第7話 夢からの帰還
お待たせいたしました。
古来より、人生は何が起こるか分からないと言われてきている。例えば、平凡な農民が出世して王様になったり、勉強の出来なかった少年が世紀の大発明をしたり、本当に人生は何が起こるか分からない。
そしてまた、俺が学園最高クラスの美少女達から告白されるなんあり得ない……まぁ、あり得えてるんだけど。
その人生の山場のせいで昼食は食欲沸かなくて食べなかったし、クラスメイトの視線はまるで鋭き刃のように恐ろしい……本当自殺しようかな。
体育館で喜んでしまった自分を呪いたくなる。あれはきっと一瞬の気の迷いが引き起こした幻想なんだ。だから、俺は悪くない、と訴えかけても俺に味方してくれる人はこの学校にはいなかった。むしろ敵が増えるという負のスパイラル。
生徒全体が俺の敵で、生徒から見れば俺は最重要ターゲット敵。まったくラブコメ臭はどこへいたのやら……今の状態完璧にリンチだよね?
ならば今は退散するのが一番だろ。俺は教科書を机から取り出すとバックに詰め込む。来週からは期末テストだから、勉強しなくてはいけない……めんどくさい。
そんな学校である意味で人気者の俺のケータイが音を立てた。俺はケータイを取り出して確認する
そこには……。
Re、高橋 桜
用件 生徒会に
本文 きなさい(強制) 生徒会副会長さん(笑)
「メールの使い方がだるいな……あいつ」
ケータイの画面を見つめながら疲れた声で呟く。というか、生徒会副会長になってたの忘れてました。俺は二時間前を思いだした。
今日のLHRの時間を利用して行われた生徒会副会長信任式。俺はこれを失敗させるために裏で様々な活動をした。その中でも特に重要な役割を担っていた革命軍は空気のように役立たずで、俺は結局生徒会副会長になってしまったのだ。
過去回想終了。
俺はケータイを閉じて席を立ち上がると教室を後にした。出るときに「死ぬ……ダメ佐藤」、「キモいんだよ……ダメニスト」、「俺はそんなお前が好きだ」などの声が聞こえてきたのは知らないふり。最後のやつ……可笑しくないか?
そう突っ込んでも誰も反応しなかった。
「誰もいないんだが……」
教室を後にして廊下を歩き、階段を登った先にある生徒会室に着いた。ドアが開けっ放しだったので勝手に入った……まぁ、生徒会副会長だからいいんじゃね!?(権力乱用)
部屋には人の気配はない……当たり前のことだが、もちろん呼び出した張本人もいなかった。
俺はいらっとする気持ちを我慢して、席に座った。そんな俺の目に一枚の手紙のようなものが見えた。
「なんだこれ?」
俺は手紙を取ると見つめる。何処にでもある白い封筒。百均に売ってそうな安っぽい材質。少なくともラブレターではないことは察する事が出来た。
差出人不明、住所や生年月日などの情報、言ってしまえば不自然な封筒だろうか。
「開けて見ても大丈夫だよな? でもな……」
額に手を当てて開けるか悩む俺。
開けるのはいいのだが……中身が何か分からないから怖いのだ。もし中身が無いとは思うが、ラブレターだったとしたら俺は最低な男になるし、正体不明の爆弾だったら危ないし(やっぱり今の時代、テロの可能性は捨てきれないよな)
しかし、中身が気になる。それは純粋な気持ちだ。よぉぉぉし……開けるからな? いいな? いいよな?
と、自問自答して、俺は封筒を開けた。
「写真と手紙? なんだよ爆弾じゃないのかよ……リア充爆殺できないじゃん」
恐る恐る封筒を開けるとそこから出てきたのは、一枚の紙と4枚の写真。
紙は薄くて字が透けて見えそうだ……まさか本当にラブレターなんじゃないか。俺の顔から汗が流れ落ちる。
「紙は見ないようにしよう……まずは写真からにしよう」
そう。決心して俺は写真を持ち上げた……そして絶句した。写っていたのは俺の恥ずかしい写真、人には見せられない危険物。
なんでこんなものが……。
俺はそう力なく声を洩らした。
だが、この写真に写っている事に関して、俺は見に覚えがなかった。女子トイレを覗く自分の姿なんて……いやぁぁぁぁぁ!!
まぁ、要するにこの写真は合成で作られた偽造写真なのだ。しかし、俺はこの写真に恐怖することを止められない。
この写真は合成の作り物だ。だから、もしばらまかれたら否定すればいい……そう普通な人なら。
しかし、今の俺は学校一の嫌われ者……誰も味方してくれないし、誰も信じてくれない。
くそっ!! 犯人の野郎策士だな。
俺は写真をびりびりに引き裂くと、次は手紙を見てみる……そこにはこう書いてあった。
彼女達に近づくな。お前のようなダサくて、キモくて、頼りがいのない奴には似合わない。だから離れろ。もし離れないなら、この写真を学校充にばらまく。自分の愚かさ、無様さを知り、良く考えてくるたまえ……ボンニスト佐藤 翼くん。
「なんか夢から覚めた気分だな」
俺は窓から外を見上げてそう口にする。
初夏の夕方ということもあって外は明るく、雨の気配はまったく感じられない。遠くに見える山々の緑一色に染まりきった光景に夏を感じながら、俺は夢から、幻想から目を覚ました。
手紙を写真同様引き裂くと、俺は涙を流した。意思とは無関係に流れ落ちる涙を俺は拭き取る。
これでいいのだと……。
そんな時、ドアが突然開けられ、俺に声がかかる。
「お待たせ! 待たせてごめんね」
「いや、別にいいよ」
「どうかしたの? テンション低いじゃん」
桜は心底心配そうに俺を見る。
悪いな……桜……俺は。
「黙れブス!! お前ごときに心配されるとかヘドが出るから止めろ。マジうざい」
その言葉に桜は固まってしまった。突然のこと過ぎて理解出来ないといった様子だ。
俺は無言で生徒会室を後にした。生徒会室からは鳴き声が聞こえた。
だが、これでいいのだ。
やはり俺には青春ラブコメなんてくそくらえ!だった。
久しぶりに更新しました。
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