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初めての依頼

「ではライセンスをお作りしますね。どれほど魔力が多かろうと、最初は一級からのスタートですがよろしいでしょうか?」


 受付嬢は申し訳なさそうにシュンに聞くが、彼に不満はないのでこくりとうなずく。


 彼女は机から一枚のカードを取り出す。

 透明なプラスチックのような見た目をした代物に、シュンは興味を持つ。


「それがライセンスですか?」


「ええ。大昔の『魔匠神』が考案し開発したと言われているもので、あなたの魔力を記憶する機能がある特殊な金属が使われています」


 受付嬢の言葉に彼はおおっと声を上げる。

 彼女はおそらく『魔匠神』のスキルを受け継いだのがリアだと知らないだろう。


 リア自身は驚いていないので、知識として持っているのだろうか。


「手に触れて魔力を五秒ほど流し続けてください」


 持っただけでは魔力登録ができないのかとシュンは思いながら、指示に従う。


 五秒ほど待った結果、ライセンスが白く変色して左上の部分に黒い丸印が一つ浮かぶ。


 受付嬢にそのライセンスを手渡すと、彼女は地球のカードリーダーのような青い機器にカードを通す。


「シュン様ですね。これであなたは一級冒険者と正式に認定されました」

 

 と受付嬢が言う。


「黒い丸印が冒険者のランクを表しているのよ。ランクがあがれば増えていくというわけ」


 リアが説明しながら自分のライセンスを取り出す。

 色はシュンのものと同じく白だが、黒い丸印は六つある。


「あら! 六級冒険者でしたか!?」


 彼女のライセンスを見た受付嬢が高い声をあげた。


「六級ってすごいんですか?」


「八段階の上から二番目ですから、相当の実力者ですよ。特に一番上はホルダーと呼ばれる、特別なランクですから!」


 不思議そうなシュンに、受付嬢が驚いた視線を向ける。

 いくら新人でもそれくらいは知っていると思っていたのだろう。


「彼は討伐テイカーと縁がない暮らしをしてきたから、無理ないのよ」


 とリアが微笑んで擁護する。


「そうなんですね……道理で圧倒的な魔力の持ち主なのに、無名なわけです」


 受付嬢は驚くより納得したようだった。

 

「せっかくですし、何か依頼を受けて行かれますか?」


 と受付嬢は提案する。

 シュンは迷ってリアに判断をあおぐ。


「ええ、そうね」


 リアはうなずいてからシュンに説明する。


「大きな都市だと実績がない、ライセンス取り立ては不利に働くことが少なくないから、まずは一つか二つ受けておくのがおススメよ」


「なるほど」


 彼がうなずくと受付嬢は何枚かの紙を彼らの前に差し出す。


「こちらはどうでしょう? あなたがたですと物足りないかもしれませんが、準備運動がわりにはなるかと思います」


 二人で依頼内容を見てみるが、シュンは自分が文字を読めることに驚く。


 そう言えば言葉も普通に通じているよな──彼は今までうっすらと抱いていた疑問が大きくなるのを感じる。


「どれ一級冒険者向けの依頼だけど、あなたはどれがいい?」


 リアはシュンがやりたいものを選べばいいと、決定をゆだねてきた。

 シュンは改めて内容を見る。


「薬草集め」


「地下道に住み着いたネズミ退治」


「落とし物探しています」


 彼は三つの依頼から一番下を選ぶ。


「一番時間がかかりそうなものを」


 受付嬢が目を丸くしている。


 シュンが選んだ依頼は三つの中で最も報酬が安いうえに、推定所要時間が一番多いものだ。


「あなたらしいわね」


 とリアは少しうれしそうに微笑む。

 彼の人となりを、彼女は少し理解できているようだ。


「では受注しておきますね」


 と受付嬢は言う。


「依頼主の家はこちらです」


 そして個人情報が書かれた紙を提示する。


「依頼主の話を聞いてもらえたら、何か手掛かりがあるかもしれません」


「わかりました」


 うなずいて建物を出たところで、シュンは小声で言う。


「落とし物や採取依頼もあるんですね。モンスター討伐ギルドなのに?」


「採取や落とし物の専門家がいればいいんだけど、それは大きな都市くらいにしかいないの。この町の規模だと討伐ギルドが兼任しているのが現実なのよ」


 リアは苦笑とともに答えを返す。


「そうなんですね」

 

 小さな町だと依頼も少なく専門家はやっていけないということだろうか。 

 シュンはこの世界の世知辛さを少し学んだ気分になった。

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