リアとスキル検証
食事が終わった後、シュンはリアと二人でスキル検証をはじめる。
彼らは倉庫へと移動した。
「検証って何からはじめるんですか?」
と彼は歩きながらたずねる。
「物作り系スキルは何かを作る際に有利な補正がつくか、何か素材を作り出せるかの二択なんだよね、基本的に」
リアは答えてから、
「ぷらもなんておじいちゃんでも聞いたことないんだから、おそらく後者じゃないかしら。既存の物を組み合わせることでぷらもって素材を生み出せる、というのはあり得るから」
と説明をつけ足す。
「なるほど。プラスチックを生み出せるスキルって可能性が?」
それだと理解できる気がする──シュンは思った。
「一応他のパターンもありえるけど、可能性が高いのはその二つだから。可能性が高いものから当たっていきましょ」
リアの判断は妥当だと彼も納得する。
「もっとも時間がかかるのは覚悟してね」
「わかります」
彼女の念押しにシュンはうなずく。
何が当たりかわからない状況から一から手探りでやるのだから、時間がかかるのは当然だ。
リアの祖父が持つ鉄造りの倉庫には何種類あるのかわからない素材が整然と並べられている。
「すごい」
それを見たシュンは感心した。
「まあね。恩を着せるつもりはないけど、あなた運がいいわよ。おじいちゃんは物作り系スキルの使い手で、私はその後継者だからね」
リアは誇らしげに胸を張りながら話す。
「ええ。実にありがたいです」
シュンは自分の幸運にはすでに気づいていて、心から感謝している。
物を作る系のスキルの持ち主たちだからこそ、彼の意味不明なスキルについても好意的だったのだ。
でなければやはり笑われて追い払われていただろう──シュンは思わざるを得ない。
「じゃあまずはこれからね」
リアが手に取って彼に差し出したのは、白い砂と黒い石のかけらだった。
「白砂と鉄のかけらよ。わりと一般的な素材なの。この二つを持ってスキルを発動させてみて」
シュンは戸惑って彼女に聞き返す。
「スキルってどうやったら発動できるんですか?」
「あ、そっか。あなたの場合はまずはそこからか……」
リアは自分の失敗に気づく。
「常時発動型と条件発動型以外は、スキル発動って言えば発動できるはずよ?」
そして説明した。
「じゃあひとまずやってみますね」
シュンは白砂と鉄のかけらをどちらも左手で握る。
「スキル発動」
と言うと、握ったものが変化して彼にとってなじみのあるプラスチックになっていた。
何かのパーツと言うより、パズルの一ピースにしか見える形である。
「あれ、これプラスチックですね」
シュンは信じられないものを見た目で、自分の手のひらにあるプラスチックをながめた。
「へえ、これがプラスチックなのね」
リアはと言うと特に驚いたそぶりもなく、珍しそうにプラスチックを見て微笑む。
「どうやらあなたのスキルは、『手にした素材をぷらすちっく? に変える』能力と考えてよさそうね」
「そうですね」
どんなスキルなのかわかったのはいいが──シュンは正直落胆する。
モンスターがいて魔法やスキルがある世界で、役に立つとは思えない。
「じゃあ次に強度を試してみましょうか」
「え?」
リアの提案に彼は驚いて彼女の可愛らしい顔を見つめる。
「スキルの強さ次第で作り出した素材の強度や性質は変わるものだから、現段階でどの程度のものができたのか確かめるのが基本よ?」
「あ、そうなんですね」
シュンは目を丸くしながらもなるほどなと思う。
「じゃあちょっと借りるね」
リアはひょいとプラスチックを手にとって床に置く。
そして倉庫に置かれていた金槌で殴りつける。
「あっ」
シュンは思わず声を上げたが、彼の予想に反してプラスチックは無事だった。
「へえ、硬いのね、これ」
リアは感心したようにまじまじとプラスチックを見る。
「鉄を曲げたりヒビを入れる強さで叩いたのにビクともしないから、これは鉄よりも硬いと考えられるわ」
「え、そうなんですか?」
彼女の言葉にシュンはびっくりした。
鉄より硬いものをプラスチックと呼んでいいのか──なんて疑問を同時に抱く。