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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第11章 婚約の危機?!
162/195

~その14~ いちゃつける場所

 部屋に入ると、一臣さんが私の部屋のベッドに座っていた。

「龍二に何か言われていたのか?」

 ドキン。話し声、聞こえていたのかな。でも、Aコーポレーションのことを言ったら、余計なことを言いやがってって怒り出しそうだ。


 きっと、一臣さんが私に言わなかったってことは、私に余計な心配させたくないんだよね。


「いいえ。お母様と話をしていて、遅くなりました」

「おふくろが、何を言っていたんだ?」

「麗子さんと京子さんに、お詫びの手紙を書いたこととか…」

「そうか。おふくろがちゃんと、フォローしておいたんだな」


「……」

 なんだか、一臣さん、元気がないみたい。

「お疲れですか?早くジャグジー入って、休んだほうがいいかも」

「一緒に入るぞ」


 一臣さんはそう言って、私の手を引いた。

「じゃあ、パジャマと下着持っていきます」

「もう、持って行ってある」

「え?」


「お前遅いから、用意しておいた」

「すみません」

 でも、いったいどの下着を選んだんだろう。かなり気になる。そして、バスルームに行き、紐のパンティがパジャマの上に乗っかっているのを発見した。


「紐パンだ…」

 そう呟くと、

「ああ。まだ、お前がこのパンツ履いているのを見ていないからな」

と、一臣さんはふんぞり返ったまま、そう言った。


 う~~~~ん。このスケベ根性があるうちは、大丈夫かな。なんだか、疲れているように見えたんだけど。


 そして、また一臣さんに体も髪も洗ってもらい、私も一臣さんの髪や背中、お腹を洗い、

「お尻は無理です!」

と、タオルを一臣さんに手渡し、とっととバスタブに入った。


「あのなあ、俺は弥生の体ぜ~~んぶ洗ってやっているのに、お前はなんだって、俺の尻を洗えないんだよ」

「そんなこと言ったって、恥ずかしいものは恥ずかしいんです」

「なんでお前が恥ずかしがるんだ。変な奴だな」

 変じゃないよ~~~。そりゃ、背中とか、腕とかは、うっとりしちゃうけど、さすがにお尻は…。

 ちらっと、一臣さんのお尻を見た。


 ひゃ~~~。見ているだけで、ドキドキした。やっぱり、無理。


 でも、一緒にお風呂に入るのは、なんだか、慣れてきたかも。っていうか、この広いジャグジーバスに一人だけで入るほうが、だんだんと寂しくなってきたかも。


「は~~~あ。気持ちいいな」

 一臣さんがバスタブに入ってきてそう言った。

「はい」

 私の隣に座った一臣さんは、私の腰を抱いた。


「なあ、弥生」

「はい?」

「あれはいい作戦だっただろ?」

「あれって?」


「俺が京子に惚れていたけど諦めて、仕方なく弥生と婚約したって作戦だ」

 あ、それか。

「龍二の奴、本気にしたよな。あれなら、京子と結婚することに決めそうだし、弥生にちょっかいは出さないよな」


「はい。私のことなんか、きっとなんとも思っていないと思います」

「…だろうな。あいつが大阪に行くまで、また屋敷で弥生と仲の悪いふりをしないとならないが、まあ、こうやって風呂も一緒に入れるし、夜も一緒に寝れるしな」

「はい」


「だけど、あいつに傷つけられるようなことがあったら、俺に言えよ。いや、やっぱり、あいつには近づくなよ」

「はい」

「…頭が痛いことが、立て続けに起こってくるよな。あとちょっとで、お前と正式に婚約発表もするっていうのにな」


「大丈夫です。私だったら全然!」

 私はお風呂の中で、ガッツポーズをした。

「なんだよ、突然」

「いえ。何が起きても、一臣さんがそばにいたら、私は大丈夫ですって言いたかったんです」

「…そうか?」


 一臣さんは私の頬にチュッとキスをした。そして、私を抱きしめた。

 それから一臣さんは黙り込んだ。バスルームは、ジャグジーのブクブクいう泡の音だけが響いた。

 

「弥生」

「はい?」

「眠い…。今日はもう、寝てもいいか?」

「え?はい。勿論です」


「本当に?抱いてやれないけどいいのか?」

「…いいです。お疲れなんですよね?早くに休んでください」

「悪いな」

 えっと~~。期待も何もしていなかったんだけどなあ。


 お風呂から出て、バスタオルを腰に巻いたまま、一臣さんは髪を乾かしだした。どこかぼけ~~っと見ながら。相当疲れているのかな。

 私はその横で、自分で体を拭き、下着をつけた。


 キラン!

 ん?今、鋭い視線を感じたけど。


 パッと顔を上げて鏡を見ると、鏡越しに一臣さんが私を見ていた。それも、下半身を。

「そうだったな」

「え?」

「紐パンなんだな…」


 ガク…。それで今、目が輝いたわけ?さっきまで、焦点も合っていないくらい眠そうだったのに。


「弥生…」

「はい?」

「目が覚めたぞ。抱いてやれるぞ」

「い、いいえ。いいんです。お疲れですよね?どうぞ、休んでくださ…」


 って言っているのに、キスしてきた!まだ、一臣さんの髪は半渇きだし、私の髪も濡れたままなのに。

 でも、キスが気持ちよくて、抵抗できない。


 ズルズル…。体が崩れていく。冷たい床に横たわると、一臣さんが私の上に覆いかぶさってきた。

 そして、するっとパンティの紐を片方だけほどいた。


「……弥生って」

「はい?」

 とろりんと思考はすでにとろけていた。でも、どうせ一臣さんのことだから、嫌味でも言うんだろうなあと、覚悟だけはしていた。


 つつつー…。一臣さんが優しく、私の腰から太ももに向かって撫でた。

 ひゃう…。


「やっぱり…」

 やっぱり?

「感じやすいよな」


 ドキン!

 嫌味を言うのかと思ったら、そんなこと?

 

 するりと、もう片方の紐もほどいた。

 ドキ。ドキドキ。一臣さんが変なこと言うから、意識しちゃってドキドキしてきちゃった。それになんだか、恥ずかしい。


「弥生」

「は、はい?」

 今度は何?


「弥生…」

「はい?」

 一臣さんが私の腰にキスをした。

 ドキン!!!


 それも、腰から太ももにかけて、舌でなぞってる。

「ひゃ…」

 ドキドキドキ。


 一臣さんが顔を上げて、私の顔を見つめた。じいっと私を見ると、甘いキスをしてきた。そして耳元で、

「お前、やっぱり可愛いよな」

と囁く。


 はう…。その声にも言葉にもキスにも吐息にも、とろけてしまう。


 髪を優しく撫でる。私の体も優しく撫でる。キスも全部が優しい。ドキドキで体が火照る。

 ずっと、ずっと一臣さんを感じていたい。ギュウっと一臣さんを抱きしめた。一臣さんもそれに応えるかのように抱きしめ返してくれる。


 一臣さんに抱きしめられると、何もかもが消えていく。不安も心配も、すべてが…。


 

 床に寝そべったまま、動けないでいると、一臣さんが私を優しく起き上がらせてくれた。そして、

「髪、まだ濡れたままだな」

 そう言って、ドライヤーで私の髪を乾かしだした。


 ダメだ~~。私の髪を一臣さんが優しく触っている。それだけで、ヘナヘナだ。

 鏡にはまだ、全裸の私と一臣さんの姿が映っている。全裸のまま、髪を乾かしてくれている。すごく恥ずかしいはずなのに、まだ脳みそがとけているから、恥ずかしいっていう感覚も消えちゃっている。


 とろりん…。とろける目で、鏡に映る一臣さんを見つめた。なんて、素敵なんだろうって思いながら。

「お前、色っぽいな」

「え?」

「どんどん、色っぽくなってきたよな」


「私がですか?狸じゃなくなってきたんですか?」

「……」

 無言?


「今日は裸のままで、抱き合って寝るか?」

「はい」

 一臣さんはドライヤーを止め、私をひょいっとお姫様抱っこして、バスルームからベッドに連れて行ってくれた。


 ドサッとベッドに私を寝かせ、電気を消すと、私の隣に寝転がり布団をかけて、優しく私を抱きしめた。

「おやすみ、弥生」

「おやすみなさい」

 一臣さんがおでこに優しくキスをした。


「……」

 幸せだ~~~。一臣さんの優しい腕の中で、一臣さんのぬくもりを直に感じながら眠れるのって。


 ん?そう言えば、狸ですか?って質問に、なんにも答えてくれなかったなあ。まだ、狸からは進歩していないってことなのかな。


 そんなことを考えつつ、深い眠りについた。そして、夜明け間近に見た夢は、狸になった私が、ドナルドダックのぬいぐるみをかわいがっている一臣さんを、羨ましそうに見ているという、へんてこりんな夢だった。


 ああ。ドナルドダックに私もなりたい。って夢の中で思っていた。なんなんだ。鴨居さんのことを私は、そんなに気になっているのかな。深層心理、深いところの思いが、夢の中に現れたんだろうか。


 目が覚めると、まだ一臣さんは寝ていた。すーすーと寝息を立てて。

 寝ている一臣さんの顔は、無防備で可愛い。寝息も可愛い。時々寝ながら「ん、ん~~」と伸びをする。その声も可愛い。


 そして、一回私を抱きしめる手を離すのに、またすぐに私を抱きしめて一臣さんはクークーと可愛い寝息を立てて寝る。それが全部可愛い。


 愛しいなあ。そう思いながら、私も一臣さんを抱きしめる。そうするとなぜか、一臣さんは顔の位置をずらして、私の胸元に顔をくっつけて眠る。


 ますます可愛くなる。子供みたいだ、一臣さんって。

 髪をそっと撫でる。愛しさが増す。髪にチュっとキスをしてみる。一臣さんの頭が少し動き、「ん~」と声を出す。


 起きたのかなと思うと、まだまだ、一臣さんは深い眠りの中。


 どんな夢を見ているんだろう。私は夢の中に登場する?

「…た」

 ?なんか、寝言言ってるの?


「た…ぬきじゃない」

 え?

 私のこと?狸じゃないって言ってるの?


「…サーパンダ…だ」

 ……。

 もしや、狸じゃない。レッサーパンダだと言っているわけ?!


 どんな夢だ~~~!まったく!

 怒っている私のことなんか、寝ている一臣さんにはわかるはずもなく、すやすやとまだ私の胸で一臣さんは気持ちよさそうに寝ている。


「むにゃ…」

 また何か言ってる?何か言ったかと思ったら、私の胸に顔をむにむにと押し付けてきた。それから、私を抱きしめ、

「弥生…。食うぞ…」

と言って、ムチュ~~~と胸にキスまでしてきた。


 あ!起きているのか!いつの間に?

「一臣さん?」

「ん、ん~~~~~~~~…。ク~~~~~」

 寝てる…。まさか、今のも寝言?夢の中で、スケベなことしているのかも。


 ブルルルルル!

 その時、アラームが鳴った。一臣さんは、手をニュッと布団から出すと、反射的にアラームを止めた。

「うるさいな。弥生を食うところだったのに」

 一臣さんがぼそっとそう言った。


「お、おはようございます」

「ん~~~。……夢か。いや、現実か?」

 一臣さんが目をこすりながら私の顔を見た。


 そして、私の胸元を見ると、なぜか私の胸にキスをしてきた。

「一臣さん?」

 チュ~~~。とキスをしてから、

「あ~~。夢か。夢の中で、弥生を裸にして食うところだったんだ。もう、朝なんだな?」


「はい。月曜日の朝です。起きて、会社行かないと」

「あ~~~~あ。もう一回、弥生を抱きたいのに」

「む、無理です」

「だよなあ。もう7時だしなあ」

 

 一臣さんはそう言うと、ようやく私から離れて腕を伸ばし、思い切り「う~~~~ん!」と伸びをした。

「はあ。良く寝た。そうだ!思い出した。夢の中で、レッサーパンダと寝ていたんだ。隣を見たら、可愛いレッサーパンダが寝てて、ああ、やっぱり、弥生はレッサーパンダだったんだなあと、しみじみ思っているっていう変な夢を見たぞ」


 ああ。そうですか。狸じゃなくて、レッサーパンダなんですね。それって、昇格してるんですか。でもまだ、動物どまりなんですね。


 クルリと一臣さんは私を見た。そして、チュッとキスをすると、

「可愛いなあ、お前は」

と一言言って、そしてベッドから裸のまま出て、また「ん~~~!」と伸びをしながらバスルームに消えて行った。


 か~~。顔が一気に火照った。朝から「可愛い」と言われるとは思わなかった。

 でも、一臣さんも、寝ている時から可愛かったです。そう言ったら、どうするかなあ。


 幸せな時間だった。だけど、会社に行ったらそんなこと言っていられないよね。

 ううん。この部屋を出た時から、龍二さんがいるんだもん。二人でべったりしてもいられなくなるし、きっと一臣さんは急に別人みたいになるんだよね。


 はあ。ちょっと、いや、かなり寂しいかも。

 でも、この部屋にいる間は、まだまだいちゃついていられるんだよね。甘い一臣さんのままなんだよね。


 私は、下着もパジャマも、バスルームに置いてきたから、取りにいった。バスルームのドアをノックすると、中から「入っていいぞ」と一臣さんの声が聞こえ、ドアを開けた。


「あの、下着、取りに来ました」

 ドアから顔だけ覗かせてそう言った。一臣さんは、バスローブを羽織っていた。

「入って来いよ」

 ぐいっと手を引っ張られ、中にいれられた。うわわ!私、まだ全裸なのに。


「か、一臣さん?」

 ギュウっと後ろから抱きしめられた。きゃあ。鏡に映ってるよ。

「あ、あの、あの!」

 恥ずかしがっていると、

「お前、スイッチ入ると、恥ずかしがることもなくなるのになあ。スイッチ入っていないと、なんでこんなに恥ずかしがるんだよ」


「だ、だって」

 きゃあ!後ろから胸、触ってこないで。鏡に丸見え。

「もう、会社に行く準備をするんです」

「まだいいだろ。この部屋でしかいちゃつけないんだから、もうちょっといちゃついていても」


 そうだった。一歩廊下に出た時から、一臣さんとは、距離を置かないとならないし、仲悪いふりをしないとならないんだった。


 チュ~~~。一臣さんが私の背中にキスをした。それからまた、私のお腹に両腕を回してぎゅうっと抱きしめてきた。


「ああ。可愛いよなあ、お前は」

 また言った。

 それから、チュ、チュ、とうなじや首筋にキスをして、耳を甘噛みした。


 ひゃあ、ひゃあ。感じちゃうからやめて。


「会社に行かないで、弥生といちゃついていたいのにな」

「だ、ダメです。行かないと」

「わかってるよ。面倒くさいことがいっぱいあるから、それをどうにかしないとならないことも」


 一臣さんはそう言ってから、深いため息をついた。

「ああ、面倒くさいよなあ。あの、瑠美って女のことも未解決だし、龍二もやっかいだし、会社でもゴタゴタあるし」

 そう言うと、また私をぎゅうっと抱きしめる。


「お前、柔らかいし、あったかいな」

「……」

「それに、いい匂いもするし」

 ひゃあ、ひゃあ。鏡、見てられない。恥ずかしくて目を閉じた。


 しん。一臣さんの動きが止まった。どうしたんだろう。気になり目を開けた。すると、鏡に映った私の姿を、一臣さんがじいっと見ていた。私のお腹にあった一臣さんの手も、離していた。


「あ、あの?」

 私は恥ずかしくて思わず、胸を手で隠そうとした。でも、その手を一臣さんは握りしめ、隠せなくなった。

「隠すなよ。今、じっくりと見ていたところなんだから」

「ななな、なんでじっくりと見ているんですか?」


「脳裏に焼き付けているんだよ。なんか、嫌なことがあったら、弥生の裸思い出せるように」

「はあ?」

「弥生の裸思い出して、弥生を抱くこと考えて、それを励みに嫌なことも乗り切ろうかなあと…」

 なんなんだ。それ。


「うん。ばっちり脳裏に焼き付いた。これで、今日は持ちこたえられそうだな」

 そう言ってくるっと私を一臣さんのほうに向けると、熱いキスをしてきた。

 ひゃ~~~。ダメ。腰抜ける。


 ガクガクと足が震えた。そんな私の腰を一臣さんは抱きしめ、唇を離すと、

「うん。これで、力も出てきた。さ。お前もとっとと着替えて、顔洗って来い。朝飯食うんだろ?多分、おふくろも龍二もいないと思うが、龍二がいたら、あまり口をきくなよ」

と、ひょうひょうとした表情でそう言った。


 もう~~。何がとっとと着替えろよ。腰が抜けるようなキスをしたくせに。

 下着を持って、よろよろとバスルームを出た。一臣さんは、上機嫌な顔つきで、鼻歌交じりに髭を剃っている。


 でも、私も、いちゃつけて嬉しいんだよね。本当は。

 熱いキスまでしてもらって、心の奥では喜んでいるもん。


 ヘナヘナとしながらも、どうにか自分の部屋に辿り着き、下着をつけて、服を着た。

 顔を洗い、髪をとかし、

「さあ。行くぞ」

と気合を入れて、私は部屋を出た。


 龍二さんに会っても、大丈夫なように、頬を軽くたたき、廊下を歩いて行った。




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