30話
『明日だ。』
俺は小さく呟いた。
ついに明日がライブの日。
そして、俺がlemonに正式に戻る日。
関係者以外俺がlemonに戻ることは知らない。
今日はホテルにみんなと宿泊する。
ごく普通の何気ない会話が俺にとってどこか懐かしい。
昔と変わらず匠海の部屋に集まり、寝る。
正直、こうしてこの4人と話すことはもうないと思っていた。
眠たくなると3人が帰っていった。
すると匠海と俺の二人きりになってしまった。
そして、明日のことを話していた。
葵さんとも電話をしていた。
明日沙弥とライブに来る葵さんと最終確認をしていたのだ。
「なぁ。俺が戻ること、受け止めてくれるかな?」
俺はただそれが心配だった。
俺の自分勝手なせいでたくさんの人が迷惑しているであろう。
だから気になって聞いた。
『もちろん。なんでそんなこと聞くんだよ。』
「だって俺、脱退の理由言ってないのに。」
『明日言えば?』
「でも、、、。」
俺には勇気がなかった。
沙弥のことを言ったにしろ、受け入れてもらえないのは既に分かりきったことだ。
そして、かえって気を使わせてしまうかもしれない。
不幸自慢だと思われてしまう可能性だってある。
そう思うとどうしていいのかわからなかった。
俺はそのまま匠海の部屋で寝てしまっていた。
そしてついにライブ当日を迎えていた。




