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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第6章 フィアンセ候補者集合!
71/195

~その2~ わがままお嬢様

 一臣様は私の前で仁王立ちになったままだ。

「お前がさっさと部屋に来ると思って、お前の部屋で待っていたんだぞ」

 あ。それで、さっき一臣様の部屋をノックしても、人のいる気配がないくらい、し~んとしていたんだ。


「すみません。まさか龍二さんに話しかけられると思っていなかったので」

「で。何を話していた?手を組むってのは、どういうことだ?」


「えっとですね。私には大金麗子さんが邪魔だろうし、一臣様とくっつきたいだろうって。だから、手を組もうって言ってきたんです」

「手を組むって何をするんだ?」

「さあ。とりあえず、邪魔し合おうみたいな感じのことを言ってました」

「で、お前はなんて答えたんだ」


「そういうのは苦手って言いました」

「う~~ん。龍二がそうくるとは思わなかったな。意外な展開になってしまったな」

「はあ」

「あ。今、あいつは大金麗子に会ってるんだな?」


「はい」

「ほっておくか。それで、くっついてくれたら、万々歳だ」

「い、いえ。そういうわけにも」

 私もことが簡単に済んでくれたら、万々歳だけれども。


「弥生。それより、さっきの続きだ」

「…さっきのって?」

「レベルアップしたいんだろ?大人のキスへと」


「い、いいえ。それはまだ、まだまだまだ、大丈夫です」

「なんだ、そのまだまだまだってのは」

「だって、そ、そんなキス、初心者には早すぎです。あ、だいたい、そんなキス、誰がしているんですか?そういうのって、マンガとか映画の中だけの話で、そうそうみんながしているわけじゃないですよね?」


「それは、誰から仕入れた情報だ?先輩か?」

 一臣様は片眉をあげた。

「いいえ。誰も、そんな大人のキスがあるとか、そういうキスをしたとか、話していませんでした」

「そりゃ、しないだろ。普通」

「ですよね?そんなキスしませんよね?」


「いや。そうじゃなくてだな。そういう話をわざわざするほどのことじゃないから、しないだろって言ったんだ」

「え?」

「マンガや映画の中だけの話じゃないぞ。み~~んな、大人はしてるんだ。お前が知らないだけだ」

「…!!」

 うそ。じゃあ…。


「一臣様も、お付き合いしていた方と…?」

「ああ」

 うわ。聞かなかったら良かった。また、墓穴を掘った。思い切り落ち込んだ。


「していたが、あまりしていない」

 一臣様、私が暗くなったから、気を使ってる?と思い、顔をあげて一臣様の顔を見てみると、そんな感じでもなさそうだ。偉そうにふんぞり返ってるし。


「言ったろ?淡泊なんだ。キスするのもそんなに、好きな方じゃないからな」

「じゃあ、いいです。大人のキスへの階段、ステップ踏まなくても結構です」

「いやいや、待て。話を最後まで聞け。今までは、好きじゃなかったってだけで、これからは変わるかもしれないだろ?」

 一臣様は慌てたようにそう言ってきた。


「何をですか?」

「だから~~~。お前とだったら、キスも好きになるかもしれないだろ?」

「え?!!な、なぜですか?!」

「なぜって…。お前、普通のキスでも、気持ちいい…」

 

 きゃ~~~!

「私がもしかして、気持ちいいって言ったからですか?」

 顏、熱い。きっと真っ赤だ。

「お前も気持ちいいのかもしれないが、俺も気持ちよかったぞ」

「え?」


「お前とのキスはな」

「……うそ」

「なんで、うそになるんだ」

「恥ずかしいっ」

 私は思い切り、顔を伏せた。


「はあ?自分が気持ちいいのは恥ずかしくなくて、なんで俺だと恥ずかしくなるんだ」

「だって…」

 うっわ~~~。なんか、顏あげられないくらい、恥ずかしいよ。


「お前の唇もだけど、ほっぺたとかもふっくらしてて、キスすると気持ちいいしな。ああ、大福みたいだよな」

「………」

 微妙に喜べない。大福は食べたことあるんだ。豚の角煮はなくても。


「それに、お前の体も、肉付きがちょうどいいから、抱き心地いいしな。どこそこ、フワフワしてて気持ちいいよな」

 う、う~~~ん。太っていると言いたいんだろうか。自分でも、痩せているとは思っていないけど、太っているとも思っていない。それって、多分、一臣様と付き合っていた女性がみんな、痩せていたってだけのような気がする。


「なんだ?黙り込んで。どうした?」

 一臣様は私の隣に座ってきた。

「いいえ。なんでもないです。それより、応接間に行かないでもいいんですか?」

「ああ。いい」

 そう言って私の腰に手まで回してきた。


「でも、亜美ちゃんが怒られるかも」

「ああ。あとでフォローする」

「でも…」

「なんだよ。俺をそんなに大金麗子のところに行かせたいのか?」


「違います。亜美ちゃんが心配なだけで…」

「俺はこのままお前が、大人への階段を上れないんじゃないかって、そっちの方が心配だけどな」

「う…」

 そんなことを言われても…。


「一臣様!」 

 ドンドンドン!

 いきなり、ドアの外から日野さんの声がしてきた。

「なんだ?」


「亜美ちゃんが、大金麗子様にものすごい勢いで怒られているんです。どうしましょう」

「ほ、ほら。一臣様が行かないから、亜美ちゃんが怒られちゃった!」

「あ~~~~。面倒くさいな。あの、大金ってお嬢様は」

 そう言うと、一臣様は思い切りむすっとした顔をして部屋を出て行った。


 私も一臣様の部屋を出た。日野さんと一臣様は急ぎ足で階段を下りて行った。

「応接間か?」

「はい」

「龍二もいるのか?」


「はい」

 日野さんの顔は、真っ青だ。そんなに亜美ちゃん、怒られてるのかな。どうしよう。

 ちょっと遅れて私も階段を下りた。すると、廊下の奥から、大金麗子さんのどなる声がしてきた。


「私が呼んでくれと頼んだのは、一臣様よ。あなた、何を聞いていたの?今すぐに、クビにしてもらってもいいのよ!」

 わあ!すごい剣幕だ。


「ずっとあの調子で、立川さんが謝っても、怒り飛ばしているんです」

 日野さんがそう言いながら、応接間の一歩手前で立ち止まった。

「お前は入ってこなくていい。弥生もそこにいろ」

 一臣様は私と日野さんにそう言うと、応接間に入って行った。私たちはそっとドアの影から、中を覗いた。


「どうしましたか?麗子さん」

 一臣様はそう言いながら、麗子さんに近づいた。


 麗子さんって呼んだよね。さんづけ?私は最初から呼び捨てだったよね。

 いや。落ち着け、弥生。「麗子」って、呼び捨てにするほうがもやもやする。さんづけくらいで、ちょうどいいかも。


「一臣様。聞いてください。わたくしはこのメイドに一臣様を呼んでくださいと申しつけたのです。でも、やってきたのは龍二様で、このものは、わたくしをこけにしたのです」

「申し訳ないです。立川は僕のところにも呼びに来たのですが、ちょうどシャワーを浴びようとしていたところで、来れなかったんです」


 うわ。嘘ばっかり。

「え?」

「龍二が、麗子さんを一人にしては申し訳ないと思って、気を利かせてあなたに会いに来たんだと思いますが…。違うのか?龍二。そうだろ?」

「……へえ。シャワーなんか浴びて、どうする気だったんだ?兄貴」

 龍二さんは質問には答えず、憎らしそうな声でそう聞いた。


「汗臭かったら、麗子さんに会うのに申し訳ないと思っただけだ」

「まあ。そういうことでしたの?わたくしったら、そこまで一臣様が気を使っていてくれたなんて、思いもしなくって…。すみませんでしたわ」


「いえ。こちらこそ、メイドにちゃんと伝えずじまいで、申し訳ない。あ、このメイドには、あとで言ってきかせます」

「そうね。ちょっと、態度が悪いから、ちゃんと教育したほうがいいですわね」

「………」

 一臣様は今の麗子さんの言葉に、にこりと微笑んだが、明らかにこめかみには血管が浮き出ていた。内心、ものすごく腹を立てているに違いない。


「下がっていいわよ」

 麗子さんにそう言われ、亜美ちゃんは腰を低くしたまま、応接間から出てきた。そして、ドアのすぐ横にいた私と日野さんに気が付いた。

「あ…」


 私と日野さんは、亜美ちゃんの腕を掴み、

「し~~」

と、口に手を当て、そのまま黙って廊下を足早に歩いた。


 そしてダイニングまで来てから、

「ごめんね。亜美ちゃん。本当にごめん」

と、私は頭を思い切り下げて謝った。


「え?なんで、弥生様が謝るんですか?」

「だって、一臣様をとっとと応接間に行かせなかったから、亜美ちゃんが怒られることになっちゃって」

「いいえ。弥生様のせいではありません」

「ううん。一臣様の背中を叩いてでも行かせたらよかった」


「そんなことしたら、弥生様が一臣様に叱られます。私もあとで、一臣様の雷が落ちるのを覚悟しています」

「え?なんで、亜美ちゃんのことを一臣様が怒るの?一臣様が悪いんだよ?」

「いえ。さっき、麗子様が教育がなってないと、申していました。あれで、一臣様が腹を立てたのがわかりました。私、怒られます。それも、きっと思い切り。お前のせいで、あんなことを言われたと、絶対に怒られます」


「大丈夫です。一臣様が怒ってきたら、私が止めます。だって、悪いのは一臣様ですから」

「…弥生様。それで、また一臣様との仲がおかしくなって、婚約破棄になってしまったら、どうするんですか?」

 亜美ちゃんが、涙目になってそう訴えてきた時に、一臣様がダイニングに入ってきた。


「ああ、弥生もここにいたのか」

「はい。…あれ?麗子さんは?」

「いったん、部屋に戻るらしい。もう、夕飯の時間になりますと、国分寺が言いに来たんだ」

「龍二さんは?」


「あいつも、部屋に戻った。そのうちに来るだろ。それより…」

 一臣様が、いきなり怒りをあわらにした。

「あったまくるな~~~。こっちが下手に出てるからって、言いたいこと言いやがって」

「え?」


 怒りをあらわにした時、自分が怒られると思ったのか、亜美ちゃんは思い切り肩をすぼめ、下を向いて怒られる覚悟を決めたようだった。でも、一臣様が自分に雷を落とさなかったからか、亜美ちゃんは拍子抜けしたように顔をあげた。


「立川。悪かったな?とばっちりを食わせて。あの麗子ってのは、もしかして屋敷に来てからずっとああなのか?」

「え?」

「あんなにえらそうにしているのか?人の屋敷で」

「はい。実はわたくしたちメイドも、困っております」


 そう口を挟んできたのは、喜多見さんだった。亜美ちゃんは鳩が豆鉄砲くらったような顔をして突っ立っている。

「そうか。とんでもないわがままお嬢様ってやつか」

 そう一臣様は言うと、はあっと溜息をつき、

「数日の辛抱だ。悪いな、立川。それと、あのわがままお嬢様には誰がついたんだ?日野か?」

と、亜美ちゃんに聞いた。


「トモちゃんです」

 亜美ちゃんはまだ、目を丸くしたままびっくりしているので、私はそう一臣様に教えた。

「小平か…。あいつ、大丈夫なのか?喜多見さん」

「すでに、怒られたり、嫌味を言われたり、いろいろとされているようですが、でも、大丈夫だと思いますよ。なにしろ、ここで一番怖いのは」


「おふくろか?」

 一臣様は喜多見さんが全部を言い終わる前にそう聞いた。

「いえ。一臣おぼっちゃまかと…」

「俺か?」


 一臣様は、ちょっとびっくりしたようにそう聞き返してから、なぜか私のほうを見た。

「……」

 なんでかな?


「まあ、そうか。俺がそんなに怖かったなら、大金麗子のわがままくらい、どうってことないわけか」

「ふふ。そうですね」

 喜多見さんが笑った。


「…なんだ。立川。ぼけっとしていないで、そろそろ仕事に戻れ。日野はもうキッチンに行って、仕事をしているぞ」

「え?あ、はい」

 亜美ちゃんは、やっと我に返り、そそくさとキッチンに行った。


「弥生様、一臣おぼっちゃま、お席に着かれますか?」

「ああ。そうだな。嫌だけどな」

「嫌と言いますと?」

「本当は俺と弥生だけで食べたい。明日は外で食ってもいいか?」


 一臣様、また駄々こねだした。これって、自分が心開いている人にだけするのかも…。

 喜多見さんとか、樋口さんとか…。


「明日はもう二人、候補の方が来られますので、夕飯は皆さんとご一緒に食べていただかないと」

 喜多見さんは静かにそう一臣様に言った。

「は~~~~あ」

 一臣様は大きな溜息をついた。そしてご自分の席に着かれた。


 私は、いつも座っている席ではなく、離れたところに座らされた。そして耳元で、

「数日、ここで我慢してくださいね」

と、喜多見さんにそう言われた。


「あ、はい」

 そうか。他の候補の人も来るんだし、今までと同じ席っていうわけにはいかないんだな。


 それから、食事の用意がほとんど整った頃、麗子さん、お母様、そして龍二さんがやってきた。


 みんなで一緒に、食べだした。でも、お母様は私の方は一切見ることもなく、ずっと席が前の麗子さんに話をしていた。


 それにしても…。龍二さん、一臣様、お母様の順に座り、そのお母様の前に麗子さんが座り、その隣の隣の隣に私がぽつ~~んと寂しく座っているのはなぜなんだろう。

 私と麗子さんの間には、明日来る候補者のために席が空いているんだろうか。だとしても、今日はつめてくれたっていいじゃないか。


 一臣様は、とても遠い席に座っている。いつもなら、真ん前に座っているのに。

 なぜか、一臣様の前と、龍二さんの前は空席だ。いったい、誰が座るんだろう。


 ショボン。


 落ち込みながら食べていると、給仕をしてくれる国分寺さんや、日野さん、他のメイド達も、私のお皿を片したり、水を注ぎに来たりするたびに、囁き声で、

「今だけですよ」

とか、

「しばらくの我慢です」

とか、

「頑張ってください」

と言って励ましてくれた。


 みんな、優しい…!

 うん。私、めげない。頑張る!


 そう心の中で固く決意して、それからは、気持ちを切り替えてお料理を食べた。

「美味しかったです」

 最後に現れたコック長にそう言うと、コック長はにこりと微笑んだ。

 

 それから、コック長は、お母様と麗子さんのところに行き、

「今日のお料理はいかがでしたか?お口にあいましたか?」

と、そう聞いた。


 お母様は、

「ええ」

と一言だけ答え、麗子さんは、ちょっと間をあけてから、

「あなたがコック長?全般的に味が薄めですわ。もしやわたくしが関西出身だからって、わざとこんな味にしたんですか?」

と、そう上から目線で聞いた。


「いいえ。いつもと同じですよ。緒方家の味はいっつも、このくらいの味付けです」

 コック長ではなく、一臣様がそう答えた。


 薄めっていうんじゃなくって、上品な味だ。それに、食材の味もちゃんと生かされてて美味しかった。

「まあ。そうなんですの?」

 おおげさに、麗子さんはそう言った。


「お口にあわなかったですか?」

 今度は一臣様がそう麗子さんに聞いた。

「そうですわね。我が大金家では、もう少ししっかりとした味付けをしていますから」

「……そうですか。では、明日はもう少し、しっかりとした味付けのものを用意してくれ、コック長」

 

 一臣様にそう言われ、コック長は「はい、かしこまりました」と丁寧に頭を下げて、キッチンに戻って行った。


「関西は色が薄めでも、味はしっかりとしていますものね?麗子さん。お出しもきいているものが多いですしね?」

 お母様がにこやかにそう言うと、麗子さんは、

「我が家では、フレンチしか出てきません。ですから、お出しのきいているものなど、出てきませんわ。緒方家もフレンチのシェフではございませんの?」

と、とっても生意気な口調でそう答えた。


 うっわ~~~。お母様にあの口のきき方、まずいんじゃない?周りのメイド達も、国分寺さんも、今、顔が青くなったよ。

 一臣様は、めちゃくちゃクールな顔をしていて、龍二さんはというと、あれ?笑ってる?


「喜多見さん。明日は、もっと美味しいフレンチを出すようにと、コック長に言っておいてください」

 お母様はそう言うと、席を立ち、

「先に失礼いたします」

と言って、とっととダイニングを出て行った。


 あれって、怒ったのかな。


「さて。俺も部屋に行くか。それとも…。麗子さん。酒でも一緒に飲みますか?大広間か、応接間で」

 龍二さんがそう言った。麗子さんは、

「一臣様は?」

と、いきなり声を高くして聞いた。


「申し訳ありません。仕事が残っていますので、これで失礼します」

「まあ!お仕事を家まで持ってきますの?それはいけませんわ。秘書か誰かに代わりにやらせたらいいじゃないですか」

「…そうはいきません。大事な書類ですから、僕が自ら目を通さないと」


「お仕事熱心ですのね。驚きですわ」

「……驚きですか?そうですか」

 あ。一臣様、顔は笑っているけど、目が笑ってない。とても怖い。きっと、頭に来てる。


「では、ワインでも飲みながら、クラシックでも聞きましょう、龍二様」

「ああ、いいですね。国分寺、応接間にワインを持って来てくれ」

 龍二さんはそう言うと、席を立った。でも、

「あ。すみません。僕がやっぱり、ワインを持って行きますから、先に行っていてください、麗子さん」

とそう言って、麗子さんをその場で見送った。


 一臣様は麗子さんが出て行ったあと、黙ってむすっとしながら、ダイニングを出て行き、龍二さんは国分寺さんにワイングラスとワインを手渡され、それを持つと私のすぐ横に来た。

 

「おい。あんた」

「は?」

「俺は、麗子を誘った。今夜は遅くまで酒を飲むつもりだ。だから、あんたはあんたで、うまくやれ」

「え?」


「あんたがいる部屋、兄貴の隣だろ?夜這いでもしろよ。いや、今から押しかけてもいい」

「え?」

「そんなことをしたら、弥生様が一臣様に嫌われるだけです」

 そう横から亜美ちゃんが口をはさんだ。


「メイドのくせにうるさいぞ。上条弥生。わかったな?兄貴の方はお前がなんとか食い止めて、麗子のところに来させるなよな」

「……はあ」


 龍二さんは、ワインと二個のグラスを手に、ダイニングを出て行った。

「行かなくていいですよ、弥生様。一臣様に叱られちゃいますよ」

「……う、うん。でも、一応、ドアだけノックしてみようかな?」

 

 私はそう言ってから、ダイニングを出た。亜美ちゃんはずっと心配してついてきそうになったが、

「大丈夫。ついてきたりしたら、かえって一臣様怒るから」

と、そう言ってとどまらせた。


 は~~~~。それにしても、先が思いやられる。

 


 


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