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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第7章 ついにその時が!
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~その4~ 2人の朝

 なんだろう。京子さん。いったい、何をしに来たんだろう。

「じゃあ、あとで、午後にでも2人になれる時間を設けます。それでいいですか?」

「一臣様のお部屋に入れてもらえるんですか?」

「いえ。応接間で会いますよ」


「でも、昨日は…」

「上条弥生のことですか?なんの話ですか?僕にはさっぱりわかりませんが」

 うわ。思い切りすっとぼけた!


「……そ、そうですか。私の勘違いかもしれません。では、のちほど」

 やっと京子さんは、自分の部屋に戻って行ったようだ。


 一臣様は難しい顔をして、戻ってきた。

「面倒くせえなあ」

 あ。難しい顔じゃなかった。面倒くさいっていう顔だった。


 私はベッドに座っていた。一臣様はその隣に座ってくると、私の腰に手を回した。

「思い切り、しらばっくれたんですね」

「そりゃそうだ。向こうだって、こっそりと見ていたんだからな。お前が部屋に入って行くところを見ていたって、俺にばれても困るのは向こうだろ?」


「京子さん、なんの用事があったんでしょうか?」

「さあ?色仕掛けか」

「え?」

「じゃなきゃ、なんだろうな?」


 そう言ってから、一臣様は私の頬にキスをした。

「昨日の夜、大金麗子やハゼまで部屋に来なくて良かったよな。ちょっと、ヒヤヒヤしていたんだ。まあ、鍵をちゃんと閉めていたから、入って来れるわけもなかったんだがな」

「……鍵?」


「ああ。忍び込んで来て、俺がお前とエッチしてましたなんてばれたら、やばいだろ?」

「…はい」

 スル…。

 あ。一臣様の手が、パジャマの上着の裾から入ってきた?


「あの!」

 うわ~~~。やめて。私、下着もつけていないのに。

 必死に一臣様の腕を両手で掴んで、阻止しようとした。でも、力が私よりもあるから、びくともしない。


「駄目!」

「駄目って言われると、ますますその気になるもんなんだなあ」

 ええ?!


 何を言いだしたの?

「ずっと俺は、淡泊な人間なんだと思っていたし。終わったら、さっさとシャワー浴びて、服着て、帰っていたしな」

「え?なんのことですか?」


「だから、エッチをした後だ。昨日みたいに、余韻なんかに浸ったこともないし、2回も抱きたいって思ったこともない。だから、一臣様はクールだの、淡泊だのって、そう言われていたんだ」

「………」

 2回?


 でも、今の一臣様は、思い切りスケベ。

 ううん。前から、ずっとスケベだったけど。どう見たって、クールでもなきゃ、淡泊でもない。なんで?


「駄目って言われたら、ああ、別にいいぞ、抱かなくてもってそう言って、そのまま、さっさと帰ったこともあった」

 え?

「面倒くさいだろ?駄目って言われたのに、それをくつがえさせるなんて」

 ここでも、相当な面倒くさがりがあらわに…。


「だけど、お前に駄目って言われると、ゾクッとするのはなんでだろうなあ?」

 ゾク!?ゾクって何?!

「つい、駄目って言われると、襲いたくなるのは、やばいよな?」

「や、やばいと思います」


「……。でも、本当はお前も、その気になっていたり」

「なっていません」

「そう言っておきながら、実は疼いていたり?」

「していません」


「そんなこと言って、こうやって俺が触ったら、ちょっと感じていたり…」

「してませんってば!」

 やめて!本当のこと言うと、疼いていたし、感じていた。でも、駄目。駄目ったら駄目。


「う~~~~ん」

 唸りだした?

「面倒くさくなりましたか?もう、じゃあやめましょう。私、シャワー浴びて来るし」

「いや。面倒くさいどころか、今、どうやって落とそうか作戦を練っていたところで」

「は?」


「あ!そうか。一緒にシャワー浴びるか!」

「浴びません!」

 そんな会話をしている隙に、一臣様の腕から抜け出し、私は一気にバスルームに駆けて行った。


「あ、逃げたな」

 後ろからそう言われた。でも、バタンとバスルームのドアを閉め、中から鍵まで閉めた。 


 おかしい。一回、一臣様に抱かれたら、もう襲われたりとか、迫られたりする危機もなくなるだろうなって思っていたのに。

 なんだか、前より危機感は増したし、スケベな一臣様はさらにスケベ度を増したような気がする。


 え?これが普通なの?みんなそうなの?落ち着くものじゃないの?もっとエスカレートしていくものなの?

 それって、どこまで?


 シャー。シャワーを浴びながら、ずっと頭の中はぐるぐるしていた。

 まさか、毎日、抱かれるような事にはならないよね。とか…。

 あのまま、一臣様の腕から抜け出さなかったら、私、また一臣様に抱かれちゃってたの?とか…。


 ちょっとだけ、あのあと、どうなっちゃうのかを妄想した。あのまま、手がどんどん忍び込んできたら。

 だ、駄目だ。鼻血が出そうになった。危ない。


 あれ?なんか、昨日もつるつるだったけど、さらに肌のつるつる度が増してない?

 あ。そういえば、祐さんが、セックスをすると綺麗になるって言っていた!それで?


 うわあ!

 

 こんなに顕著に肌に顕れちゃうわけ?じゃ、じゃあ、年柄年中一臣様としていたら、ずっと肌つるつる?


 って。いったい何を考えているんだ、私は。


 バカバカバカ。あ、そうだ。シャワー浴びただけじゃなくて、石鹸で洗っておかないと。じゃないと体から、一臣様のコロンの匂いがしていそうだ。

 

 石鹸で洗いだした。そして自分の体を見て、顔が火照ってきた。

 この体、一臣様に愛されちゃったんだ。


 うわ!だから、そういうことを考えるのやめようよ。もう。なんだって、すぐに妄想し始めるの?いや。今のは妄想じゃなくて、回想。


 駄目だ。また、勝手に回想が始まった。

 一臣様の触れる手も、キスも優しかった。

 

 大人のキス、気持ちよかった。あんなに気持ち良くていいの?


 って、だから、回想やめて、さっさとシャワー浴びて出ようよ。一臣様が長いこと入っていると、変に思うよ。

 それからは、そそくさと体を洗い、石鹸を流してバスルームを出た。


 私は、バスローブも、下着も、何も持たず、ただ、一臣様のパジャマだけでバスルームに入ってしまったので、それを着てまた出てきた。

 もう、バスタオルを巻いて出ることはしなかった。あれはものすごく危険なんだってことを思い知ったからだ。


「………」

 一臣様がじいっと私を見ている。なんで?怖いぞ、なんか。


 それから、すごい速さで私の真ん前まで歩いてくると、私の腰に両腕を回して抱きしめてきた。

「つかまえた」

 え?


 何?何?え?

「もう、逃がさないからな」

 え?え?え?なんのこと?


 あ!スルッとまた、パジャマの裾から手を入れてきた。

「だ、駄目!下着つけてないんです」

「自分でばらしたな?」


 うわ。本当だ。ばらしちゃった!

「駄目」

「だから、駄目って言われると、燃えるんだって」

 燃える?


 ま、まさか、ずっと私がシャワーから出てくるのを待ってた?

「お前、まさか、下着もつけないで、パジャマの上着だけ着て出て来るとは思わなかったぞ」

「え?」


「胸もと、見えてたぞ。俺のパジャマでかいから、胸の谷間見えちゃうんだな。だから、下着つけてないのもばればれだな」

 ぎょえ~~!それで、私をじいっと見ていたの?!


「やっぱり、抱かれたいんだろ?」

「違います」

「この格好で出てくるなんて、誘ってるんだろ?」

「着替えを持って入らなかっただけです」


「まあ、そういうことにしておいてやるけど」

「本当のことです。あ!!!!」

 お尻!触ってる。直にお尻に手が!


「か、一臣様。本当に駄目」

「なんでだ?時間もあるし、大丈夫だろ?」

「でも」


 でも、でも。うわ~~~~!


 なんだって、私は、着替えを持って入らなかったんだろう。

 ああ、そうだ。自分の部屋のバスルームに逃げたら良かった。


 なんだっていつも、考えなしなんだろう。本当に一臣様が言うように、私ってあほだ。


 一臣様が熱いキスをしてきた。とろける。意識が朦朧とする。


 キスが終わって、私は一臣様の胸に顔をうずめた。一臣様はバスローブの胸がはだけていて、素肌に顔をうずめてしまった。

 ドキ。また、一臣様のコロンに包まれた。


 ああ。今さっき、石鹸で一臣様の匂いを消したのに、また、私の体に染みついちゃう。


 ギュウって片手は、一臣様が私の背中を抱きしめている。だから、へなへなと座り込まないでも大丈夫だけど、もう立っているのもやっと。


 キスだけでも腰抜けるのに、さっきからずっと一臣様の片方の手は、パジャマの中。お尻や腰や太ももを優しく撫でている。


 腰、砕けた。足に力も入らない。

 ガクンと、力が抜けてしまって、私は慌てて一臣様に抱きついた。

「弥生?腰、抜かした?」

「う…。はい」


 恥ずかしいよ~~。

 一臣様がいきなり、私をお姫様抱っこした。ひょいと私を抱くと、そのままベッドに連れて行かれた。


「弥生を食うぞ。いいな?」

 そう言って、一臣様はパジャマのボタンを外しだした。

「はい」

 わ。はいって、言っちゃった。


 あれ?デジャブ。そうだ。パンケーキ…。あの時は間違って聞いちゃったんだった。思えば、あの時から私、もう覚悟が決まっていたのかもしれない。

 

 それにしても、こんなに何回も、愛されちゃっていいのかな。朝から、こんなことしてていいのかな。

 あれ?


 いいのかも?


 そうだよね。いいんだよね。

 愛されちゃってもいいんだよね?何回だって、毎日だって。


 なのに、なんだってあんなに、駄目ですってかたくなに断っていたんだろう、私。


 トロンととろけて行く意識の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 じゃあ、これからはやっぱり、襲われる危機とか、迫られる危機とか、感じなくてもいいんだ。だって、迫ってきたら、受け入れたらいいだけのこと。


 こうやって、一臣様は、優しく愛してくれるんだから。

 もう、怖いとか、そんなこと思わなくていいんだから。


 一臣様が私の指に指を絡ませた。そして、耳にキスをして、それから首筋に優しくキスをする。

 それだけで、うっとりだ。


「弥生?」

「…はい」

「痛いか?」

「………いえ」


 痛くなかった。そうか。最初だけなんだ。


 ほわ~~~~~~~~~ん。痛いどころか、気持ちが天まで昇って行くようだ。

 


 しばらく、ぼ~~っとした。一臣様は、私のおでこや頬や、鼻の頭や、肩や胸や、いろんなところにキスをしてから、ベッドから起き上がり、

「また、汗かいた。シャワー浴びてくるぞ。一緒に浴びるか?」

と聞いてきた。


「…私、まだ、ここでぼ~~っとしていていいですか?」

「……力尽きたか?」

「はい」

「今夜、琴弾けるよな?その余力はあるよな?」


「はい」

「だよな。俺、そんなに激しく抱いてないぞ」

 え?

「……ん?」


 私が目を丸くして一臣様を見たので、一臣様も目を丸くした。

「激しかったのか?」

「いいえ。優しかったです」

「じゃ、なんでびっくりしたんだ?今」


「は、激しくすることも、あるのかなって、ちょっと」

「ああ。ある。だけど、いきなりはしないぞ。それも、段階を踏んでだな…」

 え~~~~~っ!!!ここにも、段階があるの!?


「って言っても、俺は淡泊だから、そうそう激しいのはしたこともないし」

「じゃ、じゃあ、しませんよね?」

「いや。弥生となら、激しいのも…」

 そう言いかけて、なぜか一臣様はやめた。


 そしてちらっと私を見ると、

「してほしいか?」

と聞いてきた。


 グルグルと首を横に振った。すると、

「じゃあ、そのうちな?」

と言われた。


 いえ。いえいえいえ。今、首を横に振りましたよ。縦じゃないですけど!

 

 一臣様は、バスローブを手に持ち、鼻歌交じりでバスルームに素っ裸のまま行ってしまった。

 あ。お尻見ちゃった。しっかりと。恥ずかしい!


 じゃなくて!私もぼ~~っとしていたけど、布団も何もかかっていなかった。素っ裸でぼ~~っとしていた。うわあ!!!


 今さらだけど、慌てて布団にくるまり、それからまた、ぼけ~~っとしていた。


 琴、演奏できるかな。着物、着れるかな。

 

 ぼ~~っとしながら、そんなこをと考え、そのあと、

「あ。今日、フィアンセ決まるんだ」

と、とっても大事な日だってことを思い出した。



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