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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第2章 婚約は波乱万丈!
20/195

~その6~ 運転手の等々力さん

 休憩室でボケらっとしていると、そこに等々力さんがやってきた。

「あれ?弥生様。どうかされたんですか?」

「いえ。別に。等々力さんは休憩ですか?」


「はい。コーヒーでも飲もうかと思いまして」

 そう言うと等々力さんは、食器棚の中から、マグカップとインスタントコーヒーを出して、コーヒーを入れた。

「弥生様も、なにか飲まれますか?」

「いえ。大丈夫です」


 休憩室には、新聞や雑誌も置いてあり、等々力さんは新聞を広げて読み出した。

「みんなで、よく休憩室に集まるんですか?」

 そう聞くと、等々力さんは新聞をたたみ、

「バラバラですよ。たまに仕事が終わって、ここに来ると、ビールを飲んでいる樋口さんや、コック長に会いますけどね」

と、話しだした。


「へえ。皆さんでビールを一緒に飲まれることもあるんですか?いいですね。私もそこに混ざりたいなあ」

「今のうちなら、混ざれますよ。お屋敷に戻られたら、今度は使用人の寮に出入りすることを禁じられますからね」

「一臣様にですか?」


「奥様にです」

「……そうなんですか。それはそれで、寂しいなあ」

 ぼそっとそう言うと、等々力さんはクスッと笑った。


「じゃ、本当に今のうちですよね?この寮にいる間に、みんなとご飯食べたり、お話したり、いっぱいしたいと思います。だから、ここに集まる時には私のことも絶対に呼んでくださいね!」

「はい。わかりました」

 

「一臣様がここに来られることはないんですか?」

「子供の頃はありましたよ。ここに来るのが一臣様も龍二様も好きでした。何しろ、たくさんの人がいたし、お子さんもいましたしね」

「お子さんって、もしかして喜多見さんのお子さん?」


「はい。執事の国分寺さんの息子さんもいらっしゃいましたし」

「え?そうなんですか?」

「国分寺さんの息子さんは、確かもう30ですよ。結婚もされて、お子さんもいます。年に1~2回、お子さんを連れて遊びに来ますよ」


「へ~~。じゃ、今は国分寺さんと奥さんがこの寮にいられるんですか?」

「はい。国分寺さんの奥さんは、奥様付きのメイドをしていらっしゃいます」

「一臣様のお母様のメイドを?」

「はい。出張の時にもお連れしてしまうので、なかなか寮に帰られることもないんですけどねえ」


「え?じゃあ、国分寺さん、寂しいじゃないですか」

「ははは。それはどうかな?奥さんがいない時の夜は、ここで樋口さんと飲んだり、テレビ観戦をしたりと、けっこう羽を伸ばしていますよ」

 そうなんだ。


「あ、あの。等々力さんはご結婚は?」

「残念ながら、私はまだ独身なんです。もしかすると、一生独身かも知れないなあ」

 そんな話をしていたら、そこにコック長がやってきた。


「買い出し、終わったんですか?コック長」

「はい。どうにか終わりました。あれ?弥生様、どうかされたんですか?」

「いえ。部屋にいても暇なもので、ちょっと…」

 コック長も、黙って食器棚を開けるとマグカップを取り出し、インスタントコーヒーを入れて、席に着いた。


「皆さん、マイマグカップがあるんですね」

「はい」

 私の質問に、等々力さんが答えた。コック長は黙って、コーヒーをこくんと飲むと、

「はあ」

と安堵の溜息をついた。


「今夜のリクエストはなんだったんですか?材料の揃えにくいもの?」

「……そうですねえ。奥様は、季節に関係なくリクエストをしてくれるので、毎回探すのに一苦労です」

 ああ。今夜のおかずの買い出しだったんだ。


「今夜は、ここで弥生様も一緒にまかないを食べますか?」

 そう等々力さんが私に聞いてきた。

「え?いいんですか?」

「はい。わたくしたちと一緒でよろしかったら…」

 コック長が静かにそう答えた。


「うわ。嬉しい!私、まかないって大好きなんです」

「は?」

「私、大学生の頃、アルバイトをしていたんです。定食屋とか、ラーメン屋とかでアルバイトをすると、まかないが出るじゃないですか!それが、けっこうどれも美味しいんですよね~~~」


 私がワクワクした顔でそう言うと、二人共しばらく目を点にして黙り込み、そのうち等々力さんがクスッと笑った。

「アルバイトをされていたんですか?」

 コック長が聞いてきた。


「はい!あ。もしよかったら、今度キッチンを使わせてください。私、一度でいいから、一臣様のお弁当、作りたかったんです」

「は?」

 また、コック長が目を点にした。


「ダメですか?」

「いえ。今のうちでしたら、キッチンに入っても、怒られないかもしれませんが…」

「え?もしかして、屋敷に戻ったら、キッチン使わせてもらえないとか?」

「そうですね。そういうことも奥様は嫌がりますから」


 うそ!

「じゃあ、私、ずうっと一臣様にお料理、作れないってことですか?」

「今のうちでしたら、いつでも。あ、私の家のキッチンでも大丈夫ですよ。そのほうが奥様にもばれないで済むし、材料は私が揃えておきますが」


「いいんですか?コック長の家のキッチン使っちゃって」

「どうぞ。お弁当箱なども、揃えておきましょう」

 うわ~~~い!嬉しい!


「………あ。でも、一臣様が嫌がったりするかな」

「……」

 そう言うと、二人共目を合わせ、黙り込んでしまった。あ、嫌がったりしちゃうのか…。


「もしかしたら、食べてくださるかもしれないから、挑戦するだけしてみますか?」

 コック長がそう言ってくれた。

「はい!」

 

 そういうのも、ずっと夢見てきたの。私の手作りのお弁当や手料理を一臣様に食べてもらうこと。

 きっと、叶うよね?


 あれ?

 もしや私、お屋敷追い出されたおかげで、色んなこと、楽しめちゃうのかな?

 そう思ったら、やたらとワクワクしてきて、気持ちは思い切り前向き、フルパワーになった。


 ワクワクしながら、私は兄からの連絡を待った。すると、携帯が鳴り、

「弥生か?食事はさっきのホテルの、レストランでいいか?」

と兄が聞いてきた。


「フレンチは苦手なんだけどな」

「寿司だ。弥生も好きだろ?僕も本場日本で、寿司が食べたくってな」

「お寿司?嬉しい!」

「じゃあ、12時ちょうどに予約してあるから、寿司屋はホテルの3階にある。待っているからな」

「はい!」


 わ~~い。お寿司。あれ?

 ホテルの3階?って中華のレストランと同じ階だよね。昨日の私の失態を見ていた人にも、会っちゃわないかな。あの支配人とか…。

「う、ちょっと嫌だなあ」


 そんなことをブツブツ言いながら、私は部屋に戻った。そして一応着替えをして、お化粧もし直して、また休憩室に行った。休憩室では、もう支度を済ませた等々力さんが待っていた。

「すみません。また、さっきのホテルにお願いします」

「はい、かしこまりました」


 等々力さんは、にこやかにそう答え、先に歩いてドアを開けてくれた。

「ありがとうございます」

 そう言って休憩室を出ると、また、等々力さんはくすっと笑った。

「えっと?」

 なんで笑われたのかな?


「弥生様は、本当にご両親の躾が素晴らしかったんでしょうね」

「躾?いいえ。特には…」

「そうですか?ですが必ず、ありがとうございますと丁寧におっしゃいますよね」

「あ、それは両親からそうしなさいと言われたわけではないんです。感謝の言葉はちゃんと伝えなさいとは、父から言われていましたけれど…」


「はい」

「ただ、両親も祖父母も、誰に対してもちゃんとお礼や挨拶をする人だったので、そういうのを見て育ったから、私も知らない間に…」

「自然と身に付かれていたんですね」

「多分、そうだと思います」


「…素晴らしいですね。こちらの奥様からは、一回も言われたことがないので新鮮です」

「え?!そ、そうなんですか?」

「はい」

 等々力さんは、先を歩き、駐車場に着くと車のドアも開けてくれた。


「あ、ありがとうございます」

と言ってから、なんだか照れくさくなった。等々力さんは優しく微笑み、私が車に乗るとドアを閉め、運転席に乗った。

 そして、車を発進させた。


「何か音楽でもかけましょうか?」

「え?いいんですか?一臣様の時は、何もかけないですよね?」

「いいえ。たまにリクエストがありますよ」


「一臣様から音楽のリクエスト?どんな音楽ですか?」

「まあ、たいていがクラシックかジャズですね」

「そ、そうですか。私とは趣味が違っているんですね」


「弥生様はどんな音楽が好きですか?」

「私は、主に日本のポップス…」

「あ、そうですか。それは揃えていないなあ」

「じゃあ、よく一臣様が聞くジャズをお願いします」


「ジャズでよろしいですか?」

「はい。クラシックは寝そうなので」

「ジャズも静かなものが多いですよ。一臣様はいつも、眠りたい時に聞いておりますので」

「車の中で寝ることもあるんですか?」


「はい。時々移動の時間が長い時は。あまりお部屋ではお休みになれないとか…」

「不眠症なんですよね、一臣様って」

「……ですが、最近は顔色がいいですね。今日も顔色が前よりも良かったですよ」


「……」

 うん。なんか、思い切り熟睡できていたみたいだしなあ。なんて、言っていいものかどうか。


 私が黙っていると、等々力さんはジャズをかけてくれた。ピアノだけのジャズで、とっても心地のいい音だった。

「あ!この曲は知っています。星に願いをですよね?」

「はい」


「私、ディズニー映画が大好きで、子供の頃よく母と一緒に家で観ていたんです」

「そうですか…」

「子供が生まれたら、私も一緒に観たいって思っていたんです。もし女の子だったら、お姫様が出てくる映画をいっぱい」


「弥生様もお姫様が出てくる映画を観られていたんですか?」

「はい!でも、私が好きだったのは、アラジンです」

「アラジン?」


「お姫様がお城から飛び出て、空飛ぶ絨毯でいろんなところに行くじゃないですか」

「はい」

「あれをしてみたかったんです。一番上の兄、如月お兄様とは、10歳年が離れてて、私が6歳の時、家を出ていってしまって」


「ああ、確か上条グループでは、中学を卒業すると家を出ていくという話は聞いたことがありますが…」

「そうなんです。高校の寮に入るんですけど、正月とお盆だけは帰ってきていたんです。そうすると、寮の話や、外での話を兄が楽しそうにしていたので、私、羨ましくって」


「羨ましかったのですか?家から出るのが?」

「変わっていますか?でも、アラジンを観ていても、ワクワクしていたんです。なんかこう…。家の外って、どんななんだろうって。知らない世界にやたらと興味があったっていうか」


「……弥生様は、好奇心旺盛なお子さんだったんですね」

「はい。実はやんちゃで。よく怪我もしたし、自転車乗って、探検とかにも行っちゃって…」

「ははは。探検ですか?」


「弟の葉月を連れて、行っていました。葉月はひとつ下で、やっぱりやんちゃで、仲良かったんです。似ていたし、よく双子と間違われていました」

「へえ…」

「それも、二人共男の子だと思われていたんですよ。生傷耐えなかったし、真っ黒に日焼けしていたし、髪も短かったから、当時の私は…」


「ははは。その頃の写真を見てみたいですねえ」

「今度、家からアルバム持ってきます。あ、でも、家に帰る時ってあるのかなあ」

「ずっと帰っていないんですか?」

「お正月には帰りました。でも、一臣様と結婚したら、帰れるのかどうか…」


「…大丈夫ですよ。一臣様もご一緒に行かれたらどうですか?」

「一臣様と?行ってくれるでしょうか…」

「行ってくださいますよ。きっと」


 優しい表情の等々力さんが、バックミラーに映った。やっぱり、等々力さんと一臣様って、信頼関係がしっかりとしているんだろうなあ。

 私は静かに、ジャズを聞いた。そしてちょっとだけ、今、隣に一臣様がいないことを寂しく感じた。


 ああ。私ってば。朝まで一緒にいたというのに。

 あれ?でも、次はいつ会えるのかな。私、しばらくは会社に行けないみたいだし、お屋敷にも入れないみたいだし…。

 そう思うと、胸がきゅ~~って痛くなった。一臣様に、今すぐにでも会いたいなあ…。



 そんな切ない思いをしているうちに、車はホテルに着いた。

「帰る時にフロントに言ってくださったら、すぐに車を正面玄関に回しますので」

「はい。ありがとうございます」


 本当だったら、等々力さんにもお寿司を食べていってほしいくらいだ。でも、さすがにそれは、一臣様も怒るだろうな。如月お兄様だったら、気にせず一緒に食べてくれるかもしれないけれど。

 やっぱり、ここは大人しく一人でお寿司屋さんに行くとしよう。


 3階に着くと、目の前には中華レストランがあった。そこにはあの、支配人がいて、私を見てなぜかすっ飛んできた。

「弥生様!昨日は弥生様が、上条グループのご令嬢だとわからず、無礼をいたしました」

「え?!」


 無礼をしたのは私のような気がするけど。

「今日は、ご予約は…」

「あ、ごめんなさい。今日は兄と、お寿司屋さんのほうに…」

「ああ!お兄様というと、もしや、卯月おぼっちゃま」


「いえ。如月お兄様とです」

「え?!如月おぼっちゃまが、日本にいらしているんですか!」

「…兄をご存知で?」

「もちろんですとも。こちらにも何度もいらしてくださっています」


 そうだったんだ。兄も顔パスかな、もしかして。

「すみません。昨日は、私、えっと。途中で酔ってしまって」

「あ!大丈夫ですよ。弥生様と緒方様がご婚約されていることは、内密にしておきますので」

「はい。お、お願いします…」


 私はそう言ってぺこりと頭を下げ、中華レストランの隣にある、お寿司屋さんに入った。

「いらっしゃいませ」

「あの、上条ですけど、兄と約束していて」

「弥生様ですか?!はい!如月おぼっちゃまでしたら、もう奥の部屋にいらっしゃっていますよ。どうぞ!」


 威勢のいい、店長さんらしき人に案内され、奥の座敷に行った。そして襖を開けると、兄がもうくつろいでいた。

「ああ、弥生。迷わず来れたか?」

「はい。すぐにわかりました」


 それから、美味しいお寿司をお腹いっぱいに食べ、兄とお茶を飲みながら、一息ついた。

「弥生、大丈夫なのか?」

 兄が唐突にそう聞いてきた。


「え?何が?」

「緒方財閥だよ。今、お屋敷にいるんだろ?」

「大丈夫です。みんなとっても良い方ばかりなんです。運転手さんも、コック長さんも、メイドさん達も」


「会社はどうなんだ?今、緒方商事で働いているんだろう?」

「はい。同じ課の人たちも、すっごくいい方たちばかりです。仕事も丁寧に教えてくださいますし、緒方財閥のこともいろいろと教えてもらっています」


「……だが」

「あ!一臣様の秘書の樋口さんも、とってもいい方なんですよ!お優しくて、私、いっつも助けていただいてて」

「はあ。そうか、周りがそれだけフォローしてくれているのなら、安心かな」

「え?」


「だがなあ。僕が一番心配しているのは、一臣君の女性関係なんだ」

「女性?」

「あまりいい噂を聞かないからなあ。なんでまた、父さんは彼を弥生の婚約者として認めたのか…」

「え?!」


「僕は反対したんだよ?何しろ、高校時代から彼は女癖が悪かったようだし」

「え?」

 高校の頃って、私とまだ婚約する前?


「彼はね、高校3年の時、5歳も年上のモデルと付き合っていたんだよ。18の誕生日を過ぎてすぐに免許を取って、彼女を乗せて運転して、飛ばして、事故に遭ってね。彼女にひどい怪我を負わせて、モデルもできなくなったと聞いているよ」

 …そ、そんなことが?


「彼女は心機一転、アメリカに行って人生を出直したらしいんだが、一臣氏も高校卒業してから、アメリカに追いかけに行ったと、そんな噂も聞いた」

 追いかけに?じゃあ、留学っていうのは、彼女を追うためだったの?


「そんな頃に、父さんはお前と一臣氏を婚約させたんだ。いったい、何を考えてるんだって、僕はさんざん父さんに反対したんだけどね。とうとう聞き入れてもらえなくって。でも、そのあとも、彼の女性関係の悪い噂ばかりが耳に入ってきて…」

「悪い、噂?」


「たくさんの女性と、付き合っているようだね。それも、いまだに…」

「………」

「婚約者がいるっていうのに、まったく気にとめないで、女遊びをしているような男と結婚して、お前が幸せになれるとは思えないんだがなあ」


 兄はそう言って、お茶をすすり、

「やっぱり、反対だな、僕は。大事な妹を傷つけられたくはないからね」

とそうはっきりと言った。


「でも、反対って言われても」

「日本にいる間に、一臣氏がお前のことをどう思っているのか、しっかりと観察させてもらうよ。これからも、女遊びを平気でしていくような男だったら、断固としてお前と一臣氏の結婚は反対する。父さんがなんと言おうともね」

「そんな…。でも、もう婚約しているから、反対されても」


「正式発表はまだだろう?その前だったらいくらでも、婚約を破談にできるさ。それに、僕はね、お前にふさわしい男もちゃんと選んだんだ」

「え?」

「この男だ。上条グループのアメリカ支社で、僕のサポートをしてくれている。お前の旦那には申し分の無い、いい男だよ。どうだ?顔もなかなかのイケメンだろう?」


 兄は薄型のノートパソコンを広げ、男の人の写真を見せてくれた。

「アメリカ人?」

「ハーフだ。母親がアメリカ人で、父親が日本人だ。今、28歳。いい男だろ?一緒に来日している。会ってみないか?今夜にでも」


「え?」

「正式ばった見合いってわけじゃない。ただ、会って食事をしてみないか?気にいったらお付き合いをしていって、それから結婚を考えたらいい」

「待って、お兄様。私には一臣様っていうフィアンセが」


「…同時に、僕が一臣氏がお前にふさわしい男かどうか、見極めていく」

「でも!」

「いいから、今夜3人で食事をしよう。二人きりじゃないなら、大丈夫だろ?一臣氏には、また僕と食事をすると言えばいい」


 そ、そんな~~。そんな、一臣様を騙すようなこと…。

「決まりだな。店は、ここの最上階にあるフレンチにするか?」

「フレンチは…」

「ああ、コース料理好きじゃなかったか。じゃあ、その隣にある、ローストビーフの美味しいお店にしよう。レストランから見える夜景は最高だぞ」


 ダメだ。如月お兄様は、ものすごく頑固で一度言い出したらきかない人だった。

「はい」

 だ、大丈夫。私が一臣様と結婚するという意志さえ曲げなければ、兄だってちゃんと納得してくれる。


 それに、お父様は一臣様と私を結婚させる気でいるんだし。

 いくら、一臣様の女癖が悪いとは言え。悪いとは言え。悪いとは……。

 ああ!思い切り不安が!この兄が一臣様の日頃、いろんな女性と遊んでいる様子を知ったら、絶対に反対するに決まってる!


 ズドド~~~~ン。また、一気に暗くなった。なんだってこう、私と一臣様の周りではいろんな問題が起きるんだろうか。


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