前書き 9
意識がどこかをさまようなか、遠くで何かが鳴っている音が耳に伝わってくる。
よく聞いてみれば、この音がいつも目覚ましのアラームとして使っている曲であることに気がついた。
そして、目を開ける。
そこはよく知らない天井だった。
昨日、色々あってこのホテルに泊まったことを思い出した。
なんだか穏やかな気持ちである。
だんだん大きくなっていくアラームの音が邪魔になってきたので止めた。
となりのベットでは母親が寝ていた。
起こさないようにそっと音をたてずベットから出る。
そして、ユニットバスに入り、シャワーを浴びる。
いつも入っているお風呂のシャワーと違い、水が出る勢いが強く、一穴一穴が大きく広がっていて、それぞれの水がその威力を体に示していく。
勢いを弱くすればうまく洗い流せず、強くすれば痛い、ちょうど良い威力を見つけられないまま、体全体を流し終わった。
体を拭き、服を着て、ユニットバスを出る。
母親は起きていた。
「おはよう」
と挨拶をかわす。
時間は午前8時だった。
目的の飛行機が飛ぶまで、あと一時間半。あわてるまでとはいかないが、少し急ぐ必要があった。
荷物をまとめて、ホテルを出る。歩いて空港に向かう。空港に着くと、購入窓口に向かい航空券を買う。そして、適当にお土産を買い、検査場を越え、飛行機に乗った。
機内で、アナウンスが始まる。
現在台風が近づいているので、飛行中、揺れが大きくなる事があるので、シートベルトを絶対にはずさないようにとうことがアナウンスされ、そこから、いつもの機内の説明、非常時の対応の説明が始まる。
それが終わり少しすると、飛行機が動き出した。
飛行機はプロペラ機、機内は両端に二席づつの構造だ。
どんどんと速度をあげ、機体が浮かび上がる。一瞬浮遊感を感じそこから下へと引っ張られるような力が働く。
そこから飛行機が雲の中に入っていったのか、窓から見える景色は灰色の世界だった。
機体が揺れる。大きく揺れる。このまま墜落してしまえば、無事に死ねるのでは?と思ったが、飛行機は墜落することなく、上へと上っていく。
数分後、窓がら見える景色が明るくなった。
上は青空、下は一面灰色の雲。
ちょうど中心を境にして上下に分かれていた。
安全な高度になったのか、シートベルト着用サインが消えた。
窓から見える景色は、中心を境にして上下の構図は変わらないが、雲の形は様々で、それが、左から右へ流れていっていた。
気づけば眠っていた。
シートベルト着用サインの点灯の音と、着陸体制に入ったというアナウンスで目が覚める。
飛行機が高度を下げていき、機内でも振動が起きる。
雲を抜け、窓から陸地が見えた。
それからも高度が下がっていき、空港の滑走路が視界にはいる。飛行機のタイヤが地面に付き、その衝撃が機内に伝わる、そしてブレーキと共に発生する後ろに引っ張られるような力。
飛行機は無事に空港にたどり着いた。
飛行機を降り、到着ゲートを通る。
半年ぶりの地元だった。
そこから電車に乗って二時間。
やっと実家に着いた。