まずは知ること。
レベリングとスキル!!
テンプレ、テンプレェ!!
グレースが拉致されてから一晩が明けた。
盗賊団は遅い朝を迎える。
太陽は既に効果を始め、洞窟の入り口からは昼下がりの黄色い太陽が差し込んで来ていた。
人一人しか通れない出入り口から数歩の距離は大きく開けており、そこが、食堂広場になる。
強奪した宝をここに積み、報酬を出した後に宝物庫へと移動させるのだ。
だが、今の時間、宝の山はなく代わりに二日酔いで討ち死にしている盗賊達が、動く屍の如く這いずりまわっていた。
「こ、ころせぇ・・・」
喋るのも辛そうに誰かが懇願した。
トリックは苦笑しながら広場を横切り、調理室へ入った。
「ナイブスさん、おはよう。」
調理室もまた、昨夜の宴の残骸が残っていた。
山の様な野菜の皮、骨、肉の切れ端、出しっ放しの鍋、包丁、皿、皿、皿。
これらを片ずけ、昼食のような朝食を作るのがトリックの仕事である。
もちろん料理人ナイブスも二日酔いで討ち死にしている。
「あ、あ、あとは、頼む・・・」
まだかろうじて生きていた。
最後の力を振り絞り調理室から文字通り這い出たナイブスを見届け、トリックは片ずけを始める。
今日はクズ野菜スープである。
骸盗賊団には32人の盗賊がいる。
うち12人は斥候部隊。
情報収集が主な仕事であまりアジトには居ない。
3人1組で各地に潜っているため、骸盗賊団の情報網は中々広い。
トリックを含めた5人は主に雑用。
掃除や食事、武器や薬品の管理が主な仕事だ。
残る15人は実行部隊だ。
実行部隊は荒っぽく喧嘩っぱやい、が盗賊頭であるアサルトにだけは決して逆らわない。
どんな理不尽な命令でも、だ。
骸盗賊団においてアサルトは法であり、裁判官である。
さて、トリックは調理室を片付けながら思考していた。
いかに文字を習得するか、である。
右目の右下に白く浮き出る「ステータス」を意識しながら、どうすれば効率よく認識できるか考えていた。
勿論、予めどこに何があるかを覚えておく、という案もあったが、ステータスが示す文字量は明らかに昨日受けた説明より多い。
まずは一番上。
おそらくは「観察眼」だろう。
左目をしばらく閉じると、白い文字で
100/2
とでる。
多分熟練度なのだろう。
女神神官グレースと、壁に使った回数と一致する。
だがこれを100にするとどうなるかも分からない。
とりあえずあげといて損は無いだろうと左目を一秒閉じる。
100/3
となり、色々な数字浮かびあがった。
対象はひとつでなくても良いらしく、これなら作業しながら鍛えることが出来る。
ただ次から次に出てくる数字がじゃまで他のスキルを検証出来ない。
そのまま1分程経過すると、ステータス以外の数字は全て消えた。
ステータスを開くと
49/50
になっている。
スキルを使うにはこのポイントが必要なんだなとトリックは理解した。
上から二番目は多分、おそらく、隠遁術、というやつだろう。
気配を消すスキルだと思うが今は時と場所が悪いからやめておく。
盗賊に違和感を与えたくない。
これらは隠しておいた方が活きる類の情報だ。
伊達に盗賊団に身を置いてはいない。
年齢こそ幼いものの、トリックの思考は常に利を計算できるよう磨かれていた。
上から三番目は黄色で描かれており、それ以下は灰色だった。
レベルアップで解放されるのか、スキルの熟練度で解放されるのかは分からない。
取り敢えず、「観察眼」をひたすら使いながらトリックは支度を食事の準備にとりかかったが、ポイントが0/50になっても料理が出来上がらなかったのは言うまでもない。
観察眼の熟練度
100/52