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亡き人  作者: あしゅ
15/40

亡き人 15

「へえ、良かったじゃん。」

 

軽く言うゼロの口調に、素早く山口が怒り出した。

「はあー? 俺がイジメられてるのが良かったー?

 何言ってんの? このおばさん。」

最後のひとことに、ゼロの右眉がピクッと上がる。

 

「山口、今すげえ辛いっぽいから!」

「20歳過ぎたらおばさん、とか言う男ってバカだから!」

 

周囲の必死のなだめをよそに、ゼロは山口にガンをつける。

まさに背景は嵐にゴオオオの効果音である。

 

 

しばらく視線ビ-ムの攻防をやっていたふたりだったが

ふーっ と溜め息をついて、ゼロが壁にもたれ掛かった。

 

ら、壁をすり抜けて行った。

うりゃあ! と、腹筋で復活してきたゼロが山口に怒鳴る。

 

「おめえさ、最初バカにされて無視されたんだよね?」

「おう。」

「で、今度はそいつらにイジメられ出したんだよね?」

「そうだっつってんだろ。」

 

「おめえさ、そこの椅子、気になる?」

「・・・? いや?」

「そういうこっちゃ!!!」

「どういう事だよ?????」

山口が叫んだ。

 

「山口くん、人間は静かにしてくれ、近所から苦情がくる。」

太郎が慌てて山口をたしなめる。

 

 

「あ、ごめん。

 でも、ほんとわけわかんねーよ。」

山口の困惑に、ゼロが二度目の溜め息をついて言う。

 

「どうでも良いものって気にならないだろ?

 好きでも嫌いでも感情を動かすものは、どうでも良くないんだよ。

 つまりおめえは、元仲間にとって

 どうでも良くはない存在だ、って事。

 良かったね、存在感があって、というわけ。

 わかったか!」

 

おおおおおお、と一同から歓声が上がった。

「そうか、俺、特別な存在だったんだ。」

「良かったな、山口。」

あーあ、アホ揃い・・・、とゼロは横目でその様子を見ている。

 

 

「で、どうするんだ? 元仲間。」

福島が訊くと、山口が意見を仰ぐようにゼロを見る。

 

目を合わさずに、ひとりごとのようにつぶやくゼロ。

「別に、あえて意識する必要もないんじゃない?

 付き合っても良い事なさそうなヤツらだから

 その他大勢のカテゴリーにでも入れて、普通に接しとけば?」

 

「うん、俺、そうするよ。

 皆と会って、俺ちょっと変われた気がするし。」

山口がキラキラと語る。

 

 

ああ・・・、若え者の爽やかな輝きは

浮かばれない魂には悪い・・・

 

ゼロは嫌そうに目を背けた。

 

 


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