マシンガンがあまりにも強すぎる件
本日の訓練はいったん終了ということでリアとシュンは森から戻ってくる。
「試行錯誤に使う素材、この倉庫内にあるものは自由に使っていいけど」
と倉庫のドアを開けながらリアは言った。
「ありがたいですけど、まずは白砂で練習すれば充分だと思います」
練習すればスキルが成熟するし、失敗しても素材を無駄にしなくても済む。
「素材に戻せるのなら、失敗しても素材を失うわけじゃないから、そんなに気にしなくてもいいのよ?」
リアの指摘に彼はうなずき、ついで力のない笑みを浮かべる。
「わかってはいるんですけど、何となくもったいない気がして。何度でも使えるだったら無駄にしているわけじゃないはずよね」
とシュンは答えた。
どちらかと言えば自分に言い聞かせたのであり、彼女もそれを察したのでうなずくにとどまる。
「まだこちらの世界に来たばかりなんだものね。即時対応してっていうのは無茶よね」
リアはよき理解者で配慮もしてくれるからつき合いやすい。
シュンはそう感じて彼女に感謝する。
白砂を握って彼はスキルを発動させた。
「スキル発動」
できあがったのは彼が見たことがあるマシンガンだった。
銃のほうに連射機能をつけるというアイデアだから、こちらのほうが彼はイメージしやすい。
「それがましんがんってやつ?」
興味津々に目を光らせているリアにシュンはうなずく。
「これであとは弾は散らばるイメージで」
シュンはイメージして弾を作成する。
「試し撃ちは外でやってね?」
「もちろんです」
リアはからかっただけだったなのだが、銃に気を取られていたシュンは真剣な顔でうなずいた。
外に出た彼は銃を空に向けて試し撃ちをおこなう。
調整したので音は出ず、魔力弾が大量に撃ち出され、そして散らばって消えていく。
一発一発が十発くらいに散らばる仕組みになっているのだが、それが一秒百発ペースで撃ち出される光景はシュンから見ても爽快感がある。
「これは……」
近くで見ていたリアが顔色を変えた。
「ねえ、シュン」
「はい?」
いつになく怖い声だったのでシュンはびっくりして彼女を見る。
「そのましんがんってやつ、ここぞって時以外に使うの禁止ね」
「え……」
シュンは固まった後、おそるおそる聞く。
「何がまずいのか、教えてもらってもいいでしょうか?」
「むしろまずい部分しかないわよ。あまりにも強すぎる」
リアに言われてシュンは本当にやばそうだと思い、とりあえず銃を素材に戻す。
「私が目視した感じだと一秒に千回くらい攻撃できるようなものでしょ?」
「ええ、そうです。すごいですね」
一秒に百発撃ち出し、それが十発ずつに散らばっていくのだから、単純な計算だと一秒に千回攻撃だと言える。
計算したのではなくて見えていたのか──シュンはリアが尋常ではない存在、超人の部類なのだろうと感じた。
「私の見立てが正しければ、あれは五級か特級のモンスターにしか使わないほうがいいと思う」
「五級? 特級?」
いきなり出てきた区分にシュンは目を白黒させる。
「あ、ごめん。説明してなかったわね」
リアはハッとして自分がまだ教えていないことを言ってしまったと反省した。
「モンスターの等級よ。一級が一番弱くて、特級が一番強いの。あなたが見たルージュアントやグリーンスパイダーは一級ね」
そして彼女はシュンに説明してくれる。
「そうなんですね」
彼はなるほどなと納得した。
(ええっと特級がS級モンスターで、五級がA級、一級がE級ってことになるのかな)
彼は脳内で自分がわかりやすいものへと置き換えてみる。
とりあえずすごく強いモンスターもいるのだろう──彼は予想した。
「普段は普通の銃のほうがいいのでしょうか?」
とリアに問いかける。
「そうね。威力重視や手数重視の銃を作るなとは言わないけど」
リアは一度言葉を区切って、そして提案した。
「あなたの場合は相手に応じて使う銃をかえていくスタイルのほうがいいかしら。そのほうが手札も隠しやすいと思うけど」
「う、うーん。おっしゃることはわかりますが、そんな器用なこと俺にできますかね?」
シュンは最も重要で根本的な問題を口にする。
「……やれるだけやってみましょう。私も手伝うから」
「はい」
リアに懇願するように言われたので、彼は頑張ろうと思った。