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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第12章 気弱な私
174/195

~その8~ 一臣さんのオフィスで

 一臣さんはエレベーターに乗り込むと、私の腰に手を回して私を抱き寄せた。

「あ、あの」

「なんだ」

「み、見られちゃって、大丈夫ですか?」

「何をだ?」


「だから、一臣さんのセクハラ」

「セクハラじゃないだろ!」

 うわ。怒られた。

「で、でも、矢部さんと鴨居さんはセクハラだって思っているかも。特に、鴨居さん、ショック受けていたし」

 一臣さんは片眉を上げただけで、何も返事をしなかった。


 それから15階に着くと、一臣さんは私の腰を抱いたまま、足早に自分のオフィスに入り、

「樋口、辰巳さんとの打ち合わせ、午後からにしてもらうようになんとか根回ししてくれ。午後から弥生も連れて行くから」

と樋口さんに言うと、返事も待たず、さっさと部屋に入った。


 そして、ソファに私を座らせ、その隣にどっかりと座ると、

「さて。弥生、続きをするぞ」

と私のスカートをまくしあげだした。


「まままま、待ってください」

 いきなり、また?!こんなところで何をしだすわけ?

「待ってじゃないだろ?大塚に相談したんだろ?」

「え?!」


「俺が弥生をしばらくほっておいたから、寂しかったんだろ?」

 そ、それはそうだけど。でも、まさか、オフィスで迫られるとは…。

「だから、俺をその気にさせるために、ガーターベルトつけたんだろ?」

「違います」


「違わないだろ。そういうつもりじゃなかったら、どういうつもりなんだ?」

 どういうつもりって言われても。

 一臣さんは、私の頬に手を当て、私の目をじっと見ながら聞いてきた。


「だから、その…」

 わあ。顔近い。目、見ていられない。心の奥まで見透かされそうだ。


 私が鴨居さんにやきもち妬いていたことも、自信をなくしていることも、凹んでいることも、全部見透かされそう。


「あの…」

 視線を下げた。すると、一臣さんが私のおでこに一臣さんのおでこをくっつけてきた。

「あ、あの…」

「寂しかったのか?」


 うわあ。いきなり、優しい声になった。ドキドキする。胸がキュンってなって、泣きそうだ。

「は、はい」

 嘘なんかつけない。そのうえ、一臣さんが私の頬を優しく撫でてきた。


 ドキドキ。

「俺に抱いてほしくて、ガーターベルトつけたんだろ?いいぞ。樋口に時間も空けてもらったし、今から2時間くらいはある」

「え?」


 うわあ~。押し倒してきた!!


「ダメです。こんなところで!」

「こんなところも何も…。会社で抱いてほしかったんだろ?」

「違います」

「だから、どう違うんだよ」


 うわあ。うわあ。スカート、また思い切りまくしあげてる!どどど、どうしよう。


「大塚さんが、A級グルメに飽きて、B級グルメを食べてみたくなって、それで私に興味を持ったけど、他のB級グルメに目がいっちゃって。それで、飽きられないようにするには、たこ焼きにソースと青のりだけじゃなく、マヨネーズが必要で」

 頭がパニックを起こし、私は必死になってそう言った。


「はあ?」

 一臣さんは上半身を起こし、思い切り片眉を上げて聞いてきた。


「だから、その、マヨネーズになるものが、ガーターベルトで」

「言っている意味がさっぱりわからん。もっと順序立てて説明しろ。なんでいきなり、グルメの話が出てきたんだ」

 一臣さんが起き上がったので、私もおたおたと上半身を起こした。そして、素早くスカートの裾を直し、足も揃えて座りなおした。


「ですから…。大塚さんが言うには、食べ物に例えると、一臣さんが今までお付き合いをしていた女性はA級グルメで、高級な食べ物に飽きた一臣さんは、庶民的な食べ物に興味を示して、えっと。だから、私はたこ焼きで、たこ焼きを食べてみたくなって…」

「たこ焼き…。ああ…」


一臣さんは私の頬を見て、なぜか頷いた。

「でも、そろそろたこ焼きにも飽きて、他のB級グルメに興味が出てきて、そっちに目移りしてて、それを阻止するためには、今までと違った何かをしないとダメなんだって、そういうわけで、ガーターベルトを勧められ…」

 なんとか、必死に私は説明をした。


「ふん。お前がたこ焼きか。じゃあ、他のB級グルメってのはなんだ」

「焼きそば…とか?」

「その焼きそばは誰なんだ」

「……か」

 口の中でぐにゅぐにゅと答えると、一臣さんは眉間に皺を寄せた。


「え?なんて今言った?もっと大きな声で言え」

「鴨居さん!…です」

 あ。思わず、ばらしちゃった。


「へ~~~~~え」

 一臣さんは、また片眉を上げた。それから、じとっと私を睨むように見ている。

「えっと…」

 怒ってる?呆れてる?それとも、なに?


「俺がお前に飽きて、鴨居に興味を示したってことか?」

「はあ…」

「で、鴨居を俺が食う前に、それを阻止するためにガーターベルトを着けて、気を引こうとしたのか」

「大塚さんのアドバイス…です」


 そこまで言って私は、やっぱり、とんでもないことをしているんだと思い、真っ赤になって俯いた。

「もう一回聞くが」

 そんな私の顎を持って、一臣さんは私の顔をじっと見た。


「俺がお前に飽きて、他の女に興味を示したって、お前も思っていたんだな?」

「それは……。こ、こんな私だから、飽きることもあるかもって、思っていました」

「こんな私?」

「へんてこりんで、みょうちくりんな私です」


「……で?」

 一臣さん、目が怖い。怒ってる?

「えっと。だから、もの珍しくて私にかまっていたけど、飽きちゃって、他の人に興味がいくこともあるかもって」

「もの珍しい?お前がか?へえ。そう思っていたのか」


「それは、前に久世君に言われて…。きっと、私がもの珍しかったんだろうなって、思いました。だって、今まで一臣さんの周りにいた女性は、皆綺麗で華奢で」

「へ~~~え。久世に言われたのか、そんなことを」

「……」


 やっぱり、相当怒っているみたいだ。


「なるほどな。お前は周りの奴の言葉を信用して、俺のことは信じていないってわけか」

「いいえ。あの…。信じたいけど、自信がないんです。一臣さんだって、目がおかしくなってて、私が可愛く見えるって言っていたし、いつか可愛く見えなくなったり、私に飽きたりしちゃうんじゃないかって」


「………」

 一臣さんが眉間に皺を寄せた。

「あの……」

「そうか。お前は、俺にあんなに愛されても、まったくわかっていなかったんだな」

「え?」


「愛し方が足りなかったのか?」

「え?」

 ドキン。何、それ…。


「俺がお前を愛しているってことを、疑う余地もないくらい、十分に体が理解すると思っていたんだけどな」

「わ、私の体が?」

「ああ。でも、まだ足りなかったか」

 ええ?!


 うわ~~~~~~。また押し倒された!

「あの、あの!!」

 待って。まさか、ここでするの?!


「今、俺が怒っているのわかっているよな?」

「は、はい」

「こういうのを、可愛さ余って憎さ100倍っていうのかもな」

「え?!」


「まさかお前が、そんなことを疑っているなんて思ってもみなかった」

「……」

 え?


 いきなり、一臣さんの目が悲しそうに暗くなった。さっきまで、呆れたような目つきをしていたのに。

「まったく、俺の思いが、お前に通じていなかったってことだよな?」

 ズキン。


 一臣さんを、悲しませてる?私が、疑ったりしたから。

「ごめんなさい」

「謝るな」


 ギュウ。一臣さんが私を抱きしめた。

「俺が、ずっとお前を嫌がって、他の女と遊んできたんだ。お前が俺をなかなか信用できないのも、無理ないんだよな」

 ズキン。


「あの、それは…」

「弥生…」

 一臣さんが私の耳にキスをした。それから首筋を舌でなぞってきた。

 うわ!


「弥生…」

 一臣さんの手が、スカートの中に入ってきた。どうしよう。なんだか、抵抗できない。

「か、一臣さん…」

 一臣さんが顔を上げ、私の目を見つめた。


 瞳の奥が、寂しげだ。すごく切なそうな目で私を見ている。

 キュン。

 思わず、私も一臣さんを抱きしめてしまった。


 ふっと一臣さんは、視線を私の唇に移すと、キスをしてきた。唇に触れるだけのキスをしてから、また唇を重ね、熱いキスをしてきた。


 キュキュン。

 胸の奥が痛くなるくらい、締め付けられた。


 ギュ。一臣さんの背中に回した手に力を入れた。一臣さんはまだ、私にキスをしている。私の下唇を吸い、唇を離すと、私を熱い視線で見つめた。

「他の女に、興味なんかない」

「……」


「弥生がいれば、俺はそれでいい」

 一臣さん…。

「お前に飽きるわけがない」

 そう言って一臣さんは、私の頬を撫でた。それから、私の頬やおでこにキスをすると、

「俺は、お前にしか惚れていない。この先もお前にしか惚れない」

と耳元で囁いた。


 ドキン!

「お前が大事で、可愛くて仕方がない。本当なら俺だって、お前のことをずっとそばにおいて、ずっとこうやって抱きしめていたいくらいだ」

 本当に?


「でも、今はそれができない。忙しくてなかなか、お前のそばにいることもできない」

「……」

「だけど、どんなに遅くなっても、お前がいる屋敷に帰って、お前の隣で寝たいんだ。お前の可愛い寝顔を見て、寝息を聞いて、ぬくもりを感じるだけで癒される」


 え?

「ぐーすか寝ているお前に、何度もキスをする。このふわふわした頬や、唇が俺を癒す。赤ん坊みたいに無垢なお前の寝顔が、可愛くて仕方がない」

 一臣さんは、私の頬やおでこや、鼻筋を撫でたり指でなぞったりしながら、そんなことを言った。


 私は聞いていて、胸がドキドキしたり、キュンキュンしたり、涙が出そうになっていた。

「弥生が可愛い。持て余すくらい、お前のことを思っている。それなのに、他の女に興味が行くわけがない」

「ほ、本当に?」

「本当だ」


「鴨居さんのこと、可愛いって思ったりしていないんですか?」

「思っていない。お前のことしか可愛いって思えない」

「でも」

 チュッと唇にキスをされ、言葉を遮られた。


「弥生が俺のフィアンセで、未来の奥さんで、ずっとお前が俺のそばにいるってわかっているから、俺は安心しているんだ」

「安心?」

「ああ。お前が俺のものだから。俺以外の誰のものにもならないし、お前がそばにいてくれたら、それだけで満足だからな」


「ほ、本当に?」

「嘘をついているように見えるか?これでもまだ、疑うのか?」

 そう言うと、一臣さんは私の耳たぶを噛んだ。そして、ブラウスのボタンを外しだした。


 ドキドキ。どうしよう。会社なのに、こんなことをしてもいいの?

 そんな思いがよぎる。だけど、抵抗できない。胸がドキドキしたり、疼いたり、喜んでいる。


 一臣さんは、私の服を脱がしながら、優しくキスをしたり髪を撫でたりしている。そして、自分のYシャツのボタンも外し、Yシャツをポイッと脱ぎ捨てた。

 一臣さんの胸がさらけ出され、ギュウっと抱きしめられた。肌と肌が直に触れ合う。


 いつの間にかスカートも脱がされていた。そして熱くキスをして、首筋から胸に一臣さんの唇が移動した。

 ビクン!体が反応する。でも、会社だから声を出すのを我慢した。

「声、出してもいいぞ、弥生」

 我慢しているの、ばれたんだ。


「でも…」

「俺の部屋は、防音だからな。隣にいる樋口にだって聞こえないぞ」

 そうだった。この部屋から外に、音が漏れることはなかったんだ。だけど、一臣さんに聞かれるのが恥ずかしい。


「なんだ?まだ、スイッチ入っていないのか?入っているんだろ?」

 そう言いながら、一臣さんは私の太ももを撫でた。

「ガーターベルトだから、ストッキングを脱がさないでもいいんだよな。楽だな…」

 え?


 スルスルッと一臣さんは、パンティを脱がしている。あ!思わず、手で脱がされるのを阻止しようとすると、一臣さんがキスをしてきた。舌が絡みついて、力が抜ける。脳みそも溶ける。

 唇を離されても、夢心地でトロンとしている間に、パンティを脱がされていた。


 ギュウ。私は一臣さんに抱き着いた。一臣さんのぬくもりや、コロンの香りに包まれて、寂しさも不安も吹き飛んで、幸せいっぱいになる。


「弥生、愛しているからな?」

 耳元で一臣さんがそう囁く。私はコクンと頷き、また一臣さんを抱きしめた。


 ここが会社だからとか、そんなことはどうでもよくなった。ただ、一臣さんがいて、私がいて。それだけで、胸が満たされる。


 私に触れる指も、唇も優しい。私、一臣さんに愛されているんだよね。すごく、すごく、愛されているんだよね。


 また、熱いキスをされ、もっと実感する。愛されていることを。



 一臣さんの部屋は静かだ。時計の音、冷蔵庫の音、それだけが聞こえている。外の騒音も何も聞こえない。

 

 一臣さんは、さっきから優しい目で私を見つめている。そして、耳元で、

「お前、色っぽいな」

と囁いた。


「え?」

 朦朧とした意識の中、私は聞き返した。

「今、かなりセクシーだぞ。なにしろ、ガーターベルトとストッキングだけだもんな」

 そうだった。他は全部脱がされちゃったんだった。いきなり、恥ずかしくなってきた。


「あ、あの。恥ずかしいから見ないでください」

 そう言って、慌てて起き上がろうとすると、一臣さんが私の胸にキスをして、起き上がるのを阻止された。

「か、一臣さん?」

 また、キスマークつけてる!


 チューっと長い時間キスをすると、一臣さんは唇を離し、

「うん。ばっちりだな」

と満足そうに言って、私を起き上がらせた。それから、ソファから立ち上がると、一臣さんはさっさと服を着だした。


 私もその隙に下着をつけ、ブラウスを着た。でも、一臣さんに後ろから抱きしめられてしまった。

「あの…」

「まだ、服を着るなよ」

 そんなことを言われても!


「ずるいです。一臣さんはもう、服を着ているのに」

 Yシャツのボタンはしていないから、胸がはだけているとは言え、スラックスもしっかりと履いている。

「いいから」

 一臣さんはソファに座ると、私を膝の上に座らせた。私はまだ、ブラウスを羽織ったまま。スカートだって履いていない。


「あ、あの。服着たいです」

「いいよな。ガーターベルトは」

 もう!人の話も聞いていない。

「ストッキングを脱がせるのは、けっこう面倒なんだ。だから、会社でエッチをする時は、やっぱり、ガーターベルトだよな」


「え?じゃあ、前にも付き合ってた女性に、ガーターベルトつけてもらって、会社でエッチ…」

「するわけないだろ。だいたいどこでするんだ。俺の部屋には、付き合ってた女だって入れさせたことがないのに」

「今日みたいに、応接室でとか」


「するかよ。今日は、つい欲情しちまったんだ。だいたい、応接室には監視カメラもあるんだし、女とエッチなんかするわけないだろ」

「え?!!まさか、14階の応接室にも?!」

「ああ。お前も見ただろ?監視室。あそこで、監視カメラの映像をチェックしているんだ」


 うそ~~~!!!

「じゃ、じゃあ、さっきの、一臣さんのセクハラ」

「セクハラじゃない!いちゃついただけだろ」

「そ、その映像も、見られちゃうんですか?」


「ああ。見られただろうなあ」

 嘘だ~~~~!!!!!

「そ、そんなの、困ります」

「なんでだ?弥生は俺のフィアンセだ。なんにも問題ないだろ?」


 そう言って、一臣さんは私を抱きしめながら、うなじにキスをした。

「うなじにもキスマークつけてもいいか?」

「ダメです!」

「なんだよ。いいだろ、別に」


 ああ。エロエロの一臣さん、復活だ。嬉しいやら、困るやら。

 だけど、こうやって、抱きしめてもらえるのはとっても嬉しい。





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