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異世界召喚士ラルク

「なんだ、ありゃあ?」


 廊下に出ていた男子生徒が外を示すと、そこには見たことのない黒い塔がそびえていた。


 さらにその周囲には赤い頭が二つある鳥が飛んでいるし、塔の周囲は紫色の池のようなものが広がっている。


「あれ、窓や壁がない?」

 

 とシュンは不思議に思う。

 教室と廊下はあるのに、その先にあるはずの校舎の壁や窓がなくなっていた。


「なんて生き物なのかしら、あれ?」


 女子生徒が恐怖と興味が等分にまざった声を出す。


「いや、そもそもどこだよ!?」


 また誰かの悲鳴にシュンは心の底から同意する。

 窓の外に広がっている風景は、どう見ても学校があった場所ではない。


「そうよ、なんで窓や壁がないわけ?」


 他の生徒もシュンと同じことに気づいたらしく叫ぶ。


「い、異世界転移だ! ここはきっと異世界だよ!」


 みんな驚き、固まり、混乱している中、一人うれしそうにはしゃいだのはシュンと同じクラスの雲雀山という男子生徒だった。


 おかっぱ頭を振り乱し、狂喜している姿は彼には不気味に映る。


「誰か来たぞ?」


 クラスメートが言った通り、白と青を基調とした服を着て、青い帽子をかぶった男女二十名と、彼らに囲まれるようにした三人の男性がやってきた。


「ようこそ、異世界人のみなさん」


 話しかけてきたのは中央にいる金髪青目の美少年だ。

 何人かの女子は状況も忘れてみとれている。

 

「僕の名はラルク。あなたたちを召喚した、召喚士です」


「ここはどこなんだい? 僕たちに何をしてほしいんだい?」


 雲雀山がわくわくした様子で話しかけると、ラルクと名乗った美少年はうれしそうに微笑む。


「ほう。呑み込みが早い人がいますね。これは心強い」


「僕が召喚したのは全員で三十名のはずですが」


 ラルクはそう言って鹿倉を見る。


「一人多いのは許容範囲でしょう。ここはそうですね、パライオンと呼ばれている国です」


「パライオン?」


「いや、なんで言葉が通じてるんだよ?」


 誰かが突っ込みを入れた。


「それは召喚の効果でしょう。召喚した対象と意思疎通ができるように補助効果があるのですよ」


 ラルクが律儀に説明する。


「異世界召喚があるくらいだから、翻訳効果があっても変じゃないのか」


 とシュンはつぶやく。

 言葉の翻訳は日本にあったものだからと彼は自分を納得させる。


「それでは僕の目的を説明しましょう。あなたたちにはこの世界のモンスターと戦っていただきたいのです」


 とラルクは言った。


「ひゃっほう!」


 うれしそうな声をあげたのは雲雀山一人だけである。

 シュンを含めて他の面子は状況を理解しようとするだけで精いっぱいだった。


「待ってくれ! いきなり呼んで、あんたたちのために戦えっていうのか!?」


「そうだ。これは拉致じゃないのか!?」


 男子たちを中心に抗議と怒りの声があがる。


 ラルクの周囲を固める男女二十名、それに左右の剣を持った男たちがそっと身がまえた。


「たしかにそうでしょう。ですが、あなたたちに納得していただけそうな報酬を用意いたしました。まずは話を聞いてもらえませんか?」


 ラルクは穏やかに一人一人に話しかけるように視線を動かしながら言う。

 その声を聞いた者からは怒りや敵意が抜けていく。


「報酬次第じゃたしかに聞く価値はあるな」


 と鹿倉が言った。


「モンスターと戦えってことは危険があるんだろう? それに見合った報酬なんだろうな?」


 彼の言葉に多くの生徒がハッとなる。


 モンスターとは彼らにとって未知の存在であり、どれくらい危険なのかもわからないのだ。


「ええ。まずは説明させていただきますが、あなたたちは召喚された時点で『天のギフト』を手にしているはずです」


「ギフト?」


 鹿倉がラルクに聞き返す。


「ええ。一人一人が持つ特殊な効果がある能力のことです。またあなたたちの全身は魔力神経が目覚めていて、魔力を扱えるようになっています」


 ラルクは説明を続ける。


「はぁん。素手のド素人にいきなり怪物と戦えと言わない程度の分別はあるわけか」


 鹿倉がいやみな言い回しをしながらにやりと笑う。


「ええ。僕はみなさんに報酬を渡して、力になっていただきたいのです。みなさんが死ぬのは僕にとってとても不利益なんですよ」


 とラルクは応じる。


「まあ集団を異世界に召喚するなんて、そう簡単にできるはずがないもんね」


 訳知り顔でそんなことを言ったのは雲雀山だった。

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