんの前から消えた。

 

 


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