謎スキルプラモ作り
「元の世界には帰れるんですか?」
と一人の少女が手を挙げて質問する。
「ええ、帰れます」
ラルクが答えるとホッとため息をついた生徒たちが何人もいた。
「ただ、必要な素材のうち、魔石はみなさんに集めていただく必要がありますが」
とラルクが答える。
「何でだよ?」
御子柴が不満そうに噛みつく。
「なぜなら送還するためにはご本人の魔力を使うからです。そのためには魔石を集め、魔力を蓄えていただかないとならないのですよ」
ラルクが落ち着いて説明すると、みんなそんなものなのかなという空気になる。
「次にみなさんのスキルを知るために鑑定させていただきます」
彼はさらにそう告げた。
「やらないとダメなんですか?」
女子生徒が聞くとラルクは優しい笑みを浮かべてうなずく。
そして頬を赤らめた女子に言う。
「たいていのスキルについて、我々が使い方を助言できると思いますよ。確実に強くなっていただきたいですし、みなさんもそのほうが安心でしょう?」
ラルクの言葉はもっとものように聞こえた。
「たしかに」
反対者は出なかったので一同は鑑定を受ける。
「水魔法力アップですか、いいスキルですね」
「おお、風の加護ですか、素晴らしい!」
白と青の服を着た男女が何やらつぶやいてはそう声をかけていく。
(鑑定をする人たちだったのか)
とシュンは思いながら見ている。
やがて一人の男性が彼のところへやってきた。
「では次にあなたの番ですね。スキル・オープン」
にこやかだった男性が無表情になる。
「……プラモ作り? 何ですかこのスキルは?」
「プラモ作り?」
ラルクたち異世界人は意味がわからないという顔になり、シュンの同級生たちは違った意味で変な顔になった。
「ぷっ、だっせー」
「あいつ、趣味がスキルになったんじゃね?」
馬鹿にした笑いが起こる。
「キモイプラモオタが、プラモのスキルに目覚めたの?」
「いや、こっちの世界にプラモなんてあるのかよ?」
うんざりした声と嘲弄、それに純粋な疑問もあった。
「プラモってこっちの世界にあるんですか?」
とシュンがたずねると、スキル鑑定をした男性はきょとんとする。
「プラモ? 何ですか、それ?」
「プラモないのか!」
「意味ねー!」
爆笑が起こった。
異世界人たちはだんだんと状況がわかってきたのか、シュンを憐れむか馬鹿にするような視線を向けてくる。
(くそっ)
シュンは悔しくなるが、こちらの世界にプラモが存在してないならたしかに何の意味もない。
「恥ずかしいくらいの外れスキルだな! やっぱりオタクは何をやっても負け組なんじゃないか!」
大きな声でシュンをはやし立てたのは御子柴だった。
「オタクといえば雲雀山は?」
誰かが言って視線がシュンから雲雀山に移る。
「あなたのスキルは……何と! 『雷王』ですか! 王の名を持つ上級スキルだなんて!」
彼のスキルを鑑定していた若くて美しい女性が感嘆の声をあげた。
「『雷王』ですか!? それはうれしい誤算ですね」
ラルクも目を丸くし、次にうれしそうな笑顔になる。
「きたきたきた、さげすまれていて僕の大逆転人生!」
雲雀山は興奮して気持ち悪い表情になり、クラスメートたちはドン引きしていた。
すごい能力なのか、いいなぁ──とシュンは思う。
どう使えばいいのかわからない外れスキルの彼とは大違いだ。
「これは素晴らしい。未来の英雄と出会えたことになりそうです」
ラルクはにこやかな顔で雲雀山に歩み寄り、握手をかわす。
「他のみなさんはどうですか?」
「王持ちは一人ですが、魔力増大、属性魔法スキル持ちが多いです。六名は格闘や武器戦闘スキル持ちですね」
ラルクの上に老齢の男性が答える。
「これはすごいですね。みなさまは英雄ぞろいのパーティーということになりそうです」
ラルクは興奮して白い頬をうっすらと紅潮させた。
その表情はやがて困惑へと変わる。
「ただ、困ったなぁ……初期の軍資金、三十名分しか用意してないんですよ。今日のところは休んでいただきましょう。こちらにも追加の準備が必要です」
と彼は言った。