20/36
20話
7月25日
今日もいつもと同じようにアルバイトをしていた。
近所の弁当屋で、いつもと何一つ変わらない平凡な日常。
―プルルルル、プルルルル
ポケットに入れていたスマートフォンが音を立てて振動する。
病院から電話がかかってきた時のためにズボンのポケットの中にスマートフォンを入れていた。
『すぐに来てください。』
やはり病院からだった。そして、移植のことだった。
「あの…。」
電話を切り、店長に事情を説明する。
沙弥のことは面接のときに軽く説明しておいたため、その説明をする必要がなく楽だった。
『分かった。傍にいてあげなさい。』
そう言い、笑顔で俺を見送ってくれた店長には頭が上がらない。
車に乗り込み、風を切る。
自分の体なのに、なぜか自分の体ではない気がした。




