シュンの魔力
次の日の朝、ご飯を食べた後にリアに誘われてシュンは倉庫へとやってくる。
「じゃあ今日はまずはシュンの魔力を測らせてもらおうかな」
と言ったリアの表情はウキウキしていて、楽しみにしていたことがうかがえた。
「どれくらいの魔力があるのかなぁ」
対するシュンは漠然とした不安がある。
「心配いらないでしょ。少なくともヒューマンの平均よりはかなり多いはずよ」
リアは笑顔で彼を励まして、倉庫の奥から一つの水晶玉を取り出す。
「何ですか、それ?」
「『計測水晶』と言って一番手軽に魔力を計測できるアイテムよ。大きく八段階でしか分類できないけど、だいたいはこれで大丈夫だから」
シュンの質問にリアは答えて、彼に向かって差し出した。
「両手で持って魔力を流し込んでみて。すると色が変わるから」
「変わった色で魔力量が計測できるってことですか?」
フィクションで見たことがあるパターンだなと思いながら、シュンは聞き返す。
「まあそんなところよ」
リアがうなずいたので彼は計測水晶に魔力を流してみる。
計測水晶はほんのりと光りはじめてまずは赤、それからオレンジ、黄色と変化していって最後に白くなった。
「白……ヒューマンの中じゃおそらくトップレベルじゃない? すごいわ」
リアは大きく目を見開いて興奮し、早口で言う。
「え、そうなんですか?」
シュンはきょとんとする。
白がどうすごいのか彼には理解できていないのだ。
そのことに気づいたリアが急いで説明をする。
「白は八段階で上から二番目ね。一番上だと黒くなるの」
「へー、そうなんですね」
理屈はわかったものの、やはり彼は実感できない。
リアは仕方ないなと思いながら、ついでに言った。
「おじいちゃんは黒、私は紫よ。紫は白のすぐ下ね」
彼女の祖父が最も魔力が多い色と知っても、シュンは意外に思わない。
接した時間は短いものの、何となくそういう雰囲気がただよっている人物だからだ。
「じゃあリアよりも俺のほうが魔力は多いんですか?」
彼にとって意外だったのはリアの魔力量のほうである。
まさか彼女が自分より下だとは考えてもいなかったのだ。
「ええ。私より魔力がヒューマンなんて、シュンで二人目かしら」
リアは感心したように言う。
「ああ、俺以外にもいるのですね」
シュンは複雑な気分になる。
リアよりすごいのは自分だけなんて状況のほうが望ましかったという思いと、それは大それたことではないかという恐れに近い感情が共存していた。
「もっともその人は『魔法神』という超越スキルを持った人だから、超越スキルを除けばシュンが一番と言えるかもしれないわね」
次に放たれたリアの言葉は、シュンにとって爆弾に等しい。
「超越スキルを持った人と会ったことがあるのですか」
この世界の中でもしかしたら頂点と言える存在なのでは──彼がひそかにそう思っているのが超越スキルを持つ者だ。
「ええ。剣帝様と魔法神様のお二人とだけ」
リアの答えにシュンはまた驚く。
「意外と会えるものなんですか?」
彼の問いに彼女は笑って首を横に振る。
「おじいちゃんが特別なだけで、普通は無理よ。お二人ともおまけだった私のことなんて覚えてないんじゃないかしら」
どうやらリアの祖父は自分が考えていたよりも大物らしい──シュンはそう思うようになった。
「シュンが強くなれば興味を持っていただけるかもしれないわね。剣帝様はともかく、魔法神様はヒューマンだから」
リアの言葉はシュンにとって一つの目標になりそうである。
「どれくらい強くなればいいのかとか、全然わからないですけど」
彼は苦笑した。
ショットマシンガンさえ解禁されたらそれなりにいけるのだろうか。
なんて考えているとリアは微笑む。
「あなたの場合はいろんなものを作って売りに出すという手もあるわよ。こちらの世界でのお金を稼げるし、名前をあげられるもの」
「あ、いいアイデアですね、それ」
お金の問題を解決できるところが特に素晴らしい。
いつまでもリアと祖父の脛をかじり続けるのは申し訳ないので、売りものになりそうなものを作ってみよう──シュンは考えてみる。
「お金が貯まったらこの世界で何をするのか、考えてもいいんじゃない?」
「はい」
リアの言葉にシュンはうなずいた。