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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第5章 急接近の2人?
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~その8~ 「覚悟しろ」?!

 今、惚れてるって聞こえた。

 きっと、聞き間違いだよね。


 それより、顏近すぎる。

 思い切り体を寄せて来ているし。


「あ、あの。あの…」

 また両手で一臣様の胸を押した。でも、びくともしない。もっと力を入れて押してみた。そうしたら一臣様が、私を抱きしめてきてしまった。


 うっわ~~~~!!!

 バクバクバク。やっぱり、変。絶対に変。いつも、こんなに接近してこなかったのに。


「こんなへんてこりんで、みょうちくりんなやつに、惚れるわけないってそう思いたかったし」

 は?

 私を抱きしめたまま、一臣様は話を続けた。


「だいたい、そんなお前を好きだなんて認めたら、俺は自分が変態だってことを認めることになるしな」

 はあ?変態?


「お前の兄貴にそう言っちまっただろ?お前みたいなのに惚れるやつは、変態しかいないって」

 あ。そういえば、言ってた。思い切り宣言してた。

「だから、お前に俺が惚れてるってことは、俺が変態だってことになるからな。絶対に、絶対に、認めたくなかったんだ」


 ………。えっと。ちょっと今、頭真っ白。サクッと傷つくのはなぜかな。


 ギュウ…。

 きゃあ!思い切り抱きしめてきた。う~~。息ができないよ。

 ドキドキドキドキドキ。体全体が脈打ってる。


「お前、心臓やばいことになってる?」

「はいっ」

 はっ!思わず、はいって言ってしまった。恥ずかしい。


「可愛いな」

 へ?


 うわ~~~~~~~~~~~~~~~~。一臣様が変だ。熱?体調が悪くなりすぎ?

 薬の副作用とか。じゃなきゃ、何。ドッキリ?


「ほらな。やばいだろ?お前が可愛いって思うんだから」

「え?」

「かなり、自分でもおかしくなっているって、わかってる」

 わかっていたのか…。


 一臣様は私の体を離した。あ、やっとこ息ができる。と、ほっとしていると、私の顔を覗き込んできた。

 ぎゃあ。顏、近い!また、キス?!


「目、本当に腫れてるな。赤いの通り越して、紫色していないか?瞼…」

「え?本当に?」

「ああ。肌のつやもなくなっているし、ブス顏だよなあ」

 グッサリ。それを確認するために、顔近づけて私の顔を見たの?


 だったら、見ないでほしい。こんなブス顏。と落ち込んで下を向くと、

「そんな顔なのに、可愛いく見えちまう」

と、一臣様がまた信じられないようなことをぼそっと呟いた。


「は!?」

 びっくりして顔をあげた。

 うわわ。顏、真ん前。


「俺のこと思って泣いたんだろうなとか、そんなに俺のことが好きなんだろうかとか、そういうこと思うと、すごく可愛いって思えてくる」

 え?!!!


 うわ!


 キスしてきた~~~~!!!

 きゃ~~。きゃ~~。

 慌てて目をつむった。体もまた、カチンコチンにかたまった。


 ふっと唇を一臣様は離して、そのあと鼻の頭にキスをしてきた。

 うわ?なんで、鼻?とびっくりしていると、次はほっぺに。

 わあ!わあ!わあ!と、あたふたしていると、次はおでこに。


 なんで~~~?!目、開けられない。なんだって、いろんなところにキスしてくるんだ。

 それも、全部優しいキス。


「お前、ゆでだこ…」

 耳元でそう囁かれた。

 うぎゃあ。けしてどぎまぎする言葉じゃないのに、耳元で囁かれたからか、もっと顔が火照りまくった。


 だ、ダメだ。こんなシチュエーション、慣れていないからもう限界だ。倒れそうだ。

 ロマンチックもムードもないなんて、嘆いていたけど、いきなりこんな急接近は無理だ。どうしていいか、まったくわからない。


 体を引き気味にして、私は俯いた。両手は握りしめ、一臣様の胸をグーで押していた。その手は汗ばんでいた。

 足は震えていた。ガクガクだ。


 チュ。そんな私の耳に、一臣様がキスをした。

 うわ!!!もっと体に力がはいった。目もギュッて閉じているから、一臣様の表情も何も見れない。でも、視線だけは感じる。きっと、私のこと、じいっと見てる。


 やめてくれ~~~。限界だ~~~~。ばったりと倒れそうだ。

「か、一臣様」

「ん?」

「は、離してもらってもいいですか?」


 一臣様の両腕は、私の腰にしっかりと巻きついている。

「嫌だ」

 なんで~~~?なんでそこで、駄々こねるの?


「で、でも」

 そろそろ、本当に限界。腰抜かしそう。

「お前、離したら逃げ出しそうだからな」

「……」


 逃げないよ。足、一歩も動きそうにないし。本当は逃げ出したいけど。

 でも、どこに?いきなり廊下に出て、走って逃げたら、亜美ちゃんたち、みんなびっくりするよね。


 私の部屋に行ったって、ドアの鍵、私の部屋からかけられないし、結局、一臣様に部屋に入ってこられちゃうんだよね。


 って。なんで、逃げようとするのかも、自分でわからない。

 一臣様が好きなんだし、大好きなんだし、こうやって、一臣様のそばに戻ってこられたこと、嬉しいのに。すっごく嬉しいのに。


 でも、いきなり、一臣様がこんなふうに変わっちゃったから、どうしていいかがわからないっ!


 ふえ~~~~~~~~~~~~~~~~ん。泣きそう。いや、もう泣いてる。涙目だ、きっと。

 緊張?怖い?わけわかんない。自分でもわかんないけど、逃げ出したい。


「お前、泣いてる?」

 ドキン!

「な、泣きそうです」

 嘘だ。本当はもう泣いているくせに。


「抱きしめられたくらいで?」

「はいっ。限界です」

「なんだよ、それ…」


 一臣様はそう言うと、おでこにチュッてしてきた。

 うぎゃあ。だから、キスもものすごく緊張しちゃうし、ダメなんだってば!


「お前、まったく男の免疫ないんだよな?」

「はい。誰ともお付き合いしていないし、ずっと一臣様にキスも体も捧げるって、そう思ってきたから、男の免疫ゼロです」


「……」

 ハッ!なんか、とんでもないこと口走った。また、怖いって言われるかも。ストーカー発言だって。


「そうか…。あの時のキスが、ファーストキスか」

「…はい」

「悪かったな。それなのに、あんな冷たいキスしちゃって」

 う…。そ、そうだよ。あれが私のファーストキス。


「でも、もうしないから、安心しろ」

 そう言って、一臣様はまたキスをしてこようとした。でも、思わず、私は顔を思い切り伏せて、キスを拒んでしまった。


「おい。冷たいキスはしないって言っただろ?」

「げ、限界です。足もガクガクだし、そろそろ本当に離してください」

「…嫌だ」

 もう~~~~~!お願いだから~~~~。なんだってこうも、頑固なの?!


「あはは。嘘だよ」

 一臣様は笑って、私の腰から両腕を離した。その途端、私はへなへなとその場に座り込んでしまった。


「おい、大丈夫か?」

「大丈夫じゃないです。腰、抜けました」

「あれだけで?」

 あ。呆れた?もしかして。


「ほら。手を貸せよ」

 私の手を掴み、一臣様が私の体を引き上げた。そして、頭を優しくぽんぽんと叩き、

「覚悟しろよな?」

といきなり言ってきた。


「は?覚悟って?」

「俺はもう、お前に惚れてるってこと、自分で認めちまったんだから」

「え?!」

 ドキーーーッ!!


「それも、相当惚れてるみたいだし、今まで、こんなに惚れた女はいないし」

 え?え?え?え?

「いや。好きになった女は、お前が初めてかもしれないし」

 え~~~~~~~~~~~~~~?!は、初めて!?!!


「だから、俺も自分で、女に惚れたらどんな行動に出るか、全く見当もつかないんだ」

「は?!!」

 一臣様は、びっくりして目を丸くしてかたまっている私の頬にチュッとキスをして、

「お前、相当覚悟しろよな?俺にどんなに愛されるかわかんないぞ」

とそう耳元でそっと囁いた。


 う。

 う。

 うっぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~。


 バババババババッ!


 私は思い切り、後ずさって、壁に背中をぶち当てた。痛いっ!


 バクバクバクバク。心臓は破裂寸前。いや、ボンってもう破裂したかも。


「…逃げるなよ。お前、そんなで、俺のフィアンセつとまるのか?」 

 え?

「まあ、いいか。徐々に慣れていってもらうのも…」

 え?


「結婚まで半年あるしな。焦らず、ゆっくりと落としていくよ」

 一臣様は腕組みをして、片眉をあげてそう言った。ほんの少し、口元が緩んでいるように見えた。


 お、と、す?って何を?

 私を?!


 ボボボボ!顏がまた一気に熱くなった。

 なんか、もう、一臣様の言動も行動も、180度変わってしまって、ついていけそうもないんですけど。



 一臣様は、素知らぬ顔をして、お風呂に入りに行ってしまった。

 私はようやく一臣様から解放され、ほっとベッドに座り込んだ。


 ドキン。ベッド。ダブルベッド。今日もここで寝るんだよね。

 

 何だって今まで平気で、一臣様の隣で寝ていられたんだろう。よく私、平気だったよね。

 一臣様の肌ももろ、見ちゃったこともあったし。それどころか、一臣様の…。


 ああ!それに、素っ裸ももう、見られていたんだった。オー、マイガッ!!

 思いっきり、恥ずかしいことを今までしてきたんだ。ってことも、今さらながら自覚した。


 今まで、ある一定の距離を一臣様が保っていてくれたのかもしれない。あ、それは私のためでもなんでもなかったのかもしれないけど、そのおかげで、私はドキマギすることもなく、一臣様の隣にいられたんだ。


 怖いとか、気持ち悪いとか言われたのは、かなりショックだったけど、でも、そう言ってくれたおかげで、一臣様が私に手を出してくることはないんだなって、どこかで安心できたのかもしれない。


 一臣様との結婚も、子供を産むことも、普通に今までイメージできた。

 子供が生まれたら、こんなことをして、あんなところにいって…。なんて具体的に思っていた頃もあった。


 だけど、子供が生まれるまでの、プロセスを具体的にイメージしたことって、一度もなかった。


 ううん。いつか、一臣様の胸に抱かれることになるんだって、そうふわふわと思っていた。大学生の頃は、お互いが愛し合って、結ばれるんだって、そうイメージして心ときめかしていた。


 ついこの前までは、一臣様に義務感で抱かれるんだって、悲しくなっていた。


 だけど、なんだって、そんなふうに思えていたのかが、今となっては不思議でしょうがない。

 そうか。実感がともなっていなかったんだ。現実味が全くなくって、どこかで他人事で、自分に確実にやってくる現実って、思っていなかったのかもしれない。


 だけど、今、思いっきり、その現実が目の前にきていて、ふわふわしていたものが、現実味を帯びてきていて、すっごく、すっごく、怖くなってる。


 ああ!!!

 高校の頃、同じ寮にいた先輩が言ってたことを思い出しちゃったよ。

 確か、初体験の夜、私たちの部屋に来て、

「すごく、痛かった。もうしたくない」

って言って、泣いてた。


 うっわ~~~~~~~~~~~~~~~~!なんだって、今、思い出しちゃったんだろう。その時もしばらく、男の人がみんな怖くなっちゃったっけ。


 でも、大学に入って、一臣様を遠くで見て、優しい紳士な人なんだって勝手に思い込んで、いやらしさとか、かけらも感じられなくって、勝手に私は王子様かなんかのように、一臣様を美化しちゃってたんだ。

 きっと、あの人は、他の男の人とは違う。なんて…。


 なのに。

 思い切り、一臣様もスケベだった。普通の男の人と同じだ。いや。普通の男の人って、あんなに平気で女の人と遊ばないよね。

 やっぱり、一臣様は他の人より、スケベ…ってこと?


 いっぱい、女遊びしてきた、女の人に慣れている人ってこと?だよね。

 

 う~~~~~~~~~~~わ~~~~~~~~~~~~~~。

 何にショックを受けているのかわからないけど、やたらショックだ~~~~!!!


 ガチャリ。その時、バスルームのドアが開き、

「弥生。風呂、入って来ていいぞ」

と一臣様がそう言って出てきた。


 ドッキン!!


 うわ。バスローブ姿が、濡れた髪が、やけに色っぽくって生々しくって、目がちかちかしてきた。

「ははは、はい。入ってきます」

 私は一目散にバスルームに駆けこんだ。


 何だって今まで、平気であの一臣様のバスローブ姿見られたんだろう。お風呂上りの一臣様だよ?平気でうっとりと眺めちゃってた自分が信じられないよ。恥ずかしい!


 ああ。いっぱい、いっぱい、恥ずかしい。どうやって、一緒の部屋で暮らしたらいいんだ。隣りの部屋に帰ろうかな。


 でも、きっと眠れないって言って、帰してもらえないよね。

 だけど、今夜からは、私、いつ襲われるかわからないんだよね。だって、「覚悟しろ」って言ってたし。


 でも、「焦らず、ゆっくりと落とす」って言ってたから、いきなり襲ってはこないよね。

 だけど、ゆっくりとって、どう、ゆっくりと?


 うわ~~~~~~~~~~~。免疫なさ過ぎて、想像もできない。

 

 そのまま、バスタブでのぼせそうになり、慌ててバスタブから這い出た。このまま、またここで気を失ったら、今度は一臣様に何をされるかわかったもんじゃないし。


 は~~~~~~~~~。クラクラになりながら、鏡の前でタオルで体を拭きながら、寸胴の私の体を見てしまった。

 ああ。けして、スタイルがいいとは言えないこの体。


 けして、ボインとは言えないこの胸。

 あれ?でも、前に確か、私の胸の形も大きさも色も、俺の好みだから安心しろって言われた気が。


 う~~~~~~~~わ~~~~~~~~~。そうだった。そんなこと、言われちゃってたんだ。

 ボボボボッ!また、顔から火が出た。


 この胸も、体も全部見られちゃってるんだよなあ。思い切りまた、恥ずかしくなってきた。


 そしてその時、気が付いた。あ!下着の替えも、パジャマも持ってきてない!ってことに。

 それに、バスローブもない。また、着ていた下着と服を着る?


 でも。怒られそう。なんで服着て出てきたんだ?!とか、怒鳴られそう。どうしよう。

 

 う~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。悩んだ挙句、私はとんでもないことを選択した。

 いや、なんで、この時はこれがベストの選択だと思ったのかが不思議だ。


 バスタオルを巻いて出て、一気に私の部屋に駆け抜けよう。

 きっと、そんな考えが出てきたのも、思考回路がまともじゃなかったからだ。


 そして、バスタオルを体に巻いて、ガチャリとバスルームのドアを開け、一気に私の部屋に駆け抜けようとダッシュしかけたところで、

「うわ!お前、大胆!」

と、一臣様に捕まった。


 うっぎゃ~~~~~~~~~~~~!!!もしかして、とんでもないことを私はしでかした?!

 後悔、先に立たず。という言葉をこれほど思い知ったことはない。



 


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