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第8話 暗闇の中で強く光る

お待たせいたしました。

この頃、ちょっとずつ作法を変えているため……ちょっと書きづらい。

 暗い部屋に帰ってきた俺は制服を着替えもせずにベットにうつ伏せになる。もう……生きたくない。

 部屋を包む闇が俺を死へと(いざな)っているように感じる。今なら死など怖くない!……むしろ生きているほうが怖いんだ。

 俺は机の棚からハサミを取り出すと胸に刺そうとするが、やはり手が動かない。情けない……決心したことでさえ実行できないなんて。やはり俺は臆病で残念な男なんだな。暗い天井を見ながら染々と思う。

 俺は残念そうにハサミを机の棚に戻す。そしてまるで吸い付くように、今朝見た写真が視線に入った。


「桜……」


 写真を手に持ちながら弱々しい声を垂らして、俺はまた死にたくなる。まさに死へのデススパイラルが俺の中で渦を巻いていて、俺は今日の生徒会室での事を思い出す。


「泣いてたよな……最低だよ。女の子に罵詈雑言を吐いて泣かせるなんて」


 生徒会室から聞こえてきた桜のがむしゃらに泣く声がフィードバックしてきた。

 俺は胸が苦しくなって締め付けられるように感じた。例えるなら、蛇に巻き付かれたみたいなものだ……分かりにくいよな。どうやら今の俺は脳がイカれてるらしい。何も考えられない。

 そんな時、ドアが叩かれた音が聞こえた。


ドンドン!!


「……」


 無視する。今の俺は誰とも会いたくない。しかし、次に聞こえた声が、


「お兄ちゃん? ご飯持ってきたよ……」


 愛しの妹の心配そうな声だった。

 ドアの向こうから優しい声が聞こえる。そしてタイミングよく腹の虫が動いた。家に帰ってきてから何も食べてないし、当たり前か。

 我が妹、林檎は俺の夕食(夜食)を持ってドアの前に立っているらしい。

 しかし、現在時刻は10時ぴったり。純粋で純情な妹は寝ていなければいけない時間の筈だ。まったくいつから不良に成ったのかしらね、と近所のババアみたいに呟くと俺はドアを開けた。

 そこにはやはり……怒った表情の妹がいました……なんで? 俺なんかした?

 

「なんのようですかな……妹よ」


 あまりにも意外な事だったので話し方がキモチ悪くなってしまった。

 その言葉に林檎ははぁ、とため息をつくと無言で部屋に入ってきた。

 部屋に流れる無言の静寂に俺は身が割れそうな気分になる。しかし、林檎に視線を向けてみても何も話しかけて来る様子はなく。まさか……あれを。なんて思春期真っ盛りの思考をしてしまう自分に頭にくる。

 そんなこんなであれから10分が経った。

 林檎はついにしびれを切らしたらしく俺を睨みつけるように目を向けて、こう声を荒げた。


「兄は私に話すことない? 特に学校関係で」


 と、冷たい氷のような声で俺に質問してきた。なるほど……そうゆうことか。手に持っていたケータイ電話の宛先には高橋 桜とか表示されている。やり取りしてたのか……。

 俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると林檎を見ながら、重い口を開いた。


「ある。桜を泣かしてしまったんだよ……」


「なんで? まぁ、女の子を泣かせるなんて理由があろうと最低だけどね」


 それは男女差別じゃないか! と、主張したいところだが、今の俺にはそんな元気も勇気もない。

 林檎が言っていることは正論すぎて、何も言い返せないし、何よりもこの状態になった林檎に反抗するだけの勇気が俺にはない。

 俺はこの毒舌冷徹な林檎を裏林檎と呼んでいる。まさに妹キャラからの怖いお姉さんキャラへの360度チェンジだ。マジ怖い……殺されるんじゃね?


「はい。まったくの正論で、反論する気もおきません」


 兄の威厳など塵のように消え失せたていた。


「で、なんでクズ(兄)はそんなことしたの?」


 イスに倒れるように座り込み、俺を見ている林檎の姿はまさに女王様……いや、裁判長のようだった。

 

「封筒に入っていた写真を盾に脅されて……反抗しようと思ったけど……やっぱり」


「ハキハキしなさい!! で、その写真には何が写ってたの?」


 俺はベットから立ち上がると机の横に掛けてあった鞄から、例の封筒を取り出す。しかし、中には何も入ってなかった……そうだった、ビリビリに破いて捨てたんだ。

 その間に林檎は何かを考えていたらしく、俺がベットに座るまで視線をこちらに向けなかった。


「実は……その写真には、俺が女子トイレに入ったみたいなのが写ってたんだ」


「……はぁ? クズはそんなことで桜お姉ちゃんを泣かしたの?」


「そんなことなわけないだろ!! だって女子トイレにだぞ!? 男子禁制の聖地だぞ!?」


「男子禁制の聖地って……。まぁ、そんな写真誰が信じるって言うのよ。大体その写真どうせ合成なんでしょ? だったら問題ない」


 林檎が言うことは確かにそうだと思う。今の時代に男子が女子トイレに入る時は、いじめを受けて強要されている場合か、それとも間違えて入った場合ぐらいなものだろう。自分の意志で女子トイレに入る男はそういない。いたとしてもそれはバカか若気の至りとか言ってやるやつぐらいだ。

 と言うのはあくまでも普通の男子ならだ。

 しかし、俺は違う。それは運動が出来るとか、イケメンだとか、偉業を成し遂げたとかのいい意味での方でない。否、悪い方である。

 俺はそれを林檎に説明しなくてはいけない。


「確かにな……でもな……お、お、お兄ちゃんはいじめられてるんだ。ダメニスト、ボンニストって蔑称で呼ばれてな。アハハ……なんか笑えるよな。だから、俺にはその写真が合成だろうが、合成で無かろうが関係ないんだ。分かるか?」


 林檎は口をポカーンと開けて固まってしまった。呆れたっといった様子に俺は見えた。しかし、林檎の肩がプルプルと小刻みに振るえ出して、俺にこうささやいた。


「そんなことでお兄ちゃんは桜お姉ちゃんを泣かしたの? ダメニストって呼ばれてるから? バカじゃないの? そんなお兄ちゃんに話しかけてきてくれた桜お姉ちゃんの気持ちを考えたことあるの? 」


「……」


「そんな蔑称で呼ばれてるお兄ちゃんを桜お姉ちゃんは好きになってくれたんでしょ? それともなにか、お兄ちゃんは自分の評価の方が大事なの?」


「……んな、わけないだろ」


「なら写真なんて関係ないでしょ? 合成なら合成だと訴えかければいいじゃない! それぐらい出来るよね……大好きなお兄ちゃん」


 林檎は笑顔で俺を見つめていた。

 よし、イケる。


「ありがとうな。林檎」


「全然いいよーーじゃあ早く夕食? 夜食食べちゃってね」


 そう言い残すと林檎は部屋を後にした。

 俺は机に座ると夜食を食べ始めた。

 少し固くなったご飯に、冷えたワカメの味噌汁に、「頑張れお兄ちゃん」と書かれたオムレツ。どれも少し冷たくなってはいたが、不思議と温かい感じがした。

 あぁ、そうだな。もう落ちるところまで落ちたんだから、後は登るしかないよな。なら、俺は登らない気はない。青春という名の山といじめっ子という谷を越える。例え、それらがいばらの道であったとしても、俺は越えて行くんだ!!


 窓から満月を見ながら、コーヒーをすすって俺は明日への決意を身に染み込ませた。

読了ありがとうございます。


ついに私も卒業が近づいて参りました。個人的には高校生のままがいいなとか、思ったり思わなかったりしてます。


まぁ、大学生になればパソコン買うので執筆しやすくなっていいのかもしれない……。



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