りったんの夢十夜(最終夜)
夢を観た。
電車通学だったのでたくさん痴漢被害に遭った。
痴漢の多くがふてぶてしく罪を認めなかった。
目撃者もいないので、証拠不十分で逮捕すらされない。
そのせいで私は同じ人間に何度も言葉にできない屈辱を受けた。
それから十年の月日が流れ、ようやく痴漢の恐怖から逃れられた私は最愛の人に出会い、結婚を前提に交際を開始した。
友人と会食した帰り、しばらくぶりに電車に乗った。そのせいで痴漢に遭った。
あの頃の私とは違う。このまま泣き寝入りはしたくない。
持っていた毛抜きで痴漢の手の甲を思い切り抓った。
「うぎゃ!」
痴漢は悲鳴をあげると、到着した駅のホームを走り去ってしまった。
捕まえられなかったのは残念だったが、お返しができたので少しだけ気持ちが和らいだ。
その夜、恋人とデートで夕食を共にした。そして見てしまった。彼の右手の甲に絆創膏が貼られているのを。
「貴方だったのね!」
怒鳴ったところで目が覚めた。私は法廷にいた。