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19話
重い足を引きずりながら沙弥の病室へと戻る。
「沙弥、売店行こう。」
俺には何もできないという無力さを痛感していた。
沙弥に心配をかけないように笑顔を無理矢理つくる。
『ごめんね。しんどいんだ。。』
「大丈夫。俺、行ってくるね。」
突然涙が流れてきたため、急いで病室を出る。
一人で行くほうが気が楽でよかった。
売店に行こうとはしたが、行く気になれず、病院の外のベンチに座る。
最近、沙弥の症状が悪化してきている。
笑うことも少なくなってきた。
兄妹の会話も徐々に少なくなってきた。
命について考えることも多くなった。
俺の考え方も過去とは全然違う。
良いことばかりを考えていた過去。
何もなくていいから、ただ過ぎていくだけでもいいと考えている今。
朝起きて一番に思うことは沙弥のこと。
今日も元気にしているかだとか、生きているかだとか。
もう涙が止まらない。
できることなら沙弥と変わりたい。
辛い運命を沙弥に与えた神様に土下座してでも俺と沙弥を交換させてもらうことはできないであろうか。
真面目にそう思った。




