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5月3日その2 言論の戦争・顔合わせ

 昼休み、俺はいつもの通り尚と健二と3人で飯を食べた。最近気がついたことなのだが、健二はどうやらピーマンが苦手のようだ。今日の俺の弁当にはピーマンが入っていたので、尚と2人で健二をからかいながら楽しく食事した。いやー本当に楽しかった。

「ひどいなぁ……」

 何か恨めしそうな目で見てくる健二がいるが、気にしない。なぜか半笑いだけど気にしちゃだめだ。俺たちは飯を食い終わったので、カードゲームで遊び始める。

「本当に、ひどいなぁ……」

 ……なんか可哀想になってきた。だけど、ここで屈してしまったら絶対何かおごらされるに違いない。尚もそれが分かっているのか、健二の相手はしていない。と、言うか健二の表情も半笑いだし。奴も分かって訴えてきているんだ。

「ああ、俺可哀想だなぁ……」

「あー!分かったよ。悪かったって」

 結局、健二からの圧力に負けた俺は奴の相手をしてしまう。それを聞くと健二はにっこり笑って、俺に賠償ジュースを求めるのであった。ちなみに尚はさっきから会話に入ってこない。

 健二に笑顔でお礼を言われ、勝負に負けたが戦いに勝った気分になった俺。健二と2人で尚ひどいな、なんて言いながら三人で自動販売機へ向かったのであった。






「生徒会選挙出馬者と、その後見人に連絡します。12時45分までに2階講義室に集まってください。もう一度繰り返します……」

 缶ジュースを買ってきた後、再び3人でカードゲームをしていると、放送がなった。自然と時計に目がいってしまう。時計は12時35分を指していた。

「そういやさ、健二達って選挙活動しないの?」

「それを言うならお前こそだろ……」

 カードゲームを続けながら、なんとなく2人に聞いてみる。まったく尚のいう通りなのだが、クリスさんはまだ何も選挙の準備をしていないようである。委員長とも、選挙活動の具体的な話すらしていない。

「俺たちは来週からだね。選挙運動期間にならないと印刷室使えないし。連休中に選挙の準備をする予定だから」

 健二がカードを出しながら俺の質問に答える。ぬ、そのカードは! まだまだ甘いな、健二。俺もカードを出しながら話を続けた。

「あ、そのカード俺の「M&A(敵対的買収)」でもらうから。替わりに健二のMPマネーポイント回復ね。あとさ、現会長はどうするか知ってる?」

 健二は、俺の出したカードに一瞬苦い表情をしたものの、すぐに表情を戻して話を続ける。

「陽介も来週からみたいだね。勇人たちもそうでしょ? あと、M&Aはこの「失われた10年」で無効にするから」

 ぬう。まさか返してくるとは……じゃなかった。会長も来週から活動をするんだったら、俺たちも焦らなくていいか。委員長もそれを知っていたから選挙の話をしてこなかったのだろう。クリスさんは……何も知らなかった可能性が高いな。

「じゃあ最後に、「恐慌神ヒンコネス」を出してとどめね。はい、勇人は破産!」

「え、うそ!」

 いつの間にだろう。奴の場には恐慌神が出ていて、俺はカードゲームに負けていた。くそう、これで3連敗である。なんで健二はこんなに金融王が強いんだ。

 自称カードキングの俺としてはリベンジを挑みたかったが、集合時刻が近いからと健二は戦線を離脱してしまった。尚とやっても俺が勝つのは決まっているので、尚は無言で健二の後についていく。尚が逃げたので相手がいなくなった俺も、小走りで追いかける形で二人の後についていくのであった。





 講義室につくと、そこにはもう4人の生徒がいた。そのうちの一人が俺たちが講義室に入ってくるのを見て、こちらに向かってくる。……って、あれは篠原さんじゃないか!

 篠原さんが近づいてくるので、俺はどうしようもなく焦ってしまう。彼女が教室のドアの所にいた俺たちのそばに来たのをみて、俺は声をかけようとする。だが、彼女はそんな俺を気にもせずに健二に話しかけたのであった。……悔しくなんかないもん!

「健二君、こんちはー。え〜と? どっちが小林君?」

 篠原さんがこっちを向いて健二に問う。その瞬間に俺は彼女の顔をまともに見てしまった。

 おお! やっぱり可愛いぜ! やはり学年一の美少女と男子の中で評判の篠原さんである。パッチリとした瞳に、鼻筋から整った顔立ち。ショートカットの髪は、さらさらと流れてとても綺麗である。その顔に浮かべている笑顔もとてもすばらしくて、もう、なんというか、俺、ノックアウトされちゃいました。

 クリスさんが、彫像のような美しさを持っているとしたら、篠原さんは人形のような愛らしさを持っている。人の容姿をものにたとえるのは悪い気がしたが、俺の貧相な表現力ではそんな表現が限界だった。

「ああ、さっきから変な動きをしていないほうが尚……小林君」

「じゃあ、この変な動きをしているのは?」

 しかし、最近の俺はついている気がする。それまでろくに女子とは係われてこれなかったのに、ここ1ヶ月でクリスさんやら、委員長やら、篠原さんやら、可愛い女の子と仲良くなりまくりじゃないか! 

 まあ、委員長は前から友達だし、篠原さんとはこれから仲良くなる予定だけど。

 そんなことを思ってると、篠原さんが突然声をかけてきてびっくりした。

「え〜と、君が「あの」田島君?」

「え、うわあ?」

 シット! いきなり話しかけられたから、変な声しかあげられなかったじゃないか。ああ、これじゃあ篠原さんに変な奴として認識されてしまう……

「うん、聞いたとおりだね。これからよろしくね」

 しかし、篠原さんは軽く苦笑するだけで話を続けてくれる。ああ、なんて優しいんだ。うちのクラスの自覚がない堕天使クリスさんとは大違いだぜ! ……それはクリスさんに悪いか。クリスさん、ごめん。

「ああ、うん。よろしく。あ〜、え〜と、聞いた通りって?」

 篠原さんが、俺のことを聞いたことがある風な口で話すので、気になった俺は彼女に聞いてみることにした。ああ、でも女子と話すのは難しいな。どうにも、どもった感じになってしまう。委員長とか、クリスさんとかだと平気なんだけどなぁ。

「うん。健二君がクリスさんの白馬の騎士で、当代一の変人だって」







「そうなんだ。ところで、どこに、いくのかな、健二君?」

 あっはっは。なんでだろう、いつになく愉快な気分になった俺は、自然と顔に笑顔が浮かんでいた。そして、なぜかこっそり教室を出ようとしていた健二君を右手で捕まえたのである。

 あれ、なんでだろう。ちょっと捕まえただけなのに、健二君は必死に謝ってくる。尚と篠原さんは、なぜか苦笑しながらこっちを見ているぞ。おお、健二君が土下座し始めた! これはめずらしいな。

 と、まあ、しばらく健二をからかっていたわけだが、さすがにかわいそうになった俺は、彼のことを許してやるのであった。





 話が一段楽したので、ふと教室の教壇の方を見る。すると、そこにはほそちゃんと何人かの生徒がこちらを見て微笑んでいた。おおう! なんかとてつもなく恥ずかしいぜ!

「お話は、終わりましたか?」

 ほそちゃんが心底嬉しそうな笑顔で話しかけてくる。ああ、こんなときでもほそちゃんの笑顔って癒されるんだなぁ。俺が彼の問いに肯定すると、彼は候補者と後見人ごとに机につくよう、促すのであった。

「それじゃあ、まず自己紹介からしましょうか」

 皆が席に着いたのをみて、ほそちゃんがそう言った。俺の隣にはいつの間にか来ていたクリスさんが無表情で座っていた。彼女がなぜか最前列に座ったので、俺も最前列に座っている。なんか心許なくて仕方ない。

「それじゃあ、生徒会長の候補の方から……杉山君と後見人の吉田君、お願いできますか?」

 どことなくおぼつかない感覚で席についていた俺だが、ほそちゃんの声に気合が入る。ついに、あの生徒会長とのご対面である。今までは顔くらいしか知らなかった俺の宿敵。

 自称であるが、最大の天敵の俺が、お前の自己紹介のレベルをはかってやるぜ!

 そんな俺の思いを知ってかしらずか、ゆっくりと後見人と共に教壇にあがった会長は、優等生然とした、はきはきとした口調で自己紹介を始めるのであった。



出てくるキャラが多いですが、分かりやすいでしょうか?

出来たら感想等をいただけると嬉しいです。

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