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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第3章 フィアンセのいろいろな顔
38/195

~その9~ 秘書の江古田さん

 30分後、突然秘書課に一臣様がやってきた。それも、かなりおっかない顔をして。

 バタン!

「おい!!!」

 手には会議室に置いたはずの資料を持っている。もしや、10階での会議に、一臣様も出席するんだったのかな。


 だけど、もう会議は始まっているはず。じゃあ、会議中にここに来たの?

「この資料は誰が会議室に持って行った?!」

「私です」

 一臣様がこれから、雷を落とすだろうと言うのが目に見えてわかったからか、私だけ手をあげ、隣にいる江古田さんは手をあげそこね、真っ青な顔をしてかたまっていた。


「お、ま、え、か!!!!」

 うっわ~~~~。目をひんむくというのは、こういう目のことをいうんだよね。きっと。

「なんだって、会議の1時間前から置いておくんだ!!!大事な資料だぞ!部外者に見られたらどうするんだ!!!」


「1時間前?いえ…。でも、確か」

 私は大塚さんのほうを見た。大塚さんはパソコンを見ながら、素知らぬ顔で仕事をしている。

 まさか、大塚さん、嘘ついた?!


 江古田さんのほうを見ると、江古田さんはまだかたまったままだ。


「それから、この資料、最後のページがすべて印字されてないぞ!」

「え?」

「会議室にあった、すべての資料がだ!!」


「そ、そんなわけないです。私、枚数も確認して印字しましたし」

「コピーしてからも確認したのか?!」

「…それは」

「だいたい、ちゃんと確認してから、会議室に持って行ったのか!?」


「申し訳ありません。わたくしです!わたくしが、ホチキス止めする時、確認しませんでした」

 江古田さんが、相当勇気を振り絞ったのか、声を振るわせてそう言った。


「江古田さん、上条さん。いったい、どういうことですか?」

 さっきまで、ずっとデスクの前で沈黙していた葛西さんが口を開いた。


「この資料を葛西がこの二人に任せたのか?」

 一臣様は冷静さを取り戻したのか、すごくクールな声でそう葛西さんに聞いた。

「いいえ。わたくしは、大塚さんに依頼しましたけど」

 葛西さんもそれに負けないくらい、クールだ。


「大塚に?」

 一臣様が大塚さんを見ると、大塚さんはいきなり真面目な顔つきになり、

「申し訳ありません。わたくし、ちゃんと指示をしたのですが、2人が勝手に」

と言い出した。


 江古田さんもさすがに、大塚さんをぎろっと見た。それをちらりと一臣様は見て、そして私も見た。

「会議、1時間後ですか?今すぐに印字して、コピーして、資料を作り直します!」


 そう言って、大塚さんに、USBメモリーをもらいにいこうと席を立つと、

「お前はいい。大塚、お前が頼まれた仕事だな?責任もって、今から会議室に行って、資料を全部持ってこい。そして、会議の20分前までにすべて資料を直して、会議室に揃えろ」

と一臣様は大塚さんに向かってそう言った。その声は、かなり威圧的だった。


「え?私一人でですか?」

 大塚さんの顔が引きつった。

「大塚の上司である葛西にも責任がある。葛西も手伝え。葛西、この資料の最後のページ部分に何が書かれているのか、ちゃんと確認しろよ」


 そう言うと、一臣様は私と江古田さんのほうをぎろっと睨み、

「お前らは、俺から話がある。10階の会議室に来い」

とものすごく怖い声でそう言って、部屋を出て行った。


 江古田さんは、今にも倒れるんじゃないかというくらい、顔色が悪い。それに力なく、ふらふらと椅子から立ち上がった。すると、江古田さんの前に座っている人が、

「クビ?くす…」

と小さな声で笑った。


 それを聞き、さらに江古田さんの顔色は悪くなり、もう血の気もない。

 大丈夫かな。今にもぶっ倒れそうなんだけど。


 大塚さんと葛西さんは、ものすごい勢いで部屋から出て行って、会議室にある資料を取りに行ったようだ。秘書課から廊下に行くと、前には背中に怒りのオーラを出しまくって歩いている一臣様の姿だけがあった。


 その後ろを、少し間を開けて私と江古田さんは歩いた。

「江古田さん、大丈夫ですか?」

「……」

 無言だ。


「確かに、確認不足でしたが、江古田さんだけの責任ではないですから。私もちゃんと確認しないで会議室に資料を置いてきたわけだし」

「……」

「江古田さん、しっかりしてくださいね?!」

 そう言うと、一臣様が私たちのほうを見た。


 あれ?顏、そんなに怒ってない?


 そしてエレベーターの前で立ち止まり、私と江古田さんが一臣様の後ろに並ぶと、

「真相を聞くだけだ。クビにしたりしないから、安心しろ」

と、一臣様は江古田さんに、静かにそう言った。


「え?」

 江古田さんがまたかたまった。その時、エレベーターが来て、

「行くぞ」

と一臣様が私たちとともにエレベーターに乗った。


 一臣様の隣に立った。うわ~~。一臣様のコロン。久しぶりで、抱きつきたいくらいだ。

 でも、そんな状況でもないし、斜め後ろにいる江古田さんはまだ、顔色真っ白だし。


 だけど、やっぱり、一臣様に会えて嬉しい私がいる。


 10階に着いた。一臣様が先に降りて、私たちは後からついて行った。

 背中も久々に見る。一臣様、スーツの上着着ていないんだな。今日は真っ白のYシャツだ。

 は~~。背中も麗しい。


 ふら…。

「江古田さん?」

 私が一臣様にくらくらしている間、江古田さんは違った意味で、くらくらしていたようで、歩きながら足元がふらついたらしい。


「大丈夫ですか?」

「はい」

 江古田さんは私を見て、どうにかそう答えたが、大丈夫そうには見えなかった。江古田さんはかなり、一臣様が怖いんだな。いや、もしかすると、秘書課の全員が一臣様を怖がっているのかな。湯島さんもかなり怖がっていた様子だし。


 平気なのは、豊洲さんくらいなんだろうか、もしかして。じゃあ、あの大塚さんはどうなんだろう。


 会議室に入ると、資料はもうテーブルの上に置いてなくて、大塚さんたちの姿も見えなかった。きっとすれ違いで、秘書課に戻って行ったんだな。


「ここに座れ」

 一臣様は、コの字型になったテーブルの隅に腰かけ、私たちをその斜向かいの席に座らせた。

 江古田さんは、私よりも先に、一臣様からより離れた席に座って、俯いたまま小さくなっている。


 私が席に着いて、心配そうに江古田さんを見ていると、

「2人とも、こっちを向け」

と一臣様に注意されてしまった。


「あ、はい」

 う…。ここに座っても、一臣様のコロンの香りがするし、一臣様の今日の髪型も決まっていてかっこいいし。


 違う!弥生。今は、仕事中!!雑念は追い払わないと!!


「まず、さっきの資料、印字したのは誰だ?」

 唐突に一臣様が聞いてきた。

「私です」

 すぐに私は答えた。


「大塚から頼まれたのか?」

「はい、朝一で頼まれて、枚数もちゃんと確認して印字しました」

「最後のページに書かれていたのは?」


「確か、資料を作った企画部の方の名前と…、取引先の会社の名前や、そちらの部署名も書かれていたかと…」

「その通りだ。それをちゃんと印字したのも確認したんだな?」

「はい。ちゃんと印字しました」


「あのページは直接、内容とは関係ない。だが、内容より大事なんだ。なにしろ、得意先の名前が載っているのはあのページだけだし、その部分のない資料となると、今日の会議で来る得意先の存在をまるまる無視した形になるからな」

「え?」


 江古田さんの手が震えているのがわかった。

「それに、印字したそのページ、そのへんのゴミ箱に捨ててあったりしたら、大問題だな」

 江古田さんの顔が視界に入ってきたが、引きつっているのがわかる。


「で?印字した後、すぐに江古田に渡したのか?」

「いいえ。すぐに大塚さんに渡しました。それを午後、昼食の休憩から戻ると、大塚さんが慌てた様子で、コピーしたこの資料を閉じて、会議室に至急持って行ってほしいと言われました。会議の時間が変更になったと言って、かなり慌てていました」


「変更?今日の会議がか?」

「はい」

「本当にそう言ったのか?」

「はい」


 江古田さんは何も答えなかった。

「それで、江古田が資料をまとめて、2人で会議室に持ってきたのか」

「はい。30分後に会議が始まるから、私と江古田さんとで10階の会議室にこの資料を持って行くようにと、それも、大塚さんからの指示です」


 私がそこまで言うと、一臣様は江古田さんをじっと見て、

「上条が言っているのは、本当か?」

と聞いた。

「はい」

 江古田さんはただ、一言そう言った。でも、一臣様の顔は見れないようだ。


「もう一回聞く。ちゃんとこっちを見て答えろ。上条が言っていたことは、本当なんだな?江古田」

「…はい」

 江古田さんは顔をあげ、一臣様の顔を見てそう返事をした。


「そうか。大塚か…」

 一臣様は、テーブルの一点を見て、黙り込んだ。

「葛西は、そのことに何か関わっていたか?」

「いいえ。何も」


「………」

 一臣様は眉間にしわを寄せた。


「では、確認する時間もなく、慌てて資料をここに置いて行ったのか」

「…すみませんでした。ちゃんと確認すればよかったんです。申し訳ありませんでした」

 江古田さんが頭を下げ、震える声でそう言った。


「そうだな。それはお前と上条のミスだ。ミスはミスだ…。だが…」 

 また、一臣様が黙り込んだ。


 しばらく沈黙の時間が流れた。

「どういうつもりだ?大塚は」

 一臣様は一言そう言うと、じいっと私を見て、

「お前、なんか嫌がらせでも受けてるのか?」

と聞いてきた。


「いいえ」

「今までもこんなことがあったか?」

「……いいえ」

 あ、でも、ダイレクトメールの時も、ちゃんと指示は受けたと言えって言われたっけな。だけど、嫌がらせだったわけじゃないと思うし。


「ふ~~~む」

 一臣様が腕組みをした。

「大塚は、お前が上条グループの令嬢だってことは知っているのか?」

「いえ。知らないと思います」


「知らないのか。だったらなんだ。単なる新人に対してのいじめか?」

「え?!!!」

 江古田さんが突然、大きな声をあげ、目を丸くして私を見た。


「なんだ?江古田」

「か、か、上条グループのご令嬢?では、一臣様の婚約者の?」

「ああ。しまったな。江古田にばれたな」

 一臣様はそう言うと、突然テーブルに置いてあったパソコンを起動させた。


 そして、素早くパスワードを入れ、何やらすごいスピードでキーボードを打ち始めると、画面に江古田さんの顔写真やプロフィールの載っているページが開かれた。

「ああ。江古田の父親ってのは、緒方電機の常務をしているのか」

「はい」


 江古田さんは、自分のことを調べられているからか、緊張しまくっている様子だ。

「姉がいるのか。その姉っていうのは、緒方化学の社長の秘書なんだな」

「はい」


「ふうん」

 まだ、一臣様はキーボードを打ち、違うページを開いたりして、パソコン画面をじっと見ている。

「お前のおじさんは、緒方機械の専務で、おじいさんは、この緒方商事で働いていたのか。それも、重役だったんだな」


「はい」

「なるほどね。で、お前は海外事業部に1年いたわけだ」

「はい」


「留学経験があり、英語が堪能。それで、海外事業部か…」

 そう一臣様は独り言のように呟いた。江古田さんはもう、黙り込んで俯いている。

「俺と弥生が婚約しているって噂は、海外事業部にいたから知っているのか?」

「はい。申し訳ありません。噂で聞いただけなのに、さしでがましいことを言いました」


「まあ、いい。本当のことだからな」

「え?」

 江古田さんは顔をあげた。

「弥生は俺の婚約者だ」


「……」

 江古田さんは私と一臣様を交互に見て、それから俯いた。


「お前もまだ、秘書課に来て2年目だな。大塚に嫌がらせを受けたことがあるか」

「はい。秘書課に移ってすぐの時に、何度か」

「なるほど。やっぱりあれか。新人いびりか。だったら別に問題はないんだが」


 え?!問題ないの?ないわけないよね?でも、一臣様、真剣な顔をしている。

「上条グループの令嬢だって知っていて、わざと貶めるようなことをしていたなら、問題だよな」

 一臣様はクールにそう言うと、

「樋口に調べさせるか」

とぼそっと呟いた。


 江古田さんは、まだ青白い顔をして俯いている。

「こいつが、上条グループの令嬢で、俺の婚約者だっていうのは、まだ伏せてあるんだ。いろいろと、事情があってな」

 そんな江古田さんに向かって、一臣様が言った。


「はい」

「だから、お前も誰にも言うな。秘書課で知っているのは、樋口と葛西と、豊洲だけだ」

「え?豊洲さん?」

「ああ。あいつは、俺の大学の先輩で、こいつのことも知っているらしいからな」


「あ、それで…」

 江古田さんはそう言ってから、

「では、婚約者だと知っていて、昨日は」

と言いかけてやめた。


「なんだ。豊洲が何かしたのか?弥生」

「あ、あの。昨日の帰りに、歓迎会をしようと言われて」

「課のみんなでか。別にそのくらいはいいぞ」

「いえ。そうじゃなくて、あの…。ふ、2人だけで食事にって誘われて」


「行ったのか?!」

「いえ!行きません。ちゃんと断りました」

 うわあ。一臣様、一気に怒りモードに変わった。よ、良かった。行かなくって。


「あ、断ったんですね、上条さん」

 江古田さんまでがそう聞いてきた。

「はい。すぐに私は家に帰りました」


「そうか……。なんだ、あいつは。何を考えてるんだ。そっちも、樋口に調べさせるか」

 私は、葛西さんとのことを豊洲さんに言われたっていうことまでは、一臣様に云えなかった。


「江古田。いいか。他の奴に喋ったりしたら、即クビだ。お前だけじゃない。お前の姉、父親、おじ、全員がクビだ。わかってるな?」

 ひょえ~~~。ものすごい脅し!


「はい」

 江古田さんはまた、顔を下に向け、震える声で返事をした。

「まあ、いい。江古田にばれても大丈夫だろう。なにしろ、お前は親父が秘書課に配属させたようだしな」


「え?」

「人事部からの要請じゃないだろ?移動。いきなり海外事業部の部長に言われたかなんかだろ?」

「はい。その通りです」


「最初から、俺の秘書としてお前を入れたようだしな。この経歴見りゃわかる」

「え?」

「ふん!だから、弥生のこともばれても、かまわなかったが…。今から、しっかりと理解してもらうが、俺の秘書になるということは、こいつの秘書にもなるってことだ。わかるよな?俺の奥さんになるってことは、次期社長夫人になるってわけだからな」


「あ、はい」

 江古田さんは、一回私を見てからそう答えた。

 次期社長夫人。私が。そ、そうか。そうだよね。うん。


「ちゃんとその辺理解して、心して秘書の仕事を覚えろよ。お前、かなり親父には気に入られているみたいだからな」

「私が社長に?」

「そうだ。じゃなかったら、秘書課に移動にはなっていない。海外事業部でのお前の仕事ぶりを見て、親父が気にいったんだろ。こいつなら、秘書を任せられるってな」


「……」

 あ、今度は目が点になってる。江古田さん。

 でも、そうか、なんか納得だ。江古田さんだけ、他の秘書の人と違って見えたもん。真面目というか、仕事に対する意識が違ってた。


「以上!そろそろ、大塚が資料を持って現れる頃だろ。葛西はことの重要さを理解しているとは思うが、大塚はまるっきりわかっていないだろうな。さて、どういった処分をするかな」

 そう言った一臣様の顔は、無表情で、それが逆に怖かった。


 だけど、私の顔を見ると、すぐにいつもの憎らしげな顔に戻り、

「お前、へましたわりには、元気だな」

とそう言って来た。


「え?いえ。あの…」

 わあ。しどろもどろだ。だって、一臣様に会えただけで嬉しいから。とは、ここでさすがに言えないし。そんなことを言ったら、さすがに一臣様に怒られるだろうし。


「ははは!今日の朝まで、めちゃくちゃ凹んでいたんだろ?等々力から聞いているぞ」

「え?!」

「弥生が俺に会えないからって、地の底に行く勢いで落ち込んでいるってな」


 ひょえ~~~。等々力さん、そんなことを言ったの?っていうか、一臣様、隣に江古田さんがいるのに、そんなことを言っていいの?


「江古田」

 いきなり、一臣様が江古田さんを呼んだ。

「は、は、はい?」

 江古田さんはまた、緊張したようで、一気に体がかたまったようだ。


「まあ、そういうことだから、いろいろとこいつのフォロー頼んだぞ。いいな?信頼しているからな?」

「………は、はい」


 江古田さんは、緊張はしているものの、一臣様の「信頼している」の言葉が嬉しかったようで、顔色が一気に明るくなった。


「戻っていいぞ」

 一臣様にそう言われ、私たちは会議室を出た。エレベーターからは、大塚さんと葛西さんが必死の顔をして、資料を持って現れ、私たちとすれ違った。


「クビ?」

 必死の形相をしていたにもかかわらず、私とすれ違う時に、大塚さんはそう小声で言い、小悪魔的な笑みも浮かべた。


 ああ。あの笑顔。この先どう変わるんだろう。一臣様、大塚さんをどうするのかなあ。


 私と江古田さんはエレベーターに乗った。江古田さんは、ずっと黙っていたが、来た時よりも顔色もよくなり、そして姿勢もしゃんとしていて、何か、大事な仕事を任されたっていうような、そんな面持ちでいた。




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