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ルミネ茶

「魔力の使い方を覚えるためにはいくつか方法があるけど、シュンは今まで魔力となじみがない暮らしをしていただろうから……」


 リアは一人そう言いながら倉庫に向かう。


 ぽつんと残されたシュンが手持ち無沙汰なまま待っていると、彼女は赤い液体が入ったガラスのビンを手にして戻ってくる。


「はい、ルミネ茶よ」


「ルミネ茶?」


 差し出された赤い液体をシュンは不思議そうにながめた。


「ええ。飲んでみればわかると思うわ」


 リアの言うことなので彼は疑わず液体を飲み干す。

 トマトジュースとでも思えばいい──なんて考えながら。


 液体は無味無臭だったため、抵抗感を覚えずにすんだ。


「うん?」


 体がぽっかぽっかしはじめたと思いきや、うっすらと赤く光を放ちはじめたことにシュンは気づく。


「あれ、これは何ですか?」


「その光ってるものが魔力よ」


 リアはにこりとして彼の疑問に答える。


「へええ!」


 シュンは魔力が自分の体を包んでいるという状況を可視化され、感嘆の声をあげた。


「たしかにこれはわかりやすい! すごいです!」


「そんなに反応してもらえると、これを選んだかいがあったわ」


 興奮してはしゃぐシュンを見てリアも口元をほころばせる。


「あとは魔力を流すイメージをすればいいのですね」


 とシュンは言ったものの、どうやって動かせばいいのかわからない。


「魔力はイメージが重要よ。自分の手を動かすみたいに、ゆっくり動かしてみて」


「自分の手みたいにですか」


 リアの助言を聞いてシュンはさっそく実行してみる。

 すると右手に全身の赤い光が集中しはじめた。


「おお、動いた! わかりやすい!」


「そんなあっさりできちゃうなんて、あなたすごいわね」


 シュンは彼女の助言のおかげだと喜ぶが、リア自身はいきなりの成果に驚きを隠せない。


「そうなんですか?」


 きょとんとした彼に彼女は大きくうなずいて見せる。


「一週間くらいかかるのは普通なのよ。早くて3日くらいかしら。とんでもない逸材だわ」


 リアの賞賛を聞いてシュンはうれし恥ずかしい気分になってきた。


「ありがとうございます」


「いいのよ、本当のことなんだから」


 とリアは言ってから考え込む。


「これだけ順調ならジュウを作って魔力弾を形成して、装填して発射する工程に入ってもよさそうね」


「よろしくお願いします!」


 次のステップに進めるとなってシュンは少しうきうきする。

 銃をカッコよく撃つフィクションを見て、ひそかな憧れを抱いていたのだ。


 この世界では命がけになるだろうが、それでもある種の興奮をゼロにすることはできない。


「と言っても魔力弾は自力で何とかしてもらうしかないのよね。私が教えられることじゃないから」


 リアは笑みを消して真剣な顔で言う。


「魔力弾を射出するのは後衛だからですか?」


 シュンは問いかける。


「前衛でもやれなくはないけど、至近距離なら殴るほうが早い場合が多いのよ」


 リアは苦笑に近い表情で答えた。


「そんなものですか」


 至近距離で銃を撃つ速さと殴る速さ、どちらが勝るのかシュンには想像もつかない。


「えーっと、魔力弾はっと」


 シュンは脳内でしっかりイメージをしながら銃弾を作ってみる。


 それから先ほど作った銃と同じタイプを白砂を使って作り出し、銃弾を装填して空にめがけて発射した。


 音が響いてどこかで鳥が羽ばたく音が聞こえ、リアが顔をしかめる。


「音、消せるなら消したほうがいいわよ。自分の位置を敵に教えるという間抜けな結果になりかねないから」


「あ、そうですね」


 シュンは考えてみて、イメージを銃に伝えた。

 そしてもう一度発射してみると今度は音が生まれなかった。


「こういうところは便利ですね」


 と彼は言う。

 自分の意志一つで音を消すことができ、しかも撃った時の反動が何もない。


 標準もつけやすいだろう。


 本物の銃にケチをつけるつもりはまったくないのだが、銃の扱いに慣れていない彼としてはスキルで作ったもののほうがやりやすいのは事実だった。

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