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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第7章 ついにその時が!
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~その13~ 一緒にジャグジー

「あ。また、腰砕けたのか?しょうがねえな」 

 一臣様は、私の腕を持って抱きかかえると、椅子に座らせた。そして、シャワーを持って私の体についている泡を流してから、

「髪も洗ってやるから、頭を下げておけ」

と、そう言った。


 髪も?!

 前かがみになると、シャワーと指でやさしく私の髪を濡らし、シャンプーをつけると、優しく髪を洗いだした。

 体を洗ってもらうのは、ドキドキで心臓が壊れそうだったけど、髪は、美容師さんに洗ってもらっているみたいで気持ちいい。


 ううん。美容師さんよりも気持ちいい。緒方財閥の御曹司にこんなことさせちゃってもいいのかな。

 シャンプーが済むと、ちゃんとトリートメントまでしてくれて、それを優しく洗い上げると、一臣様はタオルを取りに行って、優しく拭いてくれた。


「ほら。あとは自分で髪を拭け。ジャグジーにも入るんだろ?」

「はい」

 うっとりとしていて、ほわわんとしながら、私はタオルを頭に巻き、バスタブに入った。


 一臣様は自分の体を洗い出した。

 あ。

 あ、あ、あ。背中と胸、洗えなかったんだけど…。


 一臣様は何か、ブラシのようなもので洗っている。あれって、バスルームの壁にいつもひっかけてあったやつだ。バスタブを洗ったりするものじゃなくて、体を洗うブラシだったんだなあ。

 うっとり。


 それから、シャワーを壁に固定すると、一臣様は立ったまま、髪も洗い出した。ガシガシとシャンプーで洗い、それをジャバジャバとシャワーで流す。

 それから顔を上に向けてシャワーのお湯で顔を洗って、前髪を全部後ろに手であげて、オールバックみたいにすると、キュッとシャワーを止めた。


 そして両手で顔にかかっているお湯を拭うと、静かにバスタブに向かってきた。


 は~~~~~~~~~~~。今の動作、仕草、全部が素敵。まるで映画のワンシーンを見ているかのようだった。


 ぼけっと私はバスタブのふちにつかまりながら、一臣様を見ていた。その横に一臣様は入ってきた。

「なんだ。ジャグジーにしていないのか?」

「あ。忘れてました」

「なんだよ、俺にずっと見惚れているからだ」


 はあ。ばれてたか。でも、いいや。目を離そうにもきっと無理だと思うもん。

 

 一臣様は、ジャグジーのスイッチを入れた。バスタブの中は、ぶくぶくと泡が出てきて、強くなってきた泡に、一臣様は背中を当てた。

 私も一臣様のすぐ隣で、背中に泡を当てた。


 バスタブは私と一臣様が2人入っても、全然余裕だ。

 2人して足を伸ばし、

「あ~~、気持ちいい」

と言いながら、しばらくのんびりとした。


 お風呂はアロマの香りが漂ってきていて、だんだんと眠くなってくるほどだ。

「寝るなよ。部屋に連れて行くの大変なんだからな」

 あ。目が閉じかかっているの、ばれちゃった。

「寝ません」


 そう言った次の瞬間から、また瞼が下がってきた。今日、琴の演奏で緊張もしたし、一臣様に昨夜から数えたら、3回も愛されちゃったしなあ。疲れが出たのかな。


「寝るな。風呂の中で襲うぞ」

「駄目です…」

「駄目って言うと、燃えるんだよ」

 そう言うと、一臣様は私にキスをしてきた。


 でも、唇に触れるだけの…。あ、なんかもっと気持ちよくなって、眠くなったかも。

「寝るな。本気で寝ようとしているだろ、お前」

 ほわわわ~~~~ん。


「今日、酒飲んでないよな?」

「はい」

「弥生。こら。起きろよ」

 そう言うと、一臣様は私の胸を触ってきた。


「ひゃあ!!駄目!」

「あ、起きた」

 う。起こすために触った?違う?まだ、触ってる。


「駄目です」

「駄目って言われると…」

 燃えるって言うんだよね。じゃあ、なんて言ってやめさせたらいいの?そもそも、やめてくれるの?


「だ、駄目!」

「だから、駄目って言われても燃えるだけだぞ」

「でも、駄目です」

 し~~~ん。あ、無視してる。


「あ!!!!!駄目!!!!」

 きゃあ。声が裏返った。高い変な声になっちゃった。どうしよう。

「なんだよ、感じてるんだろ?」

 スケベ発言!変態発言!!!


「ここで、するか?」

「し、しません。それに体力的にもう限界」

「本当に?もう限界か?」

「…か、一臣様は?」


「俺だったらもう1回くらい」

「どこが、淡泊なんですか?うそばっかり」

「そうだな。いつもの俺だったら、考えられないよな。でも、相手がお前だと、燃えるな…」

 やめて!それも、なんだか変態発言!


「弥生もタフそうなのにな」

 いえ。いえいえ。恋愛初級者の私には、一気にレベルが上がりすぎて、もうヘトヘトです。

「ん?まだ、できるのか?」

「無理ですってば!これ以上何かしたら、明日会社に行けません」

「じゃ、休めば?」


「だ、駄目ですよ~~」

「いいぞ。上司の俺が言ってるんだから。有給にしてやるぞ?」

 信じられない。もう。


「明日、役員会議で私を紹介するって言っていましたよね?」

「あ。そうだったな。あ~~~。役員会議って9時からだ。じいちゃんばっかりだから、やたらと早くから始まるんだよなあ。遅刻できないな」

 一臣様はそう言うと、はあ…と溜息をついて、

「じゃあ、そろそろ風呂から出るか」

と、立ち上がってバスタブから出た。


 私もそのあと、続いてバスタブから出た。

 一臣様はバスタオルを持って、

「拭いてやろうか?」

と聞いてきた。


「け、結構です。あ!私が拭きます!」

 そう言って、私もバスタオルを持って、一臣様の背中を拭きだした。だって、洗えなかったんだもん。拭くのくらいはしてあげたい。


 してあげたいっていうより、一臣様の地肌に触れたいだけかも。

 って、私も、十分変態かも!


 だけど、広い背中をバスタオルで拭き、腕まで拭いて、腕の筋肉に惚れ惚れしてしまった。うっとり。

「前も拭くんだろ?」

 くるりと一臣様が前を向いた。

 うわ!胸をもろに見てしまった。きゃあ。


 恥ずかしいけど、拭いちゃえ!一臣様の胸やお腹。あ。やっぱり、腹筋しっかりとあるよね。

 ほわん。素敵。


 でも、手がお腹で止まった。その下までは、拭く勇気がない。ちらっと見て、パッと視線を外し、

「こ、ここまでで…。あとはご自分でどうぞ」

とそう言って、バスタオルを渡した。


「そうか?」

 そうかって、やけに素直に聞いてくれたな。でも、良かった。全身を拭けって駄々コネられたら、大変だった。

 って。あれ?あれれ?


 なんで、私の背中拭きだしたの?

「いえ。私じゃなくて」

「ご自由にどうぞって言ったろ?」

「ご自分でどうぞって言ったんです!」

 あ!お尻も拭いてる!


「きゃあ」

「前にも拭いたことあるから安心しろ」

 何が安心?前って?あ。そうか。私がバスタブで寝た時だ。


 そして後ろからふわっと抱きしめるようにして、体の前にバスタオルを持って来ると、べったりと一臣様の体を私の背中にくっつけて、抱きかかえるように私の胸を拭きだした。


 どんな拭き方?これって。うわ。なんか、真正面から拭かれても恥ずかしいけど、これはこれで、ちょっとエッチ…。

 チュ。

「ひゃ!」

 うなじにキスしてきたし。


「チュ」

 うわ!今度は肩。

「か、一臣様!」

「感じたのか?」


「駄目です!」

「ああ。また駄目って言ったな。その気になって来たけど、いいか?」

「駄目!」


 バスタオルが一臣様の手から落ちた。そして、私を後ろからギュッて抱きしめてきた。

 うわ~~~~~~~~~。それだけでも、心臓がばくばく!

 

「ここでするか?」

「しません!もう寝るんです!」

「本当にしないのか?」

「しません!!ったらしません!!!!」

 何度これを繰り返すんだ。確かさっきは、バスタブでもこんな会話をしたよね。


「残念だな。じゃあ、続きは明日かな」

 え。まさか、連日?

 本当に毎日?!


 くるり。前をいきなり向けられた。うわ。胸が一臣様に丸見え。

「チュ~~~~~!」

 え?


 な、なんで胸にキス?!

「ああ。ついた。キスマーク」

 ええ?!


「ブラウスを着ている分には見えないかな」

「き、キスマーク?」

 あ。本当だ。赤くついてる。ううん。うっすら薄紫。


「胸の開いた服を着たら見えるからな」

「き、着ません。ちゃんとブラウスで隠します」

「…うん。このキスマークも、俺にしか見せるなよ。な?」


 エッチ!

 心の中でそう叫んだ。でも、口にはできなかった。だって、エッチだと?とか言って、襲って来そうだし。


 一臣様はバスタオルを腰に巻くと、先にバスルームから出て行った。私もバスローブを体に巻き、鏡を見た。

 あ。キスマーク見えてる。

 ドキン!

 なんか、一臣様の印でもつけられたみたい…。


 か~~~~~~~~。顏が火照ってきた。

 そのまま歯を磨き、顔も洗ってから、私はバスルームを出た。一臣様は、立ったまま髪を乾かしていた。


「お前の髪も乾かしてやろうか?」

「だ、大丈夫です」

 ちょっとでも、髪や首に触れられたら、私がやばそう。きっと疼いちゃう。


 そそくさと私は自分の部屋に戻り、クローゼットを開けて下着をつけ、パジャマを着た。下着は、ごく普通の白い下着だ。

 

 なんだか、やたらと長い1日だった。いろいろあったなあ。

 そして、明日からはどんな日になるんだろう。そう思いながら、一臣様の部屋に戻った。


 一臣様はバスローブを着て、ソファにくつろぎながら、何かを飲んでいる。あ、水だ。ミネラルウォーターのペットボトルだ。


「私も、水もらってもいいですか?」

 そう聞くと、

「口移しで?」

と聞いてきた。


 もう~~~~~~。言うことが全部エッチなんだから!

「普通に、コップで飲みたいです」

「なんだよ。つまらないやつだな」

 もう~~~!!


 一臣様はグラスにペットボトルの水を入れると、渡してくれた。

「ありがとうございます」

 それをゴクンと飲んだ。あ。なんだか、喉乾いていたんだな。すごく潤う。


「足りるか?」

「はい。髪、乾かしてきます」

「ああ。そこで乾かせよ。髪を乾かしている姿見ていたいし」

 え。そうなの?


 ドキドキしながらも、チェストの前に座り、ドライヤーで髪を乾かしだした。一臣様は、私をじっと見つめていた。

「弥生」

「はい?」

 ドライヤーを止めた。


「お前さあ、俺のフィアンセで、そのうち奥さんになるわけだし」

「はい」

「そんな敬語は使っていないでもいいぞ。普通に話せよ」

「そういうわけにはいきません」


「なんでだ?秘書でもないし、メイドでもないんだ。普通でいいぞ?」

「……いいんですか?」

「ああ。俺はかまわない。それに、様もつけなくていいぞ」

「え?!な、なんでですか?」


「メイドじゃないんだし。普通にさん付けでもいいし、なんなら、呼び捨てにしてくれてもかまわないぞ」

「…さん付け?」

「お前、龍二はさん付けだろ?なんで俺は、様をつけるんだ?」


「なんでって。そうずっと呼んできたから…」

「じゃあ、龍二みたいに、俺のことも一臣さんって呼べばいいだろ?別にいいぞ。それで」

「一臣さん?」

「ああ。そっちのほうがしっくりくる」


「え?そうなんですか?でも、みんな、一臣様って呼んでいますよね?」

「みんな?」

「メイド達だけじゃなく、細川女史も、青山さんも」

「秘書だからな」


「…あ。樋口さんもだった」

「お前は俺の妻になるんだろ?あ。いとこの汐里は今日、一臣君って言っていたけど、いつもは呼び捨てだぞ」

「呼び捨て?」

「一臣って呼んでもいいぞ?」


 うひゃ~~~~~~~~~!一臣様を、一臣って?

 うきゃ~~~~~~~~~~~!心の中で呼んだだけでも、顔が火を噴いた!


「あはは。真っ赤だな。なんでだ?」

「こ、心の中で呼んでみたから」

「一臣って?」

「はい。やっぱり、無理そうです」


「じゃあ、ベッドの中でだけは、一臣って呼べよ」

「そういう趣味でもあるんですか?」

「どんな趣味だよ」

「わ、わからないけど」


「一臣様って、ベッドで言われると、かえって変な趣味でもあるみたいに感じるぞ」

「え?」

 変な趣味?

「主従関係でもあるみたいだろ?主と…奴隷みたいな?」

 奴隷?!


「それもそそられるけどな」

「うわ。そ、そんなの困ります。わかりました。いっつもさん付けにします!」


「…でも、ベッドでは」

「さん付けにします!」

「……。まあ、いいけどな。そのうち、呼び捨てにしてくれたら、それでも」

 なんで?なんで、呼び捨てがいいの?


「あと、その敬語もよせよ。特にベッドでは。まあ、愛の奴隷みたいでそそられはするけど。それでもいいならいいけど」

 愛の奴隷?なんじゃ、そりゃ!

「嫌です、わ、わかりました。普通に話します」

「今も敬語だったぞ」


「え?いつも敬語はやめるんですか?」

「…まあ。仕事中は敬語でもいいけどな。2人きりの時は、普通に話せよ」

「……はい」

「はいじゃなくて、うんでいいぞ?」


「え?」

 うんって言っていいの?なんだか、言い慣れていないから、変な感じ。だいたい、普通に話しているのって、葉月とくらいだし。友達とでも丁寧な言葉を使って、びっくりされられてたことよくあるし。


 でも、それを一臣様が望むんだったら。

 っと、違った。それを一臣さんが望むなら…。


「じゃあ、2人でいる時は、ふ、普通に話しま…。話す…。普通に話…」

 なんて言ったらいいんだ?

「えっと。普通に」

「ブッ!何回言い直しているんだよ」


「だって、慣れなくて」

 そう言うと、一臣様は私の後ろに来て、チュッとおでこにキスをした。

「髪、まだ濡れてるぞ。乾かしてやろうか?」


「いえ。大丈夫で…。だ、大丈夫。一臣様は…。一臣さんは、ソファで休んでいてくだ…。休んでいて…ね?」

 うっわあ。しどろもどろだ。最後なんて、ね?って、声あがっちゃったし。何様だ。私は。


「あははは。面白いなあ」

 ほら。面白がられた。もう。必死なのになあ。こっちは。


 だけど、夫婦になるんだもんね。あと半年もしたら。

 ドキン!私、緒方弥生になるんだよね。緒方弥生。これ、何度か心の中で呟いたり、紙に書いたりした。それで、うっとりとしていたっけ。


 それがもうすぐ叶うんだ。

 ドキドキ。一臣様を見た。あれ?一臣様も私を見ていた。目が合っちゃった。


 私はすぐに目線を鏡に向け、ドライヤーでまた髪を乾かした。

 あ。様じゃなくて…。さんでした。いつ、さん付けでスムーズに呼べるようになるのかな。


 


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