36話
12月23日
俺は夢の舞台に立っていた。
またこうしてlemonのみんなでここに立てていることが唯一の幸せだ。
沙弥とも東京で暮らすようになってから、一緒に過ごす時間が増えた。
沙弥の笑顔を毎日見れるようになった。
そのほかにもlemonのみんなでパーティーをするなど、楽しい毎日を送っていた。
そして今日は、先日から始まっているドームツアーの最終日。
東京ドームでのライブだ。
結成したての頃は夢を語っては現実を思い知らされてきた。
その度に不安ばかり募っていた。
しかし今は、ついに現実になったという達成感と少しの不安の混ざった複雑な気持ちだ。
lemonのみんなが再び迎えてくれたあの日から、止まっていた俺の時計の針がまた、動き出したのだ。
俺一人では何もできない。
そんなことは分かっている。
だが、再確認をさせられた。
lemonのみんなに出会う前は、沙弥を支えていく自信がなくて不安だった。
俺一人では何もできないことが分かってからは考えるだけでもっと辛かった。
そんな俺を変えてくれたのは紛れもなくlemonの仲間であり、ファンの方々だった。
沙弥が病気だと知った時はもう立ち直れないと思っていた。
ただでさえ一人で沙弥を支えなければならないのに、その沙弥が病気の治療中だなんて考えると、目の前
が暗くなって何も考えられなかった。
沙弥は俺にはバレないように我慢してたのに、俺はすぐにダメになってしまった。
匠海に助けを求めたり、lemonを辞めてしまったり。
何があってもファンやメンバーを悲しませることは絶対にしてはならないこと。
分かっていながらも過ちを犯してしまった。
自分に嫌気がして自分が自分ではないような気がした。
たくさんの壁を乗り越える度に分かったんだ。
俺が探していたもの。
それは俺が俺でいられる居場所だった。
心の底から笑っていられる、偽りのない俺でいられるそんな居場所を。
lemonを離れて気が付いた。
lemonのみんなでなら一人ではできないことができる。
lemonこそ本当の俺のいるべき場所。
本当の居場所なんだ。




