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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第7章 ついにその時が!
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~その3~ 満たされた心

 ドクン…。ドクン…。一臣様の胸に耳を当てると、とっても正確なリズムで心臓が音を立てているのがわかった。

 一臣様が優しく髪を撫でている。


 今も、溶けちゃいそうだ。

 幸せすぎて、全部夢でしたっていうことはないよね?


 でも、夢にしてはリアル過ぎかな。痛かったし。

「痛かったか?」

 うわ。心の中を見透かされたのかと思った。


 私はしばらく黙ったまま、一臣様の胸に顔をうずめていた。でも、

「痛かったです」

と、正直に答えた。


「もう、大丈夫か?」

「はい…」

 一臣様、優しい声だ。


「で…。俺に愛されてるって実感はできたか?」

 ドキッ!

「それは…。思い切り…」

 なんだか、照れくさくなって声がフェイドアウトしてしまった。


「俺は自分でもびっくりしているぞ」

 え?

「何をですか?」

 一臣様は、髪を撫でていた手を私の背中に回して、ギュッと抱き寄せた。


「心が、すっごく満たされたから」

 それは、私もだ!

「弥生が、すごく可愛くて、どうしようもないくらい、抱きたくなってた。抱かないと、この思いはどうなっちゃうんだって、正直、自分でも怖いくらいだった」


 え?!

「だから、抱いたら落ち着くだろうなって、そう思っていたんだがな」

「………」

 落ち着いちゃったの?


 抱きしめていた腕を一臣様は離した。それから、上半身をあげたから、私は一臣様の胸から頭をどかした。

 あれ?起きちゃうの?さっさとバスルームに行って、シャワー浴びちゃうの?


 それで、もう寝るぞ、とか言っちゃって、さっさと寝ちゃうの?


 なんて、思っているのもつかの間、一臣様はなぜか、私の上に覆いかぶさってきた。

 え?


 待って。待って。まさかと思うけど、まさか、また…なんてことはないよね?


「弥生は、あったかいな」

 ドキ。

「それに、柔らかいな」

 ドキドキ。


「肌もつるつるだったぞ」

 そ、それはエステのおかげ…。


「お前…」

 一臣様が顔をあげて私を見た。そして、じっと私と見つめ合うと、

「全部が、可愛いよな」

と、そう呟いた、


 ぜ、全部が、可愛い?

 ひゃ~~~~~。顏がどんどん、火照っていく。


「やばいよな。抱いたら落ち着くと思っていたんだ。でも、逆効果だ」

「え?!」

「もっと抱きたくなった」

 ひょえ!


「もっと、弥生が可愛くてしょうがない」

 ひょ、ひょえ~~!

「弥生の全部が、可愛くて、離したくない」

 うわ~~~~~!


 そう言って、一臣様は私の胸にキスをした。それから、脇腹、それから、お腹、おへそ…。

 うわ。

 うわ。

 うわわわわ。


 全部、気持ちいい。

 なんて、言えない!!


 う!ふとももにもキスしてる。それから、膝。すね。足の甲。足の指も?!


 くすぐったいよ~~!!

「く、くすぐったいです」

 足をねじらせてそう言うと、

「ああ。そういうところも、可愛いよなあ」

と、呟かれた。


 ど、どうしたんだ。なんか、一臣様が、変。

 いや。私も十分に変だ。一臣様の視線とか、触れる手とか、ちょっとしたことだけで、キュンって疼いてる。


 一臣様は、また上半身を起こして、私をじっと見つめた。

 キュキュン。見つめられるだけで、胸の奥が疼いちゃうんだってば。どうしよう。でも、視線外せなくなってる。


 すうっと、私のおでこから、鼻筋を指で一臣様はなぞった。それから、唇にそっと触れて、顔を近づけ、優しくキスをする。

 うわ~~~~~~~~~~。と、溶ける。


 髪を優しく撫でてきた。また、顔をあげて私を見つめる。


「弥生?」

「はい」

「愛してるからな?」


「!!!!!」

「なんだよ。そんなに目を丸くして驚くなよ」

「だって」

 そんな言葉、言われるなんて思ってもみなかったから。


 じわ。涙が出てきた。

「ああ。だから、そんな涙目で見るなよ。また、襲いたくなるだろ?」

 そう言うと、一臣様は私の瞼にキスをして、

「お前、可愛すぎだぞ」

と、囁いた。


 はう…。

 だったら、一臣様は、優しすぎる。優しくて優しくて、私はずっととろけている。一臣様の優しさに。


 一臣様は、私の横に寝っころがると、私を抱きしめてきた。

「明日の朝まで、このまま抱き合って寝ような?」

「はい」


「こうなったら、誕生日パーティ、ほったらかして、明日もずうっと、抱き合ってるか」

「え?まさか。そんなことは…」

「ははは」

 あ。冗談だったのか。そりゃ、そうだよね。


「お前から、1日早く、誕生日プレゼントをもらったな」

「え?」

 それって、私?!


「やばいくらいに、嬉しすぎるプレゼントだったぞ」

 うそ。

 その言葉にまた、じ~んとしてしまった。


「私も」

「ん?」

「幸せすぎて、今、溶けそうです」

「なんだよ、それ」


「ううん。もう溶けてます。一臣様が優しすぎて、とろとろに」

「俺が優しすぎ?」

「はい」

「そうか。そうだな。こんな気持ちになったのも、生まれて初めてだしな」


「え?」

「愛しくてしょうがない。可愛くてしょうがない。って、そういう気持ちだ」

 ひゃあ!


「優しすぎだの、溶けるだの、そうなるのもわかるぞ。俺も、溶けそうだからな」

「え?一臣様も?」

「ああ。幸せで満たされて、溶けそうだ」

 ギュ。一臣様に抱きついた。


「いつも、ぽっかりと穴が開いていたのにな」

「…」

「誰といても、埋まることもなかったし、満たされることもなかったのにな」


「い、今は?」

「満たされ過ぎて、溢れてるな」

「……、わ、私もです」


 ギュ。また抱きついた。

「お前、可愛すぎ」

 そう言って、一臣様は私の髪にキスをした。


 このまま、本当に、ずうっとずうっと、一臣様の腕の中にいたい。

 裸のまま抱き合って、ずうっと。


 それからも、一臣様は私の髪にキスをしたり、優しく背中を撫でたり、顔を起こして、唇に優しくキスをして来たり、ギュッて抱きしめて来たり、私も一臣様を抱きしめたり、胸に顔をうずめてみたり、そんなことを繰り返していて、なかなか眠りにつくことができなかった。


 でも、外が白々と明るくなる頃、一臣様の寝息が聞こえてきた。

 私も、その寝息を聞いて、安心して眠りについた。


 幸せだ。

 怖いくらい幸せって言葉あるけど、本当にそんな気持ちになったりするんだな。


 夢の中でも、一臣様に抱きしめられていた。私はずっとふわふわと幸せな気持ちでいた。


 ブルル。ブルル。ブルルル。アラームが鳴った。ような気がする。それを一臣様が腕を伸ばしてバシンと止めた。気がする。


 全部、朦朧とする意識の中での出来事で、夢なんだか、現実なんだかわからなかった。

 なんとなく薄目を開けてみると、目の前には一臣様の、素肌が見えた。


 あ。

 一臣様、裸だ。


 そして、ギュッと一臣様に抱きしめられていることに気が付いた。

 それから、なんとなく視線を下げると、私も素っ裸だった。


 あ!


 そうだった。昨日、一臣様と、結ばれちゃったんだ!!!

 目がしっかりと覚めた。でも、一臣様はすーすーとまた、寝息を立てて寝てしまっていた。


 腕はしっかりと、私を抱きしめたまま。

 これじゃ、身動き取れない。


 ドキドキ。裸のまま、朝まで寝ちゃったんだな。いや。朝って言うか、さっき、寝たばかりのような気もするけど。


 起きなくていいよね。きっと、大丈夫。ダイニングに行って朝ご飯食べなくても、誰も呼びに来たりしないし。

 そう思って、また、私も目を閉じた。


 スースー。一臣様の寝息を聞きながら、私も眠りについた。


 次に起きた時には、目の前に一臣様の顔があって、私を優しく見つめていた。

「おはよう、弥生。いや、おそようかな?」

「……え?」


 まだ、頭がぼ~っとしている。おそようって?

「もう、10時だぞ」

「10時?!」

「でも、多分、寝たのが4時か5時だから、そんなに寝ていないけどな」


「……あ」

 掛け布団がずれていて、しっかりと胸があらわになっていた。

 きゃあ!慌てて、布団の中に体全部をしまった。


「今さらだからな?弥生の体は全部、知ってるんだから、隠したって意味ないぞ」

「でも!」

 恥ずかしいよ。


 まさか、一臣様、ずうっと私の胸も見てた?!


「ぐっすりと寝てたな」

「は、はい」

 本当は途中で起きたんだけど。


「キスしても、目を覚まさなかったな」

「キス?!したんですか?」

「ああ。唇にして、鼻の頭にして、ほっぺにしても起きないから、胸にも」

 む、胸!?!!!


 まさか、だから、掛け布団がずれてた?!


「やっぱり、お前の胸、可愛いよな。そのくらいの大きさがちょうどいいし、色もピンクで可愛いよな」

 ぎゃあ!セクハラ発言。違う。スケベ発言!勃発!!!!


 私は、思い切り掛け布団の中に隠れた。

「なんで、隠れてるんだよ?弥生」

 そう言って、一臣様まで布団に頭まで潜り込み、抱きしめてきた。


「可愛いな、お前。食べたいくらい可愛いな」

 え?

「朝飯いらないから、弥生を食べていいか?」

「今?!」


「ああ。痛みももう消えただろ?」

「ま、まだ」

「痛むのか?」

「痛いっていうか、変な感じが…」


「それはあれだ。もう一回したら、治る」

「そ、そういうものなんですか?」

「冗談だ。本気にするな」

 一臣様はそう言うと、私のおでこにチュッとキスをして、

「抱きたいけど、我慢するか。あんまり、無茶させると、琴も弾けなくなるしな」

と、そう言ってベッドから立ち上がった。


 うわ!そうだった。オールヌードだったんだ。一瞬、一臣様の裸見ちゃった。

 って、前にも見たことあったっけ。


 掛け布団に顔をうずめ、静かにしていた。すると、

「あ」

と、一臣様が一言言って、黙り込んだ。

 あ?


 そっと掛け布団から顔を出すと、一臣様はすでにバスローブを羽織っていて、腕を組んでベッドの上をじいっと見ていた。


「ま、いっか」

 ん?ま、いっか?

 一臣様はそう言うと、そのままバスルームに行ってしまった。


 私は慌てて起き上がり、一臣様が凝視していた箇所を見た。すると、シーツに赤い花が咲いたように血の跡がついていた。


 これ。これって!!!


 うわあ。ここのベッドメイキングはいつも、喜多見さんだよね?こんな跡が残っていたら、一臣様と私がエッチをしましたっていうのが、バレバレ!!!


 でも、一臣様、「ま、いっか」で済まそうとしたよね。

 

 呆然と血の跡を見て、私はその場に布団にくるまって座り込んでいた。これ、どうしたらいいんだろう。洗う?自分で?でも、どこに干す?


 すると、一臣様がシャワーを浴びた後なのか、すっきりした顔で出てきて、

「なんだよ。何を悩みこんでいるんだ?」

と、私に聞いてきた。


「こ、これ…」

「ああ。処女を失った証」

 え?!

「これで、本当に弥生が処女だったってわかって良かったな?下宿先の男どもに、酔っ払って寝ている間に襲われていなくて俺も安心したぞ?」


「そういうことじゃなくて!これ、どうしようって今、悩んでいたんです」

「何で悩むんだ?」

「喜多見さんがベッドメイキングするんですよね」


「ああ。大丈夫だろ。俺が鼻血出したかと思うかもしれないし、お前が生理なのかと思うかもしれないし」

 え?


「一回、鼻血を出して、シーツ汚したこともあるしな」

「だ、誰といてですか?!」

「一人だ。あほ。ここに女なんて、連れ込んだことは一切ないぞ。お前だけだ」

「え?そうなんですか?!」

 私だけなんだ。そうなんだ。ちょっと今、テンション上がったかも。


「……あの時は、まだ、俺は高校生で」

 一臣様は、テンションの上がった私のことなんかほっておいて、話を続けていた。

「かなりハードな、ビデオを見たんだ」

「……ハード!?」


「多感な時期だったしな。ビデオだけで、鼻血を出した。でも、喜多見さんには、チョコの食い過ぎって言い訳をした。あ、今回もそれで行こう。お前がチョコを食い過ぎたってことで」

 何それ?!


「な?どうにかなるもんだ。さ、お前もシャワー浴びたらどうだ?けっこう昨日は汗をかいたぞ」

 ドキン。

「はい。浴びてきます」

 と言ったものの、裸だった。


「あの、バスローブ…。ないんですけど」

「素っ裸で行ってもいいぞ?」

「い、嫌です」

 私は布団にくるまりながら、ベッドの上にパジャマがないかどうか探しまくった。


 ない。なんで?

「パジャマなら、ほら。ベッドから落ちてた」

 そう言って、パジャマの上を拾ってくれた。

「でもこれ、一臣様のです」

「いいだろ?大きいから、それ着るだけでも、大丈夫だろ?」

「はあ。まあ、そうですけど」


 なんて言いながら、一臣様のシルクのパジャマを布団の中でもそもそと着てみた。わあ。着心地いい!それに、ほわっと一臣様のコロンの匂いがしてくる。

 いいな。これ。一臣様に抱かれているみたいだ。


「これ、欲しいです」

 ベッドから立ち上がり、うっとりとしながらそう言うと、一臣様にギュッて抱きしめられた。


「袖から、手、出ないんだな」

「え?はい。パジャマ、ブカブカだから」

「お尻まで、しっかりと隠れるな」

「あ。本当だ。良かった」


「…やばいな。素っ裸に、俺のパジャマの上着だけ。そそられるよな」

 はあ?!

「可愛いな!弥生」

 そう言うと、キスをしてきた。それも、舌まで入れてきた。そして、ベッドにドスンと押し倒された。


「だ、ダメです!」

「優しくする」

「駄目!」

「ちょっとで済む」


「駄目!」

「いいだろ?お前、可愛すぎだよ」

「駄目!!!!」


 と、その時、ドアの外から、トントンとノックする音が聞こえてきて、一臣様は体を起こした。

 良かった。危なかった。


「誰だよ。弥生を食おうとしていたのに、邪魔しに来たのは」

 ぶつくさ言いながら、一臣様はドアの前まで歩いて行った。

 今、食おうとしていたって言った?あ、本当に危なかったんだ。


「一臣様。わたくし、京子です。お話があって来ました。開けていただけませんか?」

 京子さんだ!

「京子さんですか?ああ。申し訳ない。シャワーの後で、バスローブしか着ていないんです。そんな恰好で入れるわけにはいかないので、昼食を食べながら話は聞きます」


「2人で話がしたいんです。開けてくださいませんか?」

「駄目です。部屋に入ってもらうわけにはいきません」

「でも、昨日の夜は、上条弥生さんをお部屋に入れましたよね?」

 うわ。言われちゃった!


 いったい、京子さんは、なんの用事があって、一臣様の部屋までやってきたんだろう。 

          


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