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森での初戦闘

 二人が歩いているのは人が何度も往復した結果できあがった道だ。

 シュンはちらりと上を見て数歩先を進むリアに話しかける。


「森には日光が差し込むんですね」


「ええ。ここの森は奥に入っても大丈夫なのよ。日没後も滞在する予定なら、光源を持ち込む必要があるけど、今日はいらないでしょう」


 リアは振り返って言う。


「ですよね」


 単にモンスターと戦う練習をする予定ならそうだなとシュンは同意する。


「グリーンスパイダーもルージュアントも森の奥まで行かなくても、見つけられる種だから」


 とリアは言う。

 そういう理由で今回の目標として選んだのだろうな──シュンはそう感じた。


 彼はきょろきょろと森を見回す。


「鳥が羽ばたく音が聞こえたと思うのですが、見当たらないですね」


 シュンは不思議に思って話しかける。


「この森にいるのは温厚だったり臆病だったりする種だから、私たちの接近に気づき次第こっそり逃げ出していると思うわ」

 

 リアは苦笑に近い顔で答えた。


「そんなものなんですね」


 そう言えば虫の話しかしなかったなとシュンは思う。

 鳥たち逃げ出して戦闘にならないと彼女はもちろん知っていたのだろう。


「彼らはグリーンスパイダーやルージュアントを探して食べるのだけどね」


「あ、そうなんですね」


 こっちの世界の鳥も虫を食べるのか──シュンが思ったところで、リアが足を止める。


 そして彼を見てから前方の土に視線をずらす。


「いたわよ、あれがルージュアントよ」


 シュンが視線を向けるとルージュ色をした体長十センチくらいのアリの群れがいる。


「けっこう大きいですね」


 と彼は目を丸くした。

 アリだと言うからもう少し小さいと彼は思っていたのだ。


「アリはアリでもモンスターだからね。油断しなければ大丈夫だけど、戦えない人が不意を突かれたら危ないわ」

 

 リアの言葉を聞いたシュンは漠然として不安になる。

 つまり戦えない人がうっかり森の中に入れば危険なのではないか。


「まあこの辺には私たちくらいしかいないし、ルージュアントも理由なく森の外に出ないだろうから、心配はいらないでしょう」


 そんな彼の心を読んだようにリアは言う。


「ならいいんですが」


 シュンはほっと息を吐いたところで彼女が指示を出す。


「じゃあさっそく銃で撃って倒してくれる? いきなりは難しいわよ」


「でしょうね」


 と言いながらシュンは銃をかまえて発射する。


 音をたてずに弾を撃つと、一番手前側にいるルージュアントの少し左に弾が撃ち込まれた。


「あ」

 

 外れてしまい声を出すと、ルージュアントたちは彼らに気づいて体の向きを変える。


「仕方ないわよ。いきなり命中させるなんてできないもの」


 リアは慰めるように言って金槌を握る右手に力を込めた。

 その間、ルージュアントたちは彼らのほうに向かって前進している。


「続けて狙って。守るのは私に任せて」


「はい」


 リアを頼もしく思い、シュンは気持ちを落ち着かせて第二の弾を撃ち、今度は戦闘のルージュアントの頭部に命中して倒した。


「やった」


 喜びからシュンは思わず声を漏らす。


「手を止めないで」


 とリアの声にすぐに彼は我に返る。


 目視からの大雑把な計算だが、まだルージュアントは十匹はいてどんどん距離を詰めてきていた。


 喜んでいる場合ではないのは彼女の言うとおりだ。

 連続で発射して一匹、二匹と倒していく。


 俺が自力で倒せたのは合計四匹で、残り六匹は目と鼻の先に迫ったところでリアがまとめて金槌で叩き潰してしまう。


「すごい」


 アリに勝てるのはともかく、ズンと地面が揺れる一撃の破壊力には目をみはる。


「慣れて熟練したらシュンも似たようなことができるわよ」


 このくらい大したことはないとリアは笑った。

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