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休憩時間

「そろそろ休憩にしよう。飯の時間だ」


 老人が二人を迎えに来て、シュンはいつの間にか時間が過ぎていたと驚く。


「ありがとうおじいちゃん」


「ありがとうございます」


 リアに続いてシュンも礼を言う。


「何の。うちの孫は役に立っているか?」


 笑いながら老人は彼にたずねる。


「ええ。物知りだし、説明もわかりやすいし、とてもお世話になっていてありがたいです」


 シュンの答えを聞いたリアは得意そうに胸を張った。


「ふふん。私だって日々成長しているのよ、おじいちゃん」


「うむ」


 祖父は彼女を見て相好を崩す。


 孫娘に厳しいのではなく、可愛がっているので甘やかさないように気をつけている。


 シュンはそんな印象を抱く。

 倉庫を出て徒歩一分ほどの距離にある木の小屋に戻ってくる。


 通されたのは温かみのある部屋で、三人分の料理が木のテーブルの上に並んでいた。


「大したもてなしはできないが、そこは許してくれよ」


 祖父が朗らかに言うとシュンは恐縮する。


「こうしてお世話になっているだけでありがたいのに」


 文句なんて言えるはずがない。


「うむ。ひと口に異世界人と言ってもいろいろいるようじゃが、シュンは善良な部類に入りそうじゃ」


 祖父は満足そうと言うより安心したように言う。

 安心したのはシュンも同じだった。


「それでどんな塩梅なんじゃ?」


 赤い豆のスープを飲みながら祖父が孫娘に問いかける。


「シュンは相当すごいわよ。もしかしたら『神帝』の卵かもしれないわ」


 とリアはシュンを褒めた。


「ほう。そんなにすごいのか」


 祖父は目を丸くしてシュンを見る。


「魔力量も多いし応用力もありそうだし、追い出した奴らは馬鹿よね」


 リアが鼻で笑う。


「まあそんな奴らの下を離れられたのは、シュンのためによかったことじゃろうて」


 祖父が言うと彼女は何度もうなずいた。


「スキル発動に魔力を使うことすら教えられないやつらだもんね。異世界人のことを道具か捨て駒かと思ってるんじゃない?」


 そして吐き捨てる。

 捨て駒か、ありえそうだな──というのがシュンの率直な感想だった。

 

 ラルクは優しい微笑を絶やさなかったが、何を考えているのかわからない不気味さを彼は感じていた。


 もっとも俺が言っても誰も聞かなかっただろうけど──シュンは自嘲気味に思う。


「俺、いてもいいんでしょうか?」


 不意に不安になって彼はそんな問いを漏らす。


「何だ突然」


 祖父とリアはいきなりのことに驚く。

 リアのほうは彼の言いたいことを察して言った。


「いいのよ。あなたのおかげで私も勉強になっているわ」


 彼女の優しい笑顔にホッとしながらも、シュンはまだ悩みを捨てきれない。


「それにあなた、戦闘するなら後衛になるでしょ? 私は前衛だからコンビとしてちょうどいいのよ」


「なるほど」


 彼女の言葉を聞いてシュンは自分にも役割があるのだと思える。


「ありがとう」


「気にしないの。誰でも最初は不安だもんね」


 リアの優しさがシュンの心に染みていく。


「はい」


 泣きそうになっている彼に、リアは優しく言った。


「ご飯を食べたらさっきの続きね。……なんて名前なのかしら、あれ」


「銃ですか?」


 こちらの世界にないなら、呼び方もわからないのかと思いながらシュンが確認する。


「ええ。ジュウというの? あれで作って使いこなす練習をしましょう」


「ええ」


 リアの言葉にシュンは同意する。


 銃は練習がいる武器だった──練習なしに使いこなせる武器があるのか彼は知らないが。


「モンスターとの戦闘を視野に入れるなら、シュンの防具を作ったほうがいいじゃろうな」


 二人の会話を黙って聞いていた祖父がそう言う。


「うん、そうだね」


 リアは返事をしてから彼を見る。


「最初に作ったあの強度があれば、しばらくは問題ないと思うよ。この辺のモンスターに鉄を壊せる強さはないから」


 彼女に言われてシュンは少し安心した。

 やはりというかモンスターという未知の存在との戦闘は恐ろしいものだ。


 自分で用意できる防具で大丈夫なら、それに越したことはない。


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