逃避行
テンプレがゲシュタルト崩壊を起こす・・・。
ゲシュタルト崩壊って名前がかっこいいよね。
トリックは覚悟を決めた。
アジトの入り口で計算する。
アジトに火を放ち、暴食の王が現れたと告げれば、如何に腕自慢の盗賊団といえパニックに陥ることはまず間違いない。
蓄えた宝物を避難させる時に、グレースと共に身をくらます。
暴食の王を隠遁術でやり過ごす事が出来れば、大きな隠れ蓑になるはずだ。
勝ち目は、十分にある。
グレースが盗賊達のレベルを上げてしまえば、脱出はより困難になるだろう。
今しかない、と。
なに食わぬ顔でトリックはアジトにもどる。
中は相変わらず危機感の無い喧騒だった。
ーー隠遁術ーー
左目をつむり、スキルを発動させると、スルリと調理室にもぐりこんだ。
もともと存在感は薄いが、目の前の人間がまるで存在しない様にトリックの前を横切ったのを見て、トリックはイケると期待に胸を膨らます。
どれ位発動しているか分からない、
素早く使用済みの油が入った缶をみつけだし、スルスルと影の様に通路に出た。
寝室に顔を入れ、人影がないことを確認すると、素早く油をまき、壁に掛かるランプを投げつける。
轟っとベッドが燃え上がるが、素早く外に出、扉を閉めれば暫くの時間が稼げそうだった。
6つある寝室のうち3部屋まで火をつける事が出来た。
そして通路一番奥の牢屋まで移動すると、一呼吸置いてから大声をだした。
「火事だーーー!!ベッドがもえてるぞーー!!」
もう引き返せない。
バレれば死、あるのみ。
トリックは、武器庫にも火を放ち、牢屋へと駆け出した。
「グレース・・!グレース・・・!」
トリックは松明を消しながら牢屋の鍵を開け、中に飛び込んだ。
「ぎゅー、もう食べれないー」
「寝ぼけてる場合か!逃げるよ!」
目を擦りながらグレースが起き上がる。
「え・・・いつ?」
「今だよ!早く起きて!もう!」
トリックはグレースを背中にのせ、すぐさま隠遁術を発動させると、廊下を一気に走りだす。
廊下ですれ違う盗賊達は、トリックは勿論、グレースの姿も認識できていない様だった。
「おー。これが隠遁術。すごっ。」
「舌噛むよ!今の内に距離を稼がないと!!」
入り口まで辿り着くと、外に出る前に置き土産を残す。
「暴食の王がでたぞっ!!」
声は聞こえるが姿は見えず。
しかしその内容はしっかりと盗賊達に届き、予想通りの反応を引き起こした。
パニックである。
トリックは一瞥をくれると、夜の闇に身を投げ出した。
ーーーバイバイ。骸。ーーー