一話
違うテイストの作品になりましたが、読んで頂けたら嬉しいです。不定期更新にはなります。
【Reason】〜序章〜
何度も何度も、この夢を見る。起きると、特に内容は覚えてない。
でも、この夢を見た後の症状としては、起きた後の全身の倦怠感が酷く出る。
ベットから起き上がっても、足取りは安定しない。
それが、普通の人なら数分、又は一時間以内では治るのだろう。
だが、私の場合はそのぐらいでは済まない。起きてから数時間が経過して、ようやく頭が回りだす。
これでは朝から仕事をする人間には、大きな足枷にもなる。
昼過ぎても、まだ頭は就寝モード。夕方になり、頭は目覚め。夜には昼間。
仕事が終わって帰宅すると、頭は回っているが肉体的な疲労がドカッと出る。そのまま崩れる様にベットに滑り込む。
その夢を見なければ、朝からシャキッと動き出す。
この落差が激しい毎日を送ってる時に、私に起きた不思議な事が幕を開ける。
【Reason】〜第1章〜
「だから、来ないでーーーー‼︎嫌なのーーーーーー‼︎」叫びながら、ベットの上で目を覚ます。バサッと起き上がると、寝汗が酷い。
「はぁはぁ……はぁはぁ……」肩で息をするのが必死な状態だった。
近くにあるハンドタオルに腕を伸ばして、必死に取る。
額の汗を拭くと、まだ肩で呼吸をしていた為喉が渇いていた。
何か飲まなきゃ。身体の精一杯の訴えだった、素直すぎる程の。
冷蔵庫の所まで、今何の夢を見たのか?必死に思い出そうとするが、全く思い出せない。自分の目的とする言葉を探しているが、スーと真っ白な霧が突然現れて目的とする言葉を一瞬で掻き消す。
その霧を両手で追い払おうと、ブンブンと振り回してみる。
そーすると、余計に真っ白な霧の濃度が高まる一方の様だった。
そんな事を頭の中で考えながら歩いてると、冷蔵庫の目の前に辿り着いた。
元から、1人暮らしをしている為家自体そこまで広くは無い。
それでも私には過ぎた自分の城でもあった。誰にも邪魔をされない、自分の絶対領域。それが1LDKの我が家だった。
冷蔵庫を開けると、今私のマイブーム【檸檬の炭酸水】のペットボトル500mlが数本あった。
この適度な炭酸が好きだった。強過ぎず、弱過ぎず。この加減が絶妙なバランスだった。
一回ハマると、なかなか飽きない。だから何本も冷蔵庫の中にはストックを用意するのは当たり前だった。
特に、このタイプの夢を見た後は甘さの無い檸檬の炭酸水は、頭の中の重たさを軽くしてくれる様な。そんな錯覚を感じるからこそ、私には必要な物であった。
1本無造作に冷蔵庫から取り出して、足で冷蔵庫の蓋を閉めて。フラつく足取りと身体の倦怠感とのツーコンボと戦いながら、ベットへと身体を向かせながら又頭の中で先程見ていた夢を考える。
凄く嫌な夢だったのは分かっている。でも、どんな夢だったのか?思い出せない。
何で?と自分の中で地団駄を踏んでしまう。
ベットに座り込み、片手でペットボトルを開けて渇いてる喉に一気にキリッとした炭酸水を流し込む。
カァーとなる、この感じが好きだった。
でも、こんな夢を見たって事は半日以上死んだって事よね。
一気に項垂れながら、ホッと溜め息が出た。
今何時?横側に窓があったが部屋に朝陽が差し込んでる気配は全く無かった。
置き時計にチラリと目をやると、4時47分だった。朝方なんだ……だから、まだ日の出迎えてないのか。
なんか、納得した。
炭酸水がスーと身体を通ったからか?寒気がして来た。冬場の12月って季節だから当たり前か。
小さく苦笑した。
「今寝ても、凄く中途半端だなぁ……寒い」仕事の時の起床時間は朝の5時半と決めて置き時計の目覚まし時計にアラームも掛けている。念のため、スマホにもアラームを設置していた。
「どうしよう……気分転換に少しだけ朝の散歩しようかな」ハァと両手を温める。
少しでも動いて身体を動かさないと、仕事にならないのを身を持って体験しているからだ。だからと言って、この夢を見た後は身体のフラつきや倦怠感は半端ないのだが。
それでも、少しでもマシにする為に思い付いた打開案だった。
ランニングみたいに、苦しくならない。散歩なら、自分のペースで歩ける。辛くなったら、近距離の散歩で済ませて、帰宅したら良いのだ。
そー自分の中で何度も言い聞かせる様に何度も反復する。
パジャマからラフな装いに着替えると、ダウンコートを羽織る。
大体ダウンコートを着ていたら、このモフモフ感で寒さを感じる事は実際早々無かった。
フラつきながら、玄関先に赴く。
仕事に行く為じゃないからこそ、ラフなスニーカーに足を通す。仕事の時はパンプス派だった。ONとOFFは分けたいタイプでもあった。何より仕事で女だからって舐めらるのは癪に触るからこそ、自分なりに身長が低いのを誤魔化し、威嚇も兼ねて取っている手段でもあった。
ゴソゴソと玄関を出ると、イソイソと玄関に鍵をつける。
冬場の朝方の空気は東京のど真ん中でも、澄んでいた。さらに、その空気は澄みながら私の頬を冷たさと言う刃で攻撃してくる。
この冬じゃなければ味わえないのは、何気に好きだった。
自分の中身はドロドロになっているからこそ、その刺激は私の中身をに自然と強さを持たさせてくれるような錯覚を感じさせてくれるから全身で受けたいぐらいだった。
普段、職場を往復する事がメインで後はスーパーに自炊する為に材料を買いに行くぐらいしか近所を歩かない為、朝方の朝陽が少しだけ差し込んでる世界は別世界に感じれた。
フラつく身体を足が必死に支えながら、足取りは気持ちの向いた先を進む。
住宅街の中を歩いてるが、新聞配達の人とすれ違うぐらいで道を歩いてる人は居なかった。
凄く静かな道路の歩道を歩く。
5時半に起きるのは出勤時間は9時からだが、夢を見た場合は身体が思うように動かない為そのロスタイムも踏まえて早目に起床をしていた。
寝坊をするより、多少睡眠時間を削る方がマシだった。
プライドと威嚇は自分の中では必要な物であり、今の自分を支えてるのも実際この2つであった。
私の武器とも言っても過言では無かった。
そんな事を思いながら歩いてると、小さな光が何個も自分の目の前を飛んでいた。
「えっ……何これ?」住宅街に夜では無かったが光る物が何個も自分の目の前を飛んでいたら、ホタル?と思うが、今真冬の12月だよ?ホタルな訳が無いと気付いたが、その光を目で自然と追ってしまう。
目で追っていたが、気付いた時には歩き出していた。
その光が飛んでいく先へと。
光に魅了されながら歩いていると、突如大きな洋館が目の前に立った。
周りに住宅街など存在して居なかった。その洋館の周りは真っ暗な闇に包まれている森だった。
霧も少し立ち込めており、その館の怖さ演出は完璧であった。
道を聞こう。周りが木々が生い茂り、自分が歩いてきた道すら自分でも分からないでいる為だった。館があるのであれば、人が少なからず住んでいる可能性があると思ったからだ。
大丈夫、怖く無い。その言葉を何回も心で唱える。自己暗示を掛けているレベルだった。
それだけ、怖さは十分だった。
館のインターホンを鳴らす。
ブーブーと音が響く。この不気味に静かな雰囲気に響く機械音が、尚更不気味だっての‼︎って内心突っ込みを入れてしまう。
音が響いた後、館の窓に灯りがついた。
「やった‼︎人がいる‼︎」内心ガッツポーズを取ってしまった。他に頼れるのが無かったから、尚更嬉しさは倍増した。
「はい、どちら様でしょうか?」少しの間を置いてインターホンからは女の子の声が響いてきた。
「朝早くに、すいません」仕事の時の癖で咄嗟にインターホンに向かって頭を下げる。
でも、このインターホンはカメラ付きでは無かったから、する必要も無かったが気持ちの問題よと気持ちを切り替える。もしかしたら窓から、こちらが見えてる可能性もあったからだ。
世の中、朝方の常識外れな時間にインターホンを鳴らしても、誠心誠意謝り事情を説明したら分かってくれると何処かで信じたかったからだ。
実際、このままでは会社に遅刻してしまう。私なりにピンチだったのは事実だった。
「実は、道に迷ってしまって。道を尋ねたいのですが朝方に本当に、すいません」本音の気持ちだった。
少しの間を置いて返答が返ってきた。
「大丈夫です、貴方がこの屋敷に辿り着いたのは必然であり、世の理の真な真実でもある。今門開けるので、屋敷内に立ち入る事を許します。入りなさい」そー言うとインターホンの音はブチっと切れた。
すると、大きな金属音が辺りに響く。
ユックリと門が開かれていく。
まず、私は色んな所で突っ込みを入れたい気持ちで一杯だった。道を尋ねる予定が何で屋敷の中に促されたのか?そして、私が屋敷に辿り着いたのは必然?たまたま朝方に起きた為、ひょんな気まぐれで散歩に出たのが、必然?
どー言う展開よ、これは‼︎と声には出さないで、心の中で叫んでいた。
でも、足取りは止まっておらず歩き出す。静かに屋敷の方へと歩き出す。
何かに魅かれる様に迷いの無い歩き方をしていた。
その先で何が待ち構えてるのか?分からないままに……