~その6~ ハゼとサギ
お屋敷に帰ると、亜美ちゃんだけが私を出迎えた。一臣様は時間差で、今日はあとから帰ってくる。
「おかえりなさいませ」
「ただいまです」
そう言いながらお屋敷に入って行った。
すると、大広間からは麗子さんが、応接間からは初めて見る人が、ダイニングからも、見知らぬ人がすすすと、早歩きでやってきた。
「あ…」
「一臣様じゃありませんの?」
3人はどうやら、私ではなく一臣様が帰ってきたのかと思ったらしい。
応接間から現れた人は、黒髪ロングで、やっぱり色白。薄いピンクのツーピースを着ていて、とっても清楚なイメージの女性だ。膝丈のスカートから出ている脚は、細くて長く、顔は和テイストの美人さんだ。
ダイニングから現れたのは、栗色の髪をポニーテールにして、大きめの白いリボンを結んでいる、服も真っ白のワンピースを着た女性だ。だが、それがあんまり似合っているとは言えないような、ぽっちゃり体型。白くて、フリルのついたフワフワなワンピースは、かえってぽっちゃり体型を目立たせていると、服のセンスがまったくない私でもちょっと感じた。
どちらかが、料亭のお嬢様で、どちらかが、大学病院のお嬢様だよね。
キイ…。その時、お屋敷の外から車が止まる音が聞こえた。
「あ。今度こそ、一臣様だわ」
そう言ったのは、真っ白のワンピースを着た女性だ。頬を高揚させ、小走りでお屋敷の外へと向かって行った。
麗子さんもその人に負けずと、お屋敷の外まで出迎えに行き、ピンクのツーピースの女性は、お屋敷の中で一臣様を待っている。
私はというと、部屋に行った方がいいのか、ここにいてもいいのか、戸惑ってしまった。
「おかえりなさいませ」
喜多見さんと国分寺さんも、一臣様を出迎えに行った。
私はほんの少しだけ、玄関に近づいて外を見た。
「おかえりなさいませ」
麗子さんが車のすぐそばまで行ってしまった。ああ。あんなにそばまで出迎えに行く人はいないのになあ。
樋口さんが運転席から降りて、後部座席のドアを開き、一臣様が車から降りてきた。
「一臣様、お待ちしていましたわ」
うわ。麗子さん、一臣様に思い切り寄り添ってる!
すると、一臣様の前に、真っ白なワンピースの女性が進み出て、
「一臣様、初めまして。長谷敏子と申します。このたびは、呼んでいただきありがとうございます」
と、そう言ってにっこりと微笑んだ。
「……はせ。ああ、料亭の…。こちらこそ初めまして。一臣です」
一臣様は足を止め、その人に挨拶をした。ああ、真っ白のワンピースを着た人が、料亭のお嬢様か。
一臣様は、颯爽とそのあとお屋敷に入ってきた。あんまり、早くに歩くので、敏子さんも麗子さんも追いつけないようで、一臣様の後ろから、ちょこちょこと追いかけてきた。
「一臣様、おかえりなさいませ。わたくしは鷺沼京子と申します。よろしくお願いします」
「…さぎ。ああ、大学病院の…。初めまして、一臣です」
一臣様は、京子さんの前で足を止め、また丁寧に挨拶をした。
あ。私は見た。色白だからわかりやすいのか、京子さんの頬が、ぽっとピンクに染まったのを。
って、私はどこかの家政婦か…。
「一臣様。さっそくピアノを弾いてくださいますか?わたくし、首を長くして待っていましたのよ」
麗子さんはそう言って、一臣様の腕に自分の腕を回した。
ちょっと~~!!!勝手に腕組まないでよ!
私はそれを思わず凝視してしまった。
「一度、部屋に行って着替えてきますよ。もっと、リラックスした服でないと、リラックスしてピアノも弾けませんから」
一臣様がそう言うと、
「わたくしも、一臣様のピアノ、聞きたいですわ」
と、京子さんがまたもや、頬を染めてそう言った。
「わたくしも!」
そう元気に言ったのは、敏子さんだ。
「いいですよ。みなさん、大広間でお待ちください。喜多見さん。皆さんに何か飲み物でもお出しして」
一臣様は、いつになく丁寧な口調で喜多見さんにそう言うと、階段を上りだした。
「弥生様は?」
喜多見さんに聞かれた。
「私は、仕事で疲れているので、部屋で少し休みます」
「あら、皆さんと一緒に一臣様の演奏聞かないでよろしいんですか?」
亜美ちゃんが、ちょっとびっくりした顔でそう聞いてきた。
「はい。部屋に行きます」
私はそう言って、先に行った一臣様を追いかけるみたいに、2階に上った。
「なんであの方は、お部屋が2階なんですか?」
敏子さんの声が後ろから聞こえた。
「お客様用のお部屋が、二つしかないので、2階の空いているお部屋に泊まっていただいているんです」
そう答えたのは、喜多見さんだ。
「わたくしも、部屋が2階です」
京子さんがそう言うと、
「お客様用のお部屋でなくて、申し訳ありません」
と、これまた喜多見さんが丁寧にそう答えた。
そして、
「さあ。みなさん、大広間でお待ちください。今、お茶をお持ちします」
と喜多見さんは、みんなを大広間に連れて行った。
私は一人で2階に行った。そして、少し暗くなりながら自分の部屋に入ると、すでに、一臣様がそこにいて、思い切りびっくりしてしまった。
「うわ!」
「驚きすぎだろ?」
一臣様は、私のほうにどんどん歩いてくると、いきなりギュッて抱きしめてきた。
うわわわ!ドキドキ。また、いきなり…。
「残り、2人も来たな」
「え?」
「候補者だ。肩凝るよな~~。使いたくもない気を使ってやたらと疲れる」
そう言って、一臣様はなぜか、私の頭に頬ずりをしている。
「これで、全員集まったんですね」
「いや、実はまだ他にもいるんだが、他の人は当日に屋敷に来ることになっているからな。あの3人は、前もって屋敷に来たいと申し出てきたんだ。やっぱりその時点で、断りゃよかったのにな。親父が勝手にOKを出しちまった」
「え?でもさっき、敏子さんは、呼んでいただき、ありがとうございますって言ってませんでしたか?」
「呼んでいない。なんのことやらさっぱりわからんって感じだ」
そうなんだ。
「あれ?今、なんて言いました?」
「だから、さっぱりわからん…」
「そうじゃなくって、その前。他にも候補者がいるって」
「ああ。全員でお前を合わせて、8人いる」
8人も?!
「政治家の娘、ホテル王の娘、航空会社の社長令嬢と、製薬会社の社長令嬢。どいつも、緒方財閥と結びついたら、自分が得をするっていうやつばかりだな」
「政治家もですか?」
「ああ。援助が欲しいんだろ。他のやつらも一緒だ」
「緒方財閥の援助ですか?」
「そうだ。ホテル王と言っても、ここ数年、上条グループが手掛けたホテルに負けていて、赤字経営だ。航空会社も、昨年、事故が相次ぎ、経営困難になっているし、製薬会社も不祥事があって、やばい状態だ。どこも、緒方財閥に助けを求めている会社ばかりだ」
そうだったんだ。
「料亭もなんですか?」
「あの料亭は、お前と一緒らしい」
「は?」
「別に経営が困難になっているわけでもないが、どこかで俺のことを知ったお嬢様が、婚約したいと言い出したそうだぞ」
あ。惚れちゃったってことが一緒なわけ。
「親バカだろ。ハゼの親も」
ハゼの親って…。だいたい、ハゼじゃなくて、長谷さんだし。
あれ?その親バカって、私の親のことも入っているのかな。そうだよね…。
「大学病院は、緒方財閥のお年寄りたちが最近よく入院したりとお世話になっている病院だ。そのおかげで、経営不信になりかけていたところを救われたんだ。表面上はその恩返しにわが娘を嫁がせたいってことらしいが、本音は緒方財閥の人間を離したくないのさ。結びつきを強くして、これからも緒方財閥の人間の病気の世話をして、儲けたいんだろ」
そ、そうなんだ。
「大金銀行は、関西で一番でかい銀行だからな。関西にシェアを広げていく時に、緒方財閥も大金銀行と結びついていたら、得をするだろうと親父が目を付けたんだ。大金銀行と上条グループだけは、親父の方が話を持ちかけた相手だ」
「え?」
じゃあ、一臣様のフィアンセは、私でなくても、麗子さんでもいいってことなの?
「だから、俺には上条グループの令嬢を、龍二には大金銀行の令嬢をって、親父は考えたんだろ」
「なんで、私が一臣様で、麗子さんが龍二さんなんですか?」
「理由は簡単だ。より、利益をもたらせてくれるのは、上条グループだからだ。次期社長のフィアンセには、利益をよりもたせてくれるほうが良かったんだろ」
「……」
そうか。じゃあ、本当に上条グル―プと緒方商事の提携がなかったら、私と一臣様の婚約もあり得なかったかもしれないんだ。いくら私が一目ぼれしても。
「は~~あ。そろそろ行かないとなあ」
一臣様はまだ、私の腰に手を回したまま、そう呟いて溜息を吐いた。
「弥生…」
「はい」
くいっと顎を持ち上げられた。そして、一臣様がキスをしてきた。
きゃわわわ。唇をギュっと結び、目もギュッと閉じた。すると、
「口、開けろよ」
と、そう言われてしまった。
グルグルと首を横に振り、私はかたくなに唇を固く閉じた。
「なんだよ。浮気してやるぞ」
「え?!」
悲痛な声をあげると、
「冗談だ」
と、一臣様はそう言って、一臣様の部屋に戻って行った。
び、びっくりした。本当に、他の候補者の人と、浮気しちゃうのかと思った。
一臣様を信じたい。でも、一臣様、相当女遊びしていたみたいだし、正直、信じきれない。
「はあ」
私はどっと疲れが出て、ベッドに座りに行った。すると、ベッドの上には、琴が布にくるまれて置いてあった。
「良かった~~。等々力さん、持ってきてくれたんだ」
私はほっとして、すぐに服を動きやすいブラウスとパンツに着替えて、琴の練習を始めた。
ベッドの横には、琴を置いても大丈夫なくらいのスペースがあり、そこで私は琴を弾いた。
本当は着物に着替えたかった。でも、そこまではさすがに、ここではできないもんなあ。
着物姿、一臣様、褒めてくれるかな。
…また、可愛いって言ってくれたらいいな。でも、たまには、綺麗だって言われてみたい。なんて!
そんな馬鹿なことを思いつつ、琴の練習に励んでいると、
「弥生様。夕飯の支度ができました」
と、亜美ちゃんが呼びに来てくれた。
「は~~~い」
私はすぐに、ドアを開けた。
「今のは、琴の音色ですか?」
「聞こえてました?うるさかったですか?」
「いいえ。とても綺麗な音色で、うっとりと聞いてしまいました」
「本当に?嬉しいです」
「下では、一臣様のピアノの音色も聞けたし、日曜日の誕生日パーティが楽しみです」
「……。ですね」
いいな。亜美ちゃんは一臣様のピアノの演奏聞いたんだ。私も、こっそりとでいいから聞きたかった。
そして、亜美ちゃんと一緒にダイニングに行った。すると、お母様と龍二さんをのぞいて、皆が座っていた。
「一臣様の前の席には、どなたが座られるんですか?」
敏子さんがそう聞いた。私もそれは気になっていた。
「そこには、選ばれたフィアンセが座ります。つまり未来の僕の妻です」
一臣様はそう答えた。
そうだったんだ。じゃあ、龍二さんの前には、龍二さんの未来の奥様が座るんだな。
あれ?そういえば、私、この前まで一臣様の真正面の席に座っていた。
そうか。私って、未来の一臣様の奥さんってすでに認められていたんだ。
きゃ~~~。なんか、さっきの、「僕の妻」って言葉がやたらと心に響いちゃった。妻!一臣様の妻!その響、ドキドキしちゃう。
「では、今度の誕生日パーティで、決まるわけですね」
そう敏子さんが言った。麗子さんは、なぜだか余裕の笑みを浮かべ、一臣様を見ている。
そこにお母様がやってきた。その後ろからは、龍二さんも来た。
そういえば、社長はこんな時にもお屋敷に戻られないんだな。
みんなが揃い、ディナーが始まった。今日は、思い切りフレンチのコース料理だ。昨日の麗子さんの発言で、そうなったのかもしれない。
ああ。私は苦手な分野だ。
とりあえず、音をたてないように気を付けて、ゆっくりと静かに食べた。すると、
「わたくし、日本料理のほうがよかったです。明日はそうしていただけませんか?」
と、敏子さんが言いだした。
「……和食は麗子さんが召し上がらないようですよ」
お母様が静かにそう答えた。
「え?そうなんですか?では、いつも何を召し上がってるんですか?」
敏子さんがびっくりしながら、麗子さんに聞いた。
「我が家のシェフは、フレンチのシェフですから、いつもフレンチです」
「まあ。我が家は料亭ですから、いつも日本食ですけど。毎日フレンチは、飽きたりしませんか?」
敏子さんの質問に、麗子さんは人を見下したようにくすっと笑い、
「嫌ですわ。飽きるわけありませんわ」
とそう答えた。
「一臣様も、毎日フレンチなんですか?」
敏子さんがそう聞くと、
「いいえ。うちのコック長はなんでも作れますので。フレンチも日本食も、イタリアンも、中華も食べますよ」
と、一臣様は静かな声で答えた。
「まあ。良かった」
敏子さんは、本当に喜んでいるようだ。
「そんなに食べることがお好きなの?」
麗子さんは、もっとくすくすと笑いながら敏子さんにそう言った。
なんだか、嫌味な言い方だったなあ。でも、あんまり気にしていると、へましちゃうから気を付けないと。特にお肉。ステーキを切る時、音は立てないようにして、お皿から落とさないように気を付けて。
と、細心の注意を払いながら、ステーキにナイフを入れると、ものすごく柔らかくて、すんなりと切れてしまった。
「わあ。柔らかい」
そう呟き、口に入れた。すると、お肉がとろけそうになった。
「美味しい」
目を丸くして、それから私は思い切り味わった。
フレンチも、美味しいんだ。さすがは、喜多見コック長だ。
初日もフレンチだった。あの時はきっと緊張のあまり、味わうこともできずにいたんだな。
デザートも美味しくいただき、挨拶に出てきたコック長に、誰よりも先に、
「とても美味しかったです。ごちそうさまでした」
と大声で言ってしまった。
「ありがとうございます」
コック長は丁寧に私にお辞儀をしてから、お母様や一臣様のほうに歩いて行き、
「いかがでしたでしょうか」
と、静かに聞いた。
「美味しかったですよ。コック長」
そうお母様は言った。一臣様も、
「美味しかったぞ」
と、一言言った。
コック長は丁寧に頭を下げた。でも、
「まあまあですわ。うちのシェフのほうが腕は上かしら」
と、麗子さんは口をナプキンで拭きながらそう言い、
「うちの料亭の味には負けていますけど、美味しかったと思います」
と、敏子さんは麗子さんに負けないようにと、そんなことを言った。
あ。ここからでもわかった。お母様の顔、今、眉間にしわがよった。
「とても美味しくいただきました。特にお魚料理、ソースの味が上品でまろやかで、美味しかったです」
そう言ったのは、京子さんだ。
「ありがとうございます」
コック長はお礼を言うと、失礼しますとキッチンに戻って行った。
さっきから、やたらと龍二さんが静かだ。静かすぎるのも不気味だな。心の中で何か企んでいそうだよなあ。
「ねえ。一臣様。ピアノ、まだ練習します?」
「いいえ。今日はもうやめておきます。皆さんも、お部屋でゆっくりとされてはいかがですか?」
「では、一臣様。一緒にワインでも飲みませんか?今日はお仕事、持ち帰っていないんでしょう?」
麗子さんは席を立ち、一臣様のほうに回っていって、一臣様に顔を近づけそう言った。
「皆さんは、僕の誕生日、何を披露してくださるんですか?」
「わたくしは、バイオリンですわ」
すかさず、麗子さんが笑みを浮かべて答えた。
「わたくしは、子供の頃から習っている日本舞踊を」
敏子さんがそう言うと、麗子さんが、
「まあ!クラシックの演奏をなさるんじゃないんですか?」
とわざとらしく驚いた。
「京子さんは何をされるんですか?」
一臣様が静かにそう京子さんに聞いた。
「わたくしは、ハープを」
「ハープ?」
一臣様も、お母様もびっくしている。
ハープ。私もびっくりだ。でも、似合いそうだな。
「ハープ…」
麗子さんは、そう言ってから黙り込んだ。何かまた、嫌味でも言うつもりだったのかもしれないけれど、何も出てこなかったのかもしれない。
「上条弥生さん。あなたは?」
麗子さんがいきなり私を見て聞いてきた。
「私は琴を…」
「まあ。琴?それで、琴でクラシックを演奏なさるの?」
嫌味かなあ。
「いいえ。違います」
それだけ言って、私は黙った。
「皆さん、僕はとても楽しみにしているので、どうでしょう。今日と明日、練習を各自の部屋でなさっては」
一臣様がそう言うと、お母様までが、
「それはいいわね。ぜひ、そうしてください」
と、そう言って席を立ち、さっさとダイニングを出て行ってしまった。
「一臣様、わたくしのバイオリンと一緒にピアノを練習しませんか?」
また麗子さんが、一臣さんに顔を近づけそう言った。
「申し訳ないですが、僕は明日一人で練習します。一人の方が集中して練習ができますので」
一臣様はそう言うと、席を立ち、
「仕事で少し疲れていますので、僕はお先に失礼させていただきます」
と、そう言って、さっさとダイニングを出て行ってしまった。
「……」
取り残された麗子さんは、ムッとしながらダイニングを出て行った。そのあとに、敏子さんもダイニングを出て行き、京子さんはきちんとナプキンを畳み直してテーブルに置くと、静かに席を立った。
龍二さんも席を立った。わ、やばい。私のほうに来る?と、思いきや、なぜか龍二さんは、京子さんに話しかけた。
そして、2人で一緒にダイニングを出て行った。
あれ?
なんで京子さん?まさか、京子さんにも協力しろとか言うのかな。
「弥生様」
「はい?」
「龍二さんが、京子さんにアプローチかけだしました」
「え?」
小声で私の横に来て、トモちゃんがそう言って来た。
「なぜ、京子さんに?」
「さきほど、大広間で一臣様が、京子さんには優しく接したり、自分から話しかけたりしていたので、多分、それでなんじゃないかと」
え?!
「きっと、龍二さんは、一臣様が麗子さんよりも京子さんを気に入ったと、そう気が付いたんだと思います」
気が付いたって?
「トモちゃんからもそう見えたんですか?」
「え?あ。いいえ。違います。ただ、そんなふうに見えたっていうだけで」
トモちゃんはそう言ってから、なぜだか、私の顔を見ようとしないで、
「申し訳ありません。わたくし、でしゃばったことを言いました」
と、そう言って、キッチンのほうに行ってしまった。
な、なんで?
でしゃばったって、何?
え?京子さんを、一臣様が気に入っちゃったの?
え~~~~~?!!!