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全寮制って響きがいいよね

息抜きとして書いているため不定期更新です。


中学を卒業し現代では当たり前のように持たれているスマートフォンで、一番最初にダウンロードしたのは世界的情報アプリ『コゴト』だった。

写真も画像も動画も言葉も自由に飛び交うため年齢制限はないものの、未成年にはまだ早いものだって拡散されているようなアプリだ。

学校へ投稿する最中では基本的にスマホをいじっている老若男女。

きっと全員が『コゴト』を閲覧していることだろう……


(俺の隣に座っているおっさんも……うわっ!この人ロリコンだ)


見た目はどこにでもいるような普通の中年男性。体型もしっかりとしているし、スーツから加齢臭なんてしない。身なりも整っているしスマホを眺めている時の表情なんて、まるで勉強しているようなまじめな表情。


(サイコってんな……)


それでも三次元の小学校低学年くらいの身長の成人女性(・・・・)の動画を真剣な顔つきで見つめている。


(世の中見た目じゃないってハッキリ分かんだねって感じだわ)


いつかのネタを心の中で呟きながらスマホから流れている音楽を変える。

その音が止まる一瞬……赤ん坊の泣き声がイヤホン越しに聞こえた。


(響いてるなー……いい目覚ましだ)


そうして視界に入る限りの人間を見渡す……

全員ではないが八割ほどの人間は嫌悪感を隠しきれていないことを確認して、少しだけ笑ってしまう。

足をわざとらしく鳴らしている人間もいれば、聞こえていないだけで舌打ちだってしていることだろう。


(隣のおっさんは少し口角が上がっているけど……)


真新しい制服を来た青年は足元に置いていたカバンを手に取り、横の手すりにつかまって立っている男性と視線を交えながら立ち上がった。


「どうぞ」


小声で呟くと男性は首を揺らし青年のいた場所に座って、ポケットからスマホを取り出して画面を眺め始めた。


『次はー○○駅ー。次は○○駅。これの列車は各駅停車――――』


列車内でアナウンスが流れると学生服を着用した男女が一斉に扉の方へ向かう。


(こんだけ人いたら大変だぁ……)


動く箱に一体何人の人間が乗っているのか……、もしかしたら今立ち上がった生徒は学校前に特別停車駅なのにも関わらず降りられないかもしれない。

圧縮された空気と共に一斉に学生たちが列車を下りる。

ガラガラとボストンバックを転がしながら談笑してくる男女を眺めながら、カバン一つを手に持ち一人で歩いてく青年。


(友達……何人出来るかな)


指に埋め込まれた内臓式電子生徒手帳を翳し、ピピっと軽快なリズムと共に学校内へと入っていった。




全寮制……響きはいいなぁ。


(実際はそうでもなさそうだけど)


総勢で二百人。今年の新入生の人数だ。

二年で仕事を学び他の人とは違い一足先に社会人の仲間入りを果たせる『職業専門学校』。通称 職専。高齢化な日本だからこそ若者の手を借りなければならない。最小の時間で、最大限の仕事を出来るようにと建立された学校だ。


「ここが寮だよー、ちゃんと覚えたかな?新入生くん」


髪を横でまとめているサイドポニーテイルが光を浴びて赤茶に光るのが第一印象の女性。

それに少しだけサイズが大きい作業着、汗拭きタオルを首に巻いている。


「あまりにもドスト……――――111号室……覚えやすくて助かります」


「あまりのも……なに?」


「いえ。何でもないですよ?続きをおねがいします」


身長が自分よりも低いからか、あまりにも自然な形で上目遣いになっていることが分かっていないのか表情を覗き込もうとしてくる仕草も大変可愛らしく、無意識に親指を立てる。


「オートロック式だから鍵を開けたいときは親指を翳してね、今みたいに。毎週月曜日に自炊用の食材が届くから自炊するなら申請するけどどうする?」


「お願いします」


「おっけー、あとは各自でお願いね。部屋の掃除から始まる家事全般、道具の管理、勉強。ここは基本的に寮内の各部屋のモニターで職業の授業がメイン、外に出るときは基本的には研修だから」


「はい」


「あとは先輩後輩ってのはあるけど部屋割りは学年問わずにされてるからね?私は君の部屋の隣だから紹介しているけど……」


視線に誘導されて同じ場所を見ると同じ新入生が周りを見渡しながら、手に広げるパンフレットとにらめっこしていた。


「あんな感じでイジワルな人も一杯いるから気を付けて?」


突然の耳打ちに体を震えさせてしまうが太もも裏をつねっては涙目になりながらも先輩の可愛らしさに耐え抜く。


「んじゃ、私は110号室だからね?困ったことがあるなら聞きに来てよ……島崎くん」


「……可愛い――――ゴホンごほん、こ、こちらこそよろしくお願いします。(おおとり)先輩?」


作業着の胸元に台形で記された表記を言ってみると、


「うん!」


満面の笑みで返される。


「あぁ……可愛すぎ」


扉に設置された反応装置に向かって親指を押し当てながら呟いてしまう。

あ、そういう言えば……と後ろに本人がまだ――――



「あれ?いない……もう部屋に帰ったのか。隣だしな」







青い鳥を開けば「尊い」が詰まってる。


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