25話
8月10日
手術は無事成功した。
沙弥の体調も順調に回復してきている。
そして、もちろんあの可愛い沙弥の笑顔も。
俺はただただ嬉しかった。
沙弥の笑顔が戻ってきたことが。
嬉しくて匠海に電話した。
匠海は自分の事のように喜んでくれた。
でも、匠海と話していると切なくなる。
なぜなら匠海と俺のいる場所は全く違うからだ。
匠海はlemonとして今も活動し続けている。
しかし俺は脱退をした人間。
もう一度チャンスがあるのなら、といつのまにか思うようになっていた。
プルルルル!
海の一望できる展望台でボーっとしている時だった。
一本の電話でふと我に返る。
『元気してるか?』
誰かと思いきや、lemonの責任者をしている方だった。
その方とは顔を合わせる機会が何度もあった。
「元気です。どうかなさいましたか?」
俺はもうlemonを辞めた人間なのに電話してくるということは何か話がある、ということを俺は悟った。
『lemonに戻ってこないか?』
唐突だった。
ただ考え抜いた結果だということは伝わってきた。
俺は驚きを隠せなかった。
『妹さんのことは聞いた。おめでとう』
「でも俺は、、、」
事情があったとは言えども俺はlemonを脱退したんだ。
俺がlemonに戻っていい訳がなかった。
『君がlemonには必要なんだよ』
そこで電話は切れた。




