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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第13章 大事な人
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~その12~ 二人の世界

 お屋敷に戻ると、元気に亜美ちゃんたちが出迎えてくれた。

「どうでしたか?パーティは」

 亜美ちゃんが、目を輝かせながら私に聞いてきた。でも、

「くそつまらなかった」

と、一臣さんが先に答えてしまった。


「え?そ、そうだったんですか?」

 亜美ちゃんはまた、私に聞いてきた。

「一臣さんの演奏が素敵でした」

 私はうっとりとしながら、そう亜美ちゃんに答えた。


「弥生、部屋に行くぞ」

 一臣さんは私のお尻に手を当て、歩き出した。えっと、なんだってお尻?

「あ、あの。手がお尻を触っていますけど」

 亜美ちゃんやトモちゃんもいるから、私は恥ずかしがりながら一臣さんに聞いた。


「背中は帯があるだろ?エスコートするなら尻しかないじゃないか」

「……」

 だったら、手を引くとかでもよくない?


 そのまま階段を上り終えたところで、一臣さんは私のお尻をすりすりと撫でてきた。

「きゃ。エッチ。なんで、こんなところで?」

「エッチじゃない。パンツ履いているかどうか確認しただけだ」

「十分エッチです」


「でかい声を出すな。まだ、下に立川がいるぞ」

 うわ。本当だ。見られた?聞こえてた?!

「きっと、亜美ちゃんやトモちゃんにばれていますよね」

「何をだ?」


 私は一臣さんの部屋に入ってから、そう言った。一臣さんの手は、まだ私のお尻を触っている。

「一臣さんがすごくエッチでスケベで、変態だってこと…」

「おい。なんだ、その言いぐさは。言っておくけどな、お前は他の男と付き合ったことがないだけで、男なんか誰でもこんなもんだ」


「え?そうなんですか?」

「そうだ。淡白でクールだった俺が、異常だっただけだ。今の俺はいたって、まともなノーマルな男だぞ」

「そ、そうなんだ…」

 付き合った経験がまったくないから、知らなかった。世の男性って、みんなこうなのか。


 えっと。じゃあ、如月お兄様や、卯月お兄様も?やっぱり、違うと思うんだけどなあ。トミーさんはちょっと、一臣さんに似て、手が早そうだったけど。


「こっちに来い」

 一臣さんが私をベッドまで連れて行った。でも、ベッドに押し倒すわけでもなく、ベッドの前に立ち、じいっと私を見ているだけだ。


「あの?」

「可愛いな。赤い振袖似合っているぞ」

 きゃ。照れる。一臣さんって、こういう言葉を言うのに抵抗ないのかな。嬉しいけど…。


「帯、どうやってほどくんだ?」

「あ、はい」

 私は一臣さんに説明しながら、一臣さんに帯をほどいてもらった。その間もなぜか、ドキドキしてしまった。


 ほどいた帯を私は綺麗に畳み、チェストの上に置いた。一臣さんが後ろから私を抱きしめてきて、またドキッと胸が高鳴った。


 わあ。チェストの前にある鏡に、一臣さんに抱き着かれている私が映っている。


 後ろから手を伸ばし、一臣さんが腰ひもをほどいた。一臣さんも鏡に映っている私を見ている。

「やっぱり、着物着ているほうが、弥生は色気が出るな」

「……」

 なんと答えていいものやら。


「あ!」

 きゃあ。胸元に手を入れられちゃった!

「こういうこともできるし」

 きゃあ。もう片方の手は、着物の裾から手を入れてきた!

「こういうこともできるしなあ。いいよな、着物は…」


 もう。やっぱり、一臣さんはスケベだよ。ああ、ドキドキ半端ないかも。


 くるっと一臣さんのほうに体を向けられ、一臣さんはそっと着物を脱がした。それを私は丁寧に畳み、またチェストの上に置いた。その間、一臣さんはじっと私を見ているだけ。


 一臣さんはさっき、上着だけは脱いでいた。でも、まだシャツは着たままだ。まったく脱ぐ気配すらしていない。


 着物を置くと、一臣さんがまた私を一臣さんのほうにくるっと向かせ、チュッとキスをしてきた。そして、

「いいなあ。長襦袢だったっけ?色気あるよなあ」

と、しみじみと私のことを見つめた。


 照れくさい。そんなに見つめないで。

「あ、あの。一臣さんはシャツ、脱がないんですか?」

 恥ずかしくなり、なぜかそんなことを口走ってしまった。すると、一臣さんはとんでもないことを言い出した。


「弥生がたまには脱がせろよ」

「え?!」

「脱がしたいって思っているだろ?」

「いいえ」


「本当に?脱がしたいって思わないのか?」

「そ、そんな変態じゃないですし」

「へえ。そうか。今迄付き合ってた女は、脱がしたいって言ってくるやつばかりだったけどな」

「え?!!!」


 うそ。

「それで、脱がされていたんですか?!」

 そんなの嫌だよ。なんか、想像しただけでも、胸が痛んじゃう。

「いや。言っただろ?触られるのも嫌だったんだ。そんなことさせるわけないだろ、この俺が」

 

 そ、そうか。ほっとした。過去のこととは言え、思い切り嫉妬しちゃうところだった。

「でも、お前は別だ。いいぞ?脱がしても…」

 あ、また偉そうにふんぞり返った。もう、私をなんだと思っているんだ。


 だけど、脱がしてもいいって言うんだから、遠慮なく脱がしちゃおうかな。

 ひゃあ。なんだか、ドキドキしてきちゃった。


「じゃ、じゃあ、遠慮なく…」

 そう言って、ちょっと震えながら一臣さんのシャツのボタンを外した。一つ、また一つ。

 

 うわ!鎖骨見えちゃったよ!ドキッ!!


 手が震える~~~~!でも、どうにかボタンを全部外した。一臣さんは、じいっとさっきから動かないでいる。

 

 一臣さんの逞しい胸やお腹が露わになった。それから、シャツをゆっくりと脱がせてみた。ああ、一臣さんがされるがままになっている。袖から腕を抜き、もう片方の袖からも腕を抜いた。


 はらりと一臣さんの体からシャツが床に落ちた。

「あ…」

 拾おうとすると、

「いい。あとで拾えば」

と、一臣さんが耳元で囁いた。


 ドキドキ!

 なんだか、私が一臣さんを裸にしちゃったみたいで、ドキドキする。いや、実際に私が脱がせちゃったんだけど。


「下も脱がせろよ」

「え?!ぱぱ、パンツは…」

「ズボンだけでも脱がせろよ」

 ひゃあ。それも抵抗ある。


 何が抵抗あるって、ベルトを外すのも、スラックスのファスナーを下ろすのも、とにかく全部抵抗があるよ。


 で、で、でも。お許しが出ちゃったんだから、脱がしてもいいんだよね。うん。

 ゴクン。生唾を飲み込んだ。その音、一臣さんに聞こえていたかもしれない。だって、部屋がやたらと静かだし。


 ドキドキドキドキ。心臓の音まで聞こえているかも。

 指がふるふると震えた。でも、なんとかベルトを外し、ボタンも外し、ファスナーを下ろした。そして、スラックスを脱がしていると、一臣さんが私の首筋を撫でてきた。


「きゃ」

 不意打ち!思わず、ビクンと体が跳ねてしまった。

「なんだよ、弥生。感じやすいな」

 だって、いきなり触ってくるから。


 一臣さんは、私を立たせると、長襦袢の腰ひもをするりとほどいた。

 わあ。それだけでドキドキする。それから、私の頬を優しく撫で、耳にキスをした。


 クラ。それだけで、クラクラする。それに、一臣さんの素肌を見ているだけでドキドキする。

 長襦袢、肌襦袢を一臣さんは、するすると優しく脱がせ、最後に裾よけだけにすると、私の背中や腕を優しく撫でてきた。


 は~~~~。とろける…。体がふわふわして、思わず一臣さんの胸によっかかってしまった。一臣さんのコロンの香りに包まれた。ああ、もっととろんと溶けてしまった。


 する…。一臣さんが裾よけの隙間から手を入れてきた。そして太ももを優しく撫で、お尻まで撫でてきた。

 はう…。いつもなら、スケベって言って、怒るところだけど、今はされるがまま。甘い吐息が思わず出てしまう。


「やばいな。弥生、色っぽすぎだ」

 一臣さんまで、はあっと甘い吐息をはいた。

 

 それから、裾よけの紐も一臣さんはほどくと、裸になった私を抱き寄せ、そのままベッドに連れて行かれた。

 ふわ…。優しくベッドに寝かされ、一臣さんもベッドに上ってくると、私の髪や頬を優しく撫で、熱いキスをしてきた。


 ふわふわ。何も考えられない。甘美な世界だ…。

 優しくて、甘くて、とろけちゃう世界…。


 時間はゆっくりと流れて行く。指と指を絡めると、一臣さんは私の手の甲にキスをする。とろんとした目で一臣さんを見つめると、一臣さんも熱い視線で私を見る。


 は~~~~~~~~~~~~。幸せだ~~~~~~~~~~~~~~~。



 一臣さんの腕枕で、私はまだ余韻に浸っていた。時計の音だけが部屋に響いている。


 しばらく、一臣さんは私の髪を優しく撫でていた。それから、

「やばいなあ」

と、呟いた。


「何がですか?」

「すごく幸せだ」

「私もです。でも、なんでやばいんですか?」

「弥生に骨抜きにされているからだ」


「は?」

 一臣さんは体を起こし、私の上に覆いかぶさると、熱いキスをまたしてきた。

 ほわほわほわわん。


「とろけたか?」

「はひ」

「俺もだ」

「え?」


「やばいよな?」

「とろけると、やばいんですか?」

「ああ。ダメだ。また、抱きたくなってきた」

 そう言って、私の耳や首筋にキスをする。


「……」

 思わず、一臣さんを抱きしめると、

「もう一回抱いてもいいんだな?」

と、一臣さんが確認をしてきた。


「はい」

 一臣さんの耳元で囁くと、また熱いキスをしてきた。

 うわ~~~~~~~~~~~~。私もやばいです。ずっと、スイッチ入ったままです。


 ああ、このまま朝まで、一臣さんの腕に抱かれていたい。


 

 でも、まだ夕飯前だ。一臣さんの腕の中でうっとりとしていると、

「ぎゅるる」

とお腹が鳴ってしまった。


「あ!」

 もう!!なんだって、私のお腹は!

「夕飯の時間か?お前の腹時計は相変わらず正確だな」

 そう言いながら、一臣さんは体を起こし時間を確認した。


「6時半だ。そろそろ呼びに来るから、シャワー浴びるか」

「はい」

 そして、二人でバスルームに移動し、あったかいシャワーを浴びて汗を流し、着替えも済ませ、まだ呼びに来る前から、部屋を出た。


 私は一臣さんと腕を組んでいた。あれ?自分でも知らぬ間に腕を組んじゃったかも。でも、一臣さんは特に何も言わず、そのまま階段を降りた。


 ダイニングに行くと、すでに夕飯の準備はできていて、

「あ、今呼びに行こうと思っていたんです」

と、亜美ちゃんが私たちを見てそう言った。


「あれ?俺らの分だけか?龍二と京子さんは?あとおふくろは?」

「龍二さんと京子さんは、外でお二人で食べるらしく、お母様もご友人とお食事をしてくるそうです」

「そうか。弥生と二人か…」

 一臣さんは口元を緩めた。


 給仕を済ませた国分寺さんや亜美ちゃんは、すすすと部屋の隅へと静かに移動して、ダイニングのテーブルに着いた私と一臣さんは、二人きりの食事を楽しんだ。


 時々黙って見つめ合い、うっとりと一臣さんを見た。なぜか、一臣さんも、うっとりとした目で私を見ている。

 甘い時間がまだ、続いているみたいだ。


 食後のコーヒーが出てきて、それをゆっくりと二人で飲んだ。そして席を立つと、一臣さんが私の腰に手を回し、

「ごちそうさま」

と一言言って、私を抱き寄せダイニングを一緒に出た。


 ダメだ~~~。なんでだかわかんないけど、私もつい一臣さんの体にべったりとくっついてしまう。

「ピアノ、聞くか?」

「弾いてくれるんですか?」


「ああ。ノクターンを弥生のためだけに弾くぞ」

「わあ。嬉しい」

 私が喜ぶと、一臣さんはくすっと笑って私の鼻の頭にキスをして、そのまま私を引き連れ大広間に入って行った。


 バタンとドアを閉め、またピアノの横に椅子を運んで私を座らせると、一臣さんは静かにノクターンを弾きだした。


 ああ。この音。酔いしれてしまう。きっと、メイドのみんなも、耳を澄ませて聞いているんだろうな。だけど、今、一臣さんは私のためだけに弾いてくれているんだよね。


 はう。ずうっと、ずうっと甘い世界だ。私の周りだけきっとピンク色になっているかもしれない。


「弥生…」

 弾き終わってもうっとりとしていると、一臣さんは私に近づきキスをした。唇にも、頬にも、おでこにも、そして耳にも。


 わ~~~~。キュンキュンとドキドキとふわふわだ。


 そして優しく髪を撫で、

「弥生。愛しているからな」

と耳元で囁いた。


 腰、砕けた~~~~~~~~~~。立てないかも。


「はひ…」

 ふらふらになりながら、そう答えると、一臣さんはくすっと笑った。


「立てそうもないのか?俺のピアノの音だけで、腰抜かしたのか?」

「はひ」

「なんだよ、まったく…。しょうがないなあ」

 そう言うと、一臣さんは私をひょいっとお姫様抱っこして、大広間を出た。


 大広間のドアの前には、やっぱり、メイドさんたちがいた。大広間のドアが開くと、みんな慌てふためいたが、一臣さんにお姫様抱っこされているので、みんな振り返って私と一臣さんを見た。

「弥生様、どうかなさったんですか?」

 トモちゃんが聞いてきた。


「ああ。俺のピアノの音で、腰が抜けたんだと」

 きゃあ。ばらしてる!でも、正確には、キスと「愛している」の言葉でなんだけど。

「素敵な音色でしたものね~~~」

 トモちゃんも、うっとりとした目でそう言い、亜美ちゃんも、目をハートにさせ、

「お姫様抱っこだなんて、素敵」

と、そんなことを一臣さんに言った。


「お前はお前の彼氏にしてもらえ。コック見習いだっけ?年下の彼だろ?」

「きゃ~~。なんで知っているんですか?」

「ふん。そのくらい、情報はいくらでも入ってくるんだよ。まあ、頑張れよ」

 そう一臣さんは言うと、階段を上りだした。


「え?え?」

 私は一臣さんの肩越しに亜美ちゃんを見た。亜美ちゃんは真っ赤になっていた。

「コック見習い?年下の彼?」

「なんだよ。お前は知らなかったのか?立川の方からモーションかけたようだぞ」


「知りませんでした」

「なかなか、期待できるコック見習いらしい。喜多見さんが言ってた。もし、付き合いが続くようなら、自分とコック長みたいに、結婚しても二人して屋敷に残るかもしれないってな」


 そうか!だから亜美ちゃん、ずっと屋敷にいますなんて言ったんだ。

「知らなかった~~」

「動くなよ。重いだろ」

「ごめんなさい」


「まだ、腰抜かしたままか」

「はい」

 本当はもうしっかりと歩けるかもしれない。でも、抱っこしていてほしくて嘘をついた。それに、一臣さんの首に両腕を回した。


「一臣さん」

「なんだ?」

「私も、愛しています」

「ああ。知っているぞ。一緒に風呂入ろうな?」


「え?はい」

「体洗ってやるからな?」

「……はい」

 まだまだ、私と一臣さんの甘美の時間は続きそうだ。


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