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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第7章 ついにその時が!
93/195

~その11~ 色っぽい私?!

「じゃあ、弥生。元気でな」

 葉月や、卯月お兄様が私にそう言って、正面玄関から出て行った。如月お兄様は一臣様に、

「弥生を泣かせるなよ」

と、怖い顔でそう言うと、私には頭を優しく撫でながら、

「辛いことがあったら、すぐに報告して来い」

と言ってくれた。

 ないと思うけど、「はい」と素直に頷いておいた。


 父はしばらく総おじさまと話をして、それから、

「弥生、皆さんに迷惑をかけないように、頑張るんだぞ」

と私の頭を撫でると、お屋敷を出て行った。


「じゃあね、弥生ちゃん。元気でね」

「弥生、もう戻ってくるんじゃないぞ」

 祖父と祖母もそう言うと、父の後を追って出て行った。


 私と一臣様と、総おじさまは、みんなが車に乗り込んで、その車が発進するまで見送った。


 やれやれと、一臣様は首を回したり、肩を回したりしながらお屋敷の中に入った。

「そうだ。総おじさまってなんだ?親父」

「それは、弥生ちゃんに聞きなさい。じゃあ、僕も疲れたから、もう寝るよ。おやすみ、弥生ちゃん」

 総おじさまは、私ににっこりと微笑んでそう言うと、階段を上がって行った。


「なんなんだ。いったい何がどうなってるんだ」

 そう言って、一臣様も私と一緒に2階に上がった。そして廊下を進もうとして、その暗い廊下に京子さんがいるのを発見した。


「うわ!びっくりした」

 京子さんはまだ、ドレス姿で、暗がりの中にいるから、一瞬幽霊に見えてしまった。

「ど、どうなされたんですか?京子さん」

 一臣様は顔を引きつらせながらそう聞いた。


「一臣様」

 いきなり京子さんは一臣様に抱きついた。

 うわ!抱きつかないで。と思った次の瞬間、京子さんはものすごいことを言いだした。


「わたくしは、元気です。その証拠にわたくしを抱いてください」

「は?!」

 私も一臣様も、同時に聞き返してしまった。


「まだ、一回も殿方に触れさせたことのない体です。でも、一臣様に捧げるために、わたくしは」

「ちょ、ちょっと待ってください。京子さん、言っていることが支離滅裂ですよ?」

 一臣様は、自分の体から京子さんをべりっと剥がすとそう言った。


「一臣様に抱いていただいても、わたくしの心臓は壊れません」

 え?

 私は壊れそうなくらい、バクバクしたけど。って、そういうことじゃないよね。


「そうですか。でも、僕が心配したのは、赤ちゃんを産むという行為ですよ。母体にはかなりのリスクがともなうんですよ?」

「大丈夫です。もう手術で元気になったんです」


「……僕は、一人だけではなく、最低二人は子供が欲しいですし、元気に子育てもしてほしい。こんなことを言ってはなんですが、京子さんから言い出したことなので、はっきりと僕も言いますが、結婚したら、奥さんになる人とは、セックスも大事にしたいと思っているので、何度もしますよ。京子さんにはそういうことは、無理だと思います」

「いいえ」


 京子さんはまた、一臣様に抱きつこうとした。

「申し訳ないが。父の話も聞いていましたよね?不本意ですが、僕はやはり、上条家の人間と結婚しないわけにはいかないんですよ」

 そう言って、また一臣様は京子さんの体を離した。


『不本意』と言う言葉に、私のほっぺがぴくりとしたけど、一臣様は気がつかなかった。


「それって、政略結婚ですよね?会社の犠牲になってよろしいんですか?」

 ああ。やっぱり。京子さんもそう思うんだ。

「僕には、会社を守るという義務があるんです」

「一臣様はそれでよろしいんですか?」


「は~~~~~。じゃあ、この際、はっきりと言っちゃいますよ。ぶっちゃけ話」

 うわ。一臣様、いきなり表情が変わった。眉間にしわがより、ああ、面倒くさいっていう顔をして話を続けた。


「俺には誰だって同じなんです。悪いですけど、たったの1~2日で、相手のことなんかわかるわけがないし、まあ、やよ…。上条弥生は好みではなかったくらいのことで、嫌っているわけでもないし」

 嫌っていたけど、最初は思い切り。でも、黙っておこう。


 私は2人の会話を聞いていていいものかどうか、その場で悩んでいた。でも、なぜか一臣様が私の腕を掴んでいたので、動けずにいた。


「タイプで言えば、あなたや、麗子さんが俺のタイプだ。それも従順で言うことを聞いてくれそうなのはあなただった。理由はそれだけです」

「え?」

「親父の言うとおりにするのも悔しかったっていうのも、正直あります。だから、上条弥生は除外視していた」

「………」


「受け入れるしかないんなら、受け入れますよ。俺もいい加減大人ですからね?跡継ぎを作らないとならないと言うなら、上条弥生も抱きます。上条弥生なら、元気にポコポコ赤ちゃんを産んでくれそうですしね」

 ポコポコ。また言われた。そんなに簡単に産みそうなのか?私って。


「ひどい。弥生さんをなんだと思っているんですか?」

「弥生だけじゃなく、どんな女だって同じです」

 あ。なんか、わざと自分を悪く言ってるんだ。一臣様。自分を軽蔑させて諦めさせようとしているのかも。


「じゃあ、龍二様が言っていたこと、本当ですか?」

「俺が女に手の早い最低な男だって?」

「そ、そうです」

「本当ですよ。ずっといい顔してましたけど、こいつはそれも知ってます。なにしろ、俺の会社で秘書をしているんだから、俺がどんな女と付き合っていたかも、全部知ってます」


「え?!」

「な?京子さんが思うような、そんな男じゃないよな?俺は」

「はい」

 あ。即答しちゃった。ちょっと一臣様、へそ曲げた?片眉、思い切りあがった。


「でも、弥生さんはそれで…」

「いいそうですよ。こいつも、あなた動揺、俺を一目見た時から惚れちゃったらしいから。俺のストーカーなんです」

 ばらしてくれた~~!!!酷い。


「え?」

「だから、俺に抱かれるのも平気だし」

 平気じゃないよ。平気じゃなかったじゃない!む~~~~。

「俺の子供も喜んで産みますよ。ポコポコと」

 ああ。もう、さっきからみんなして、ポコポコって…。


「……。で、でも」

「まだ何か?京子さんはもっと、誠実でお優しい男性のほうが合っていると思いますよ?体のためにはセックスも強要しないような」

「え?!」


 京子さんはしばらく顔を青ざめさせ、それから、

「では、弥生さんは」

と私を見た。

「……あなたも見たんでしょ?俺の部屋にこいつが入ってきたのを」

「え?では、やっぱり」

 次に一臣様を見た。


「その通りです。据え膳食わぬはなんとやらって言うでしょ?俺は、去る者追わず、来る者拒まずの最低の男ですよ?わかったら、どうぞ、今日中にご実家にお帰り下さい。もう、大金麗子さんも、長谷敏子さんも、お帰りになりましたよ。選ばれなかったら、ここにいる意味がないですからね」

「……」


 京子さんは目に涙を浮かべ、

「わたくしは、ずっと一臣様のことを思い違いしていたんですね」

と、そう言って、泣きながら部屋に戻って行った。


「弥生、俺の部屋に来い」

 なぜか、一臣様はそう大きな声で言うと、私を一臣様の部屋に入れた。


 なんで大きな声で言ったのかな。

「龍二が、そっとドアを開けて聞いてた」

「え?見えたんですか?」

「ああ。わかった。それで、お前を盾にして、京子さんからは見えないようにしてた」


 あ。それで私の腕を掴んでその場から動けないようにしていたのか。

「あいつが、今後、京子さんにどう接していくかは知らないけどな。とりあえず、お前のことは俺がいやいやながらも、受け入れたと思っているだろ」


「……酷いです」

「え?何がだ?」

「だって、何回も、ポコポコ産みそうって」

「ああ。それは本当のことだろ?俺はお前に俺の子供を、ポコポコ産んでほしいぞ?」


「……」

 ポコポコって。あれ?でも、今の嬉しいことを言ってくれたんだよね。

「弥生…」

 一臣様がそっと抱き寄せた。


「今日のお前、綺麗だな」

 え!?本当に?わあ。嬉しい!

「やっぱり、寸胴だし短足だしなで肩だし、着物似合ってるな」

 ガック~~~~~~~~~~~~。一気にテンション下がった。


「このピンクの色、お前に合っているし、花の柄も合っているぞ」

「子供っぽくないですか?」

「いいや」

「でも、色気ないですよね?」


「そんなことはない。着物はお色気満載だろ。たとえば、うなじ。それから、こんなところからするっと手を入れたり、着物がはだけたりすると、ゾクッとする」

 うぎゃあ。一臣様が着物の裾をまくりあげてきたから、足が見えてる。


「な?ミニスカート履いて出ている脚より色気がある」

「駄目です!」

「なんでだ?脱がしてもいいだろ?ああ、俺、あれを一回してみたかったんだ。帯の端もって、あ~~れ~~ってぐるぐる回すやつ」


 もう~~~!いきなり、エロ度満載?スケベに変身?


「駄目です。ちゃんと脱いで、ちゃんと畳まないと、帯も着物も痛んじゃいます」

「ちぇ」

 ちぇ?今、舌打ちした!?


「まあ、いいけどな。今日は、紐パンだよな?早く着物脱いで、パジャマに着替えろよ。あ、なんなら、下着だけでもいいぞ」

「そ、そんな姿で一臣様の前に行ったりしません!」


 もう~~~~!もう~~~~~!もうちょっと、ロマンチックなことは言ってくれないの?着物だって、結局スケベ発言しただけで、私を褒めてくれたわけじゃないし。


 なんだかなあ。誰でもよかったのかもって、本気で疑っちゃう。子供さえ生んでくれたら、誰でもよかったの?


 私の部屋に行って、着物を脱いだ。それから、ちゃんと帯を畳んだり着物を畳み、片づけた。あとは長襦袢と裾よけを脱いで、普段着になったらいいだけ。

「それも色っぽいな。いや、それがいい。そのままこっちの部屋に来い」

 え?!


 一臣様がドアを開け、私の部屋に来て突然そう言った。

 それ?って、長襦袢?!

「なんだよ。弥生もそういうのを着ると色っぽいんだな」

 はあ?!


 ちょっとちょっと。いきなり私の手を取って、意気揚々と一臣様は歩き出しちゃったけど。

「待ってください。まだ、パジャマと下着用意していないです」

「ああ。いらない」

「え?ど、どうしてですか?」


「そのままでいい」

「なななな、なんで?」

「その色っぽい姿のまま、お前のこと抱くから」

 ひょえ~~~~~~~~~~っ!!!


「ままま、待ってください!私、いっぱい汗かいたし、お風呂は入ります!」

「どうせ、もっと汗かくから、あとでいいぞ」

「よくないです、私汗臭いです」

「弥生の汗の匂いなら、俺は気にしない」


「私が嫌です。気にします」

「俺の汗の匂いをか?じゃあ、俺だけシャワー浴びたらいいな?」

「一臣様の汗?」


 うっとり。

「なんでそこで今、うっとりとした?俺の汗の匂いは好きなのか?」 

 ハッ!私って変態?!


「い、い、いいえ」

 でも、まだ一臣様はタキシードだ。タキシードの上着は脱いでいるけど、ベストは着ている。

 それからタイは外しているけど、シャツの第二ボタンまで開いていて、ベストも前を開けているから、やたらセクシーだ。


 バスローブを着て現れる一臣様もセクシーでいいけど、できたらまだ、このタキシードは着ていて欲しい。

 いや、正確には、このタキシードを脱いでいく姿が見たいような…。


 うわ。今のうそ、うそ!今の私の思考はキャンセルです。

 そんなところは、見たくありません!

 う~~~~!やめて。勝手に妄想するのは。でも!


 妄想モードに、今入っちゃった。一臣様がベストを脱ぎ、シャツのボタンを一つずつ外していく。真っ白なシャツからは、引き締まった一臣様の体が現れる。

 ドキ!


 そこで、今度は私が脱がされちゃう?ううん。まずはベッドにこのまま押し倒されちゃう?私のほうが先に脱がされて、私はベッドの上に寝かされたままで、一臣様が脱ぎ出す?

 それを見れちゃうの?


 駄目!!!

 キュキュキュンって、妄想だけで疼いた!もう私ったら完全に変態かも。


「弥生?」

「……」

「や、よ、い!なんだって、いきなり黙り込んで赤くなった?変な妄想中か?!」

「ごめんなさい、そうです」


 うわ。今、私、思い切り正直に答えたかも。

「妄想していたのか?いったいどんな?俺に、その着物の下着、脱がされるところか?」

「いいえ。あ、言っておきますけど。長襦袢って言うんです、これ。で、下着は着ていますけど、まったく色気ないですよ」

と、冷静になってそう言った。


 実は、私の妄想を悟られないように、わざと冷静を装って、そう言ったんだけど。


「パンツは?着物用のとかあるのか?それも、色気のないパンツか?」

「パンツは、パンツの線が見えないように、着物の時いつも履いてない…」

「え?ノーパン?」

 ぎゃあ!自分でばらしちゃった!やばい。


「ま、まじで、さっきからずうっとノーパンなのか?」

「………い、い、いいえ」

「じゃ、見せてみろ」

「駄目です!!!!」


「履いてるなら抵抗しないでもいいだろ?」

「違います。いいえって言ったのは、パンツのことじゃなくって、えっと、下着はつけているから」

「パンツじゃない下着?まさか、ふんどし?」

「違います!裾よけです」


「裾よけ?なんだ、それは。どういうものだ。見せてみろ」

 え?

 一臣様の部屋のドアをバタンと閉め、一臣様は私を壁に押し付けた。


 え?なんで?

 うわ!長襦袢の裾、めくってる?

「駄目です!」

 ノーパンだってば!言ったのに。


「なんだ。また同じようなのが出て来たぞ。何枚この襦袢ってやつを着てるんだよ」

「それが裾よけです」

「これが下着?」

「はい」


「え?ってことは、この下は?」

 一臣様は裾よけもまくって、手を入れてきた。

「きゃ~~!駄目です!」

「何もつけてないのか?」


「そう言ったじゃないですか!」

「すげえな。着物って。エッチしやすくなってるんだな」

「違います。そういうわけで、つけてないわけじゃないんですっ!!!」


 変態。変態だ!そう叫んでみようかな。

 でも、私も一臣様の、タキシード姿にこんな状況なのに、うっとりしちゃうから、人のこと言えない。

 

 うわ。手、お尻に到達した!ぎゃあ!

「あ、本当だ。パンツ履いていないんだ。ふんどしも」

 だから、言ったのに!


「駄目。手、駄目!」

「駄目って言われると燃えるんだって」

 じゃあ、どうしたらいいの?!

 うわ!キスもしてきた。


 それも、舌が入ってきた…。駄目だ。これ、力が抜けて抵抗できない。それに、腰が抜ける…。


 ガクン!立っていられなくなり、その場にしゃがみ込むと、一臣様は黙って上から見下ろしたままだ。

 なんで?いつもだったら、優しく抱き留めてくれるか、持ち上げてくれるかしてくれるのに。


 なんか、一臣様、性格が変わっちゃったとか?

「それ、色っぽいな」

「え?」

「襦袢と裾よけから、太ももが見えてる図…。やたらと色気があるな…。それに、襦袢の胸はだけてるし、お前バスローブだと色気ないのに、それだと色気が出るんだな」


 ハッ!そうか。上から見下ろしていたのは、胸がはだけてて見えているからか。

 ますます、変態!でも、力が抜けてて立てない。


 一臣様はしゃがみ込むと、太ももを手て撫でた。

「ひゃ!」

 うわ。私、なんて声をあげてるの?恥ずかしい。


 真っ赤になると、

「お前、色っぽいのに可愛い」

と言って、耳にキスをしてきた。


 うわ~~~~~~~~。目の前の一臣様だって、十分色っぽい。鎖骨見えてるし、コロンの匂いもしているし。


 それから、ひょいっと一臣様は私をお姫様抱っこした。私は慌てて一臣様の首に腕を回した。

「なんか、いいな。今日の弥生」

「え?」

 一臣様、顔にやけた。


「江戸時代かなんかで、初夜を迎えましたって感じでいいよな」

「………」

 やっぱり、発想がすけべ。

 にやつきながら、ベッドに私を寝かせると、一臣様はベストを脱いだ。それから、真っ白なシャツのボタンを一つずつ外しだした。


 うっとり。

 色っぽいのは一臣様の方。タキシードを着たお屋敷の主かな。じゃあ、私は…。

 って、なんだって、想定を考えて、妄想しようとしているの?これじゃ、一臣様と変わらない変態だよ。

 一臣様は堂々と口に出している分、明るいスケベ。でも私は内緒にしているから、むっつりスケベ?

 

 って、ことは何?私のほうがよりスケベ?だったりする?

 うひゃ~~~~~~~~~~。

 



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