表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当の居場所  作者: 佐野はる
第2の人生
11/36

11話

     5月13日


朝の9時。

携帯電話のけたたましい着信音で目が覚める。


実家に帰省してからぐうたらしかしていない。

枕元に置いていた携帯電話を手に取り、耳に当てる。


「光輝!何してんだよ?」


匠海からだった。

怒りのこもった口調だ。


「おはよ。どした?」


吞気に答える。まだ寝起きなので脳内で整理ができていない。

それに匠海から電話がくる意味も分からない。


「どうしたじゃない!沙弥ちゃんに会いに行かないのかよ?訊いてんだけど。」


驚いた。


そして、『沙弥に何を話せばいいのか分からない』と話した。


「は?兄弟なんだろ?姉ちゃんからの連絡がうるさいんだよ。」


匠海の姉は沙弥の入院している病院で医師として勤務している。

確か沙弥の担当医だった気がする。


匠海の姉とは数回遊んだことのある程度なので、すっかり忘れられている、と思っていた。


「沙弥ちゃん泣いているんだよ。泣くと心臓に悪いんだよ。沙弥ちゃんは泣かないように我慢してるけどダメなんだよ。この間のこと後悔してるんだよ。」


匠海が泣きそうな声で言うもんだから、何も言い返せなかった。

しばらく沈黙が続いた。


「沙弥ちゃんを守るんじゃなかったのかよ。」


電話口の向こう側から匠海に叱られる。

匠海に言われずとも分かっている。

沙弥に会いに行かないといけないことも、守ると決めたことも。

でもいざ行動するとなると勇気が出ない。


「いろいろ大変かもしれないけど、今日中に沙弥ちゃんに会って…。」


「……分かった。」


数語挨拶を交わすと電話が切れた。

俺はベットの上で仰向けになり呟く。


「沙弥…。」


急に落ち着かなくなり部屋を見回す。


すると、机の上の白い封筒が目に入る。


ん?

こんな封筒あったっけ?


気になって開封してみる。


手紙だ。しかも沙弥の字ではないか。





お兄ちゃんへ

お仕事お疲れ様。昨日はごめんなさい。病気のことも黙っていてごめんなさい。

会って話がしたい。もう長くないかもしれないから。

21日、面談だから







これは正真正銘、沙弥が書いたもの。


その手紙を読むと俺には使命がある気がした。


そう思うと勝手に足が動く。





気付けば沙弥の病室の前にいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ