表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の居場所  作者: 佐野はる
第2の人生
6/36

6話

「沙弥。」


なんと言っていいのか分からず、とりあえず名前を呼ぶ。


「お兄ちゃん?」


沙弥が驚いて目が点になっている。しかし驚くことに無理はない。なぜなら俺が帰省することはめったにないからだ。


「会いに来た。」


沙弥の脳内に(はてな)が数えられない程浮かんでいるのが伝わってくる。


「どうしてここが分かったの?」


「匠海に聞いた。」


沙弥は匠海の名前を聞いてハッとしている。

匠海と沙弥が連絡を取り合っていることは知っている。

それと、沙弥が悩み相談をしていたことも匠海から聞いている。


「大丈夫だよ。」


「大丈夫じゃないだろ。」


ケロッとしている沙弥を不思議に思った。

重い病気を患っているようには到底(とうてい)思えなかった。よく分からなくて頭の中が散乱した部屋状態。


「大丈夫じゃないね。勉強が分からないから。数学の証明、教えてよ。」


元気で少し安心した。

しかし、迷惑をかけないためにウソをついている、と思った。


「定理と定義覚えてる?」


「分かんない。」


少々あきれたが、元気そうで何よりだ。




面会時間終了直前まで沙弥の隣にいた。勉強したり、lemonについて話したり。

久しぶりの二人きりの時間が楽しすぎた。

年に二度しか沙弥に会うことが出来ていなかったこれまでとは対照的に、これからは毎日のようにあうことが出来る。

嬉しくてたまらなかった。


「あと何回会えるかな?」

俺がlemonが脱退したことを知るよしもない沙弥の吐いた言葉が重すぎた。


沙弥は重い心臓の病気。

心臓の移植をしないと生きていくことができない。ドナーが見つからなければ、もちろん生きていくことは不可能だ。中学生にもなればそれくらい当たり前のように分かる。


「たくさん会える。ずっと一緒にいられる。」


「勝手なことを言わないでよ。」


沙弥に初めて反抗された。

これまで反抗されたことはなかった。

初めてのことすぎて怖い。


「今日は帰って。」


悲しかった。

俺のしていることは間違いだったのかと思った。



とりあえず親戚の家へ帰ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ