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成功への道

ルージュアントを倒し終えると、リアは素材を集める。


「ルージュアントの甲殻はポーションの材料になるのよ」

 

 と言われたのでシュンも彼女を手伝った。

 集め終わるとリアは腰につけていた白い大きなポーチを開ける。


「それは?」


 アイテム袋のようなものだろうなと思いつつシュンは聞いた。


「『セーブポーチ』よ。持ち主の私にしか開けない優れものよ」


 リアは少し得意そうに答える。


「持ち主にしか開けないなら防犯上便利ですね」


 とシュンは感想を言った。


「防犯を考慮するならこれより優れたものはあるけど、持ち運びを考えるとね」


 リアは複雑な表情になる。

 セキュリティがしっかりしたものは携帯できないということだろう。


 ゲームだとそういう設定はけっこうあるもんな──とシュンは納得する。


「おじいちゃんなら作れるかもしれないけど、そういうのには興味がない人だから」


 リアは困ったものだと笑うが、隠しきれない祖父への愛情と敬意が宿っていた。

 

「この次はグリーンスパイダーですか?」


「ええ。ルージュアントと違って直線以外の動きもできるから、手強くなるわよ」


 シュンの問いにリアは説明と励ましを一緒に返す。


「頑張ります」


 彼としては他に言いようがなかった。

 リアを前にして彼らは森の奥へと進んでいき、やがて彼女は立ち止まる。


「ほら、あそこの木の幹に」


 彼女が指をさした先には体が二十センチくらいある、緑色のクモが一匹いた。


「あれがグリーンスパイダーなんですね」


 シュンは彼女に言われる前に銃をかまえて発射する。

 見事に命中してグリーンスパイダーの死骸が下に落ちた。


「やるわね」


「慣れてきました」


 シュンは驚く彼女に照れ臭そうに笑う。


「追尾弾を撃てたらいいかなとも考えたのですが」


 彼の言葉にリアは首をかしげる。


「追尾弾? 何それ?」


「えーっと」


 シュンはしまったと思いながら急いで説明を考えた。


「避けた相手を追いかけていく効果を持った弾です」


「へえ、そんなものがあなたの世界にはあるんだ」


 リアは感心し、うーんとうなる。


「魔力さえあるなら物量攻撃のほうが強そうだけどね」


「それはたしかに……避けられない数の弾を撃てばいいというのはアリですね」


 とシュンは同意した。

 もちろん大量の弾を撃てない状況だってあるのだろうが。

 

「それなら散弾銃かマシンガンかなあ」


 彼はアイデアを口に出す。


「その二つは何なの?」


 当然リアは質問をする。


「散弾は簡単に言うと弾をまき散らすタイプの銃、マシンガンは弾を連続で撃てる銃のことだと思ってください」


 我ながら雑すぎる説明だな──シュンはそう思いながら言った。


「そんなすごいものがあるのね」


 リアは本当に驚いたらしい。

 

「こっちの世界とは技術の発達の仕方が違いますからね」


 シュンは答える。


 どちらの世界が進んでいるのか彼にはまだわからないが、リアの驚き方から想像するに銃火器については地球のほうが上なのだろう。


 そもそも銃自体が存在していないなら当たり前だが。


「その二つがあるならかなり強くなりそう!」


 想像をめぐらせて無邪気に喜ぶリアにシュンは苦笑する。


「二種類も銃を使い分けるのは大変ですけど」


 彼は言ってから気づく。


「待てよ?」


 地球ではもちろん散弾銃とマシンガンは別物だが、こちらの世界は彼が作るものがすべてだ。


「散弾と連射は共存できるんじゃないか?」


 口に出してみると無茶なように思う。


 だが、素材をもとにシュンがイメージで作るのだし、弾も実在するものではなく彼の魔力で形成されるものだ。


「銃のほうに連射機能をつけて、弾のほうは散弾になるように俺が魔力を調整すればいけるんじゃないか?」


 地球の常識が通用しない場所であり、通用しない方法で作るからこそできること。


「失敗しても元々でいいですよね?」


 シュンが聞くとリアは大きくうなずいた。


「成功への道はひらめきと試行錯誤で舗装されている。伝説の工匠がかつて言ったそうよ」


 と彼女は言う。


「やってみたらいいんじゃない?」


「ありがとうございます」


 許可を得てシュンはホッとし、同時にわくわくしてきた。

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