2話
しばらく沈黙が続いた。
正直メンバーに伝えるタイミングを間違えてしまった、と思った。
「光輝、ごめん。俺たち知ってた。沙弥ちゃんの病気のこと。」
匠海が口を開いて何を言うのかと思いきや、沙弥の病気のことで驚いた。
匠海とは幼稚園の頃からの幼馴染。
「光輝の親戚と東京で会って話した。そこで聞いた。沙弥ちゃんのこと」
「何で俺にだけ・・・。」
匠海以外のメンバーも知っている。だったら教えてくれてもよかったではないか。
「親戚の人に口止めされてた。『光輝には言わないで』って。」
「でも・・・」
自分の事のように思えてきた。俺がこの場所に居てはいけないような気がしてならない。
「言ったら落ち込んでグループ活動に支障をきたすから。lemonには光輝がいないと、って思ってたから」
匠海の言っていることはもっともだ。沙弥の病気を知ってすぐに脱退することにした。最悪の判断であろう。
頭の中が真っ白で何も考えられない。
ほんの一瞬の時間が何時間にとも感じられる。
「待っているから。早く戻って来いよ。」
匠海の声でこらえていたたくさんの思いが溢れてくる。
頬を伝って涙がこぼれ落ちてくる。
「泣くなよ」というメンバーの声で涙がもっと溢れて止まらない。
メンバーの頬にも涙が溢れる。
「早く帰ってあげてよ。」
匠海のその言い方に嫌味はない。
背中を押され、重い足を引きずって歩く。