センスがある
食事がすんでリアが淹れてくれたお茶を飲む。
「青い」
液体の色にシュンが驚くと彼女はクスっと笑う。
「フージ茶よ。スープに入っていたレッドレンズと同じく、魔力の回復を手助けしてくれる効果があるの。スキルを日常的に使う暮らしをするなら摂取を心掛けたいわね」
「あ、そっか」
フージ茶もレッドレンズという豆も、こちらの世界ならではの食品だと考えてよさそうだ──シュンは解釈する。
「じゃあ話の続きね」
「俺が作った銃に魔力を流して撃つんでしたっけ? 上手くできるかな」
シュンは不安になった。
「いきなりは無理だろうけど、物作り系のスキルは本人のイメージ力がかなり重要よ。試行錯誤を重ねていけば精度はあがるしね」
とリアが言う。
「なるほど、とにかく練習あるのみですね」
シュンは彼女が伝えようとしていることはわかったという。
「だいたいそんな感じ」
リアも急に雑になったが、まずはやらせてみようと考えてのことだ。
「じゃあスキル発動!」
シュンはさっそく銃を作ってみる。
彼でもイメージしやすい拳銃でそれをかまえてみるが、重さは感じない。
外見が似ているだけの別物だという認識でいいだろう。
「室内で撃ってもいいのですか?」
老人は出ていき、食器は片づけられたがまだ彼らは室内にいる。
魔力の弾を撃ってもいいのか、シュンには判断できないところだ。
「外でやってもらうわよ、もちろん」
リアがいたずらっぽく笑う。
「ですよねー」
二人で笑って小屋の外に出る。
相変わらず気持ちのいい青空だった。
「じゃあ空をめがけて撃ってみて」
「ええ」
リアの指示に従い銃口を空に向ける。
そして彼は詰まった。
「魔力の流し方がわからないんですけど」
「あっ」
シュンがおそるおそると言うと、リアは自分の失敗に気づいて声を上げる。
「私も誰かのことを言えないなぁ」
てへっと舌を出す姿は可愛らしく、シュンは状況も忘れてなごむ。
「じゃあとりあえず銃を消してみようか? 自分が作ったものなら消えろと念じるだけで消せるはずよ?」
「消えろ」
リアの言葉をさっそく実践してみると、銃はあっさりと消える。
「おお、一回で成功するとは」
「どうもシュンはセンスがあるみたいね」
少し感動したシュンにリアが言った。
「俺にセンスが?」
「ええ。ただ作ったものを消すだけでも、練習しないとできない子はけっこういるから」
聞き返した彼に彼女は笑顔を向ける。
「そっか……俺、スキルを扱うセンスがあるかもしれないのか」
シュンは自分の言葉で反芻してみると、何だか体の内側から勇気が湧きあがってくるような気がした。
「ええ、かなりね。もしかしたら私よりも」
リアは微笑んで上方修正してくる。
「え、そうかな」
シュンはびっくりして彼女の可愛らしい顔を見つめた。
「だってあなたがスキルを使いはじめたのは今日が初めてでしょ?」
リアの言葉に彼は首を縦に振る。
「なのにそれって、私自信をなくしちゃうそうだわ」
彼女がため息をついたのでシュンはあわてた。
彼女には感謝しているし、彼女のおかげで勇気も希望を持てたので何とか励ましたい。
だけど何も言葉が出てこない──シュンは自分が情けなく思う。
「あの、上手く言えないんだけど、リアのおかげで俺は自信を持てました。自分で気づいてないだけで、リアは素晴らしいところがたくさんあると思います」
必死に頭を動かし、言葉を選びながら自分の気持ちをリアに伝える。
リアは目を丸くして聞いて、少しうれしそうに笑う。
「ありがとう。何だかあなたにそう言ってもらえるとうれしいな。何でかしら?」
彼女にそんなことを言われてもシュンにわかるはずもなく、二人してちょっと首をかしげることになった。
そしてそれがおかしくて声を立てて笑いあう。
「さあ魔力の流し方を教えるわよ。すぐには無理だろうけど、覚えてもらえるように頑張るからね」
とリアは言った。
教えるほうが頑張るというのはシュンにとってはすごく新鮮で、驚きながらもうなずく。
「俺も頑張って覚えますよ」
まるで誓いだな──彼は思いながらちょっと気恥ずかしくなる。