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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第11章 婚約の危機?!
158/195

~その10~ ぬくもりの中で

 一臣さんと私は、裸のまま眠りについた。疲れていて、シャワーを浴びることすら二人ともできなかった。


 翌朝、ぎゅうっと後ろから一臣さんに抱き着かれ、目が覚めた。

「一臣さん?」

 寝ているのかな。それとも起きたの?

「珍しく…」


「?」

 珍しくって今、言ったかな。

「二日酔いだ」

「え?一臣さんが?」


「飲み過ぎた。少し頭痛がする」

「大丈夫ですか?」

「ああ。弥生、シャワー浴びに行くぞ」

 そう言って一臣さんは静かにベッドから出ると、なぜか私の手を引いてバスルームに入って行った。


 あわあわ。私も一臣さんも素っ裸なのに。

「頭、痛い。弥生、俺の髪、洗ってくれ」

 へ!?

「あ、はいっ」


 スイートルームのバスルーム。普通のユニットバスとは違い、バスタブとは別にシャワールームがついていた。そこには、ちゃんと小さな椅子もある。そこに一臣さんは腰掛けると、頭を前に下げた。


 私はシャワーを出して、一臣さんの髪を濡らし、シャンプーをつけた。わあ。なんか、なんか、ドキドキしちゃう。

「頭、痛くないですか?」

「動かさなければ痛くない」

「じゃ、じゃあ、なるべく静かに洗いますね」

「うん」


 黙って一臣さんはじいっとしている。なんだか、可愛い。

 

 髪を洗い終え、タオルで一臣さんの頭をゆっくりと、優しく拭いた。

「…弥生、体も洗ってくれ」

 え?!そ、そ、それは…。


 きゃわ~~~~~~~。どうしよう。恥ずかしい。でも、洗いたい。

「は、はい」

 ドキドキしつつ、タオルに石鹸をつけて一臣さんの背中を洗い出した。

「くすぐったいな」

「ごめんなさい」

「いや、いい…」


 わあ。一臣さんの背中、広い。肩幅も広いし、肩甲骨が色っぽい。それから腕、筋肉が引き締まってる。

 だ、ダメだ。洗いながらもっとドキドキしてきたかも。


「あ、あの。背中と腕、洗えました」

 そう言うと一臣さんは、すっくと立ち上がり、私のほうを向いた。

 えっと。何も言わないで私のほうを向いているのは、前も洗えということだよね?


 ドキドキ。ドキドキ。

 一臣さんの胸やお腹を洗った。で、でも、その下は…。それからお尻とか、どうしよう。


「あ、あの…」

「足は?」

 ひょえ~~~。やっぱり私に洗えということか!

「悪いな。かがむと頭痛がするんだ」


 一臣さんはそう言って、仁王立ちしたままだ。仕方ない。洗うとするか。

 ドキドキ。うわあ。一臣さんの足も筋肉質なんだ。ふくらはぎとか、固いんだ。


 くらくら。ドキドキを通り越してクラクラ眩暈がしてきちゃった。


「お、お、お、お尻は、無理です!ごめんなさい」

 私はそう言って、さっさと一臣さんの体にシャワーをかけた。

「しょうがないな」

 そう言って一臣さんは、私からシャワーを取り上げ、なぜか私の体にかけ始めた。


「あの?」

「洗ってやる」

「大丈夫です。それに、頭痛がするんですよね?」

「治った」


 え~~~~!もしや、仮病…。じゃなくって、二日酔いのふりをした?


「自分で洗えます」

「洗ってやるって言っているんだから、大人しくしていろ」

「……ひゃ!」

 胸はくすぐったい!


「感じてるなよ」

 そんなこと言ったって!

 ギュウ…。

「一臣さん?」


 なんでいきなり、抱きしめてくるの?

「やばい。その気になってきた」

「だ、ダメです」

「わかってる。さすがに、頭痛もするし、我慢するけどな」

 あれ?本当に頭痛していたの?じゃあ、治ったっていうのが嘘?


 そのあとも一臣さんは優しく、私の体と髪を洗ってくれた。

 思わず、うっとり。特に髪、なんだってこうも優しく洗ってくれるんだろう。触れる指が本当に優しい。


「ほら。髪は自分で拭けよ。先に出てていいぞ」

「え?」

「俺は、お前が洗い残したところを洗ってから出るから」

 あ。お尻とか、股間とか…。

「はい」


 申し訳ないです。さすがに、そこは無理です。と心の中で謝りつつ、私は先にシャワールームを出た。

 そして、体や髪を拭き、バスローブを羽織り、ドライヤーで髪を乾かしだした。


「ふわ~~。さっぱりした」

 そう言いながら一臣さんは、シャワールームから出てくると、

「そういえば、お前、昨日夕飯も食ってないし、相当腹減ってるんじゃないのか?」

と私の横に来て、聞いてきた。


「はい。空いてます」

「だよな。大食漢のお前が、一食抜くなんてありえないことだよな?」

「大食漢じゃないですからっ」

 もう、いつも失礼な!


「弥生」

 また一臣さんが私を後ろから抱きしめてきた。それも、腰にバスタオルを巻いたままの姿で。

「は、はい?」

 そのたび、ドッキリしているのになあ。


「俺は弥生が食えれば、それでいいんだけどな」

「頭痛しているんですよね?」

「ああ」

「じゃあ、オレンジジュースとか飲んだほうがいいですよ」

「そうだな。ルームサービスを頼むか」

 そう言って一臣さんは私の頬にキスをすると、じっとなぜか私の顔を見てきた。


「?」

「弥生、こっちを向け」

 あ。もしかして、大人のキスをしてくるとか!?なんて、ドキドキしながら一臣さんのほうを向くと、

「むに~~」

と、ほっぺたを両側引っ張られた。


「い、いひゃいでふ…」

「なんだよ」

 一臣さんは手を離し、

「お前のほっぺた、硬いんだな」

と言い出した。


「え?」

 ほっぺたを手でさすりながら聞き返すと、

「カモのほっぺたは、すごく伸びたぞ。ぐに~~んと伸びて、口がアヒルそっくりになるんだ」

と一臣さんは、わけのわからないことを言った。


「カモがアヒル?」

 ???

「鴨居のことだ」

 鴨居さん!?


「面白いぞ。あいつ、ドナルドダックのまねもうまいんだ。見た目もドナルドダックに似ていると思わないか?」

「え?」

「けっこう、あいつ、からかいがいがあって、面白いよな。ははは」

 笑いながら一臣さんは、バスルームを出て行った。


 鴨居さんが、ドナルドダックで、私は狸の置物?

 どう見たって、どう比べたって、ドナルドダックのほうが可愛い!

 それに、いつの間にそんなに鴨居さんと仲良くなっているの!?


 ドッスーーーーーン。久々に、頭上に岩…、落ちてきた。


 落ち込みながら、バスルームを出た。一臣さんは、ルームサービスを頼むと、バスルームに入り、髪をドライヤーで乾かしだした。


 なんとなく、気分が重い。まだ、上がってこない。


 ルームサービスが来て、朝食を食べても、気持ちは上がらないまま。

「等々力に着替えを持って来させるぞ」

「はい。あ、いえ。私はいいです。着物をまた着ます…」

「なんでだ?窮屈だろ?洋服を着たらどうだ」

「でも。下着、ないし」


「………」

 一臣さんが、オレンジジュースをゴクンと音を立てて飲みつつ、目を丸くして私を見た。

「あ、そうか。着物の時は下着つけないんだったな。ってことは、今、ノーパンか」

「…」

 しまった。ばらしちゃった。


「下着も持ってきてもらえばいいんじゃないのか」

「い、いいです。なんか、恥ずかしいし。着物、自分で着れると思うし…。多分」

「そうか?」

 一臣さんは残っていたオレンジジュースも飲み干すと、携帯を取り出し、等々力さんに電話をかけた。


 そして、もしかして、襲ってくるかもと身構えていたけれど、特に襲ってくる様子もなく、ソファにくつろぎながら、新聞を読み始めた。

 あれ?ノーパンと聞いて、反応していたのに、襲う気はないんだな。


 って。だから、私、がっかりしていない?襲ってほしかったわけ?

 でも…、ちょっといちゃいちゃしたかったかも。じゃないと、鴨居さんのことを引きずっちゃって、気分が上がってこない。


 まさか、私から一臣さんの膝の上とか乗ったりできないし。だいいち、私今、下着もつけていないし。こんな恰好で膝の上に乗ったりしたら、絶対に誘っていると思われちゃうし。

 でも、もうちょっと、いちゃいちゃ…。


 じっと、一臣さんを見てしまった。

「弥生、食い終わったんだったら、そろそろ着物を着たらどうだ?着物を着るのは、時間かかるんじゃないのか?」

「………。はい、じゃあ、着替えます」

 ガッカリ。


 素直に甘えてみたら良かったのかな。なんて思いつつ、隣の部屋に着物を持って移動した。

 はあ。まだ、気持ちは上がってこない。なんだって、一臣さんのこととなると毎回毎回、こうなっちゃうんだろう。


 バサッとバスローブを脱ぎ、裾よけを腰に巻いた。それから、肌襦袢を着て、長襦袢を羽織っている時に、視線に気が付き、後ろを振り返った。

「あ!」

 隣の部屋に続くドアのところに、一臣さんがもたれかかりながら、私をじいっと見ていた。


「い、いつからそこに?!」

「弥生が、バスローブをばさっと脱いだ時からだ」

 ぎゃあ!着替えているところを見られてた!気づかなかった!


「和服はいいな。脱がすのもいいけど、着ているのを見ているのも、そそられる」

 はあ?!

「それ。長襦袢って、やっぱり、色っぽいよな。お前、絶対にバスローブより、そっちのほうが色気がでるぞ」

 ええ?もう、何を言い出すんだか。


 一臣さんは私に近づいてくると、私の両肩を掴み、胸元にキスをしてきた。

 チュ~~~。とキスをして、顔を離すと、

「うん。俺のマークもつけとかないとな」

と、にやつきながらそう言った。


 あ。また、キスマーク…。

 半分、呆れた。だけど、喜んでいる私もいる。


「弥生…」

 するっと一臣さんが、裾よけの隙間から手を入れてきた。

「ひゃ!」

 太もも撫でてきた!


「だ、ダメです。今、着ている最中です」

「脱がしていいか?」

「だから、着ているんですってば。あ!」

 唇、ふさがれた。


 わあ。大人のキス!


「言っただろ?俺は弥生を食えたら、それでいいんだ」

 ドサ…。そのまま、ベッドに押し倒された。そして、着ている長襦袢を一臣さんは脱がし、肌襦袢まで脱がし、裾よけの裾をまくってきた。

 まさかと思うけど、長襦袢まで着るのを待って、脱がしにきたの?


「食うぞ?いいよな?」

「……はひ」

 一臣さんの熱い視線を感じて、すでに私はとろけていた。

 ううん。きっと、一臣さんのぬくもりをまた、感じたかったんだ。


 一臣さんの腕の中に抱かれている時は、他の女の人のことも忘れられる。安心の中にいられる。

 不安も、もやもやも一気に吹き飛ぶ。


 ああ。ずうっと、ずうっと、一臣さんの腕の中にいられたらいいのに。

 ギュウ。一臣さんを抱きしめた。離れたくなくて、必死にしがみついた。


「弥生?」

 一臣さんが、耳元で囁いた。

「どうした?」

「…ぎゅって、抱きしめたいだけです」


「なんだよ。弥生も、俺に抱かれたかったんだな?」

 私は何も答えなかった。その代り、もう一回、私はぎゅうっと一臣さんを抱きしめた。


 チュ。チュ。と一臣さんが私の耳や首筋にキスをした。

「一臣さん…」

「ん?」

「瑠美ちゃんと、婚約したりしないですよね?」


「俺がか?するわけないだろ。だいたい、瑠美って女の処女を奪ったのはトミーなんだから、あいつが責任とって結婚すりゃいいことだろ?」

「…だ、大丈夫ですよね?」

「心配するな。だいいち、上条家の家訓に従うんだったら、俺はお前と結婚しないとならないんだからな」


「え?」

「俺がお前の処女、奪っちゃったんだから、責任取らないとならないだろ?」

「あ、はい」

「ちゃんと、責任とって結婚するよ。だから、安心しろ」


「……」

 黙っていると、一臣さんが私の顔をじいっと見つめてきた。

「安心しろ。誰にもお前と俺との結婚、邪魔させたりしないから」

「はい」


「ちゃんと俺が、守ってやるから」

「え?」

「心配するな。いいな?」

「はい」


 ギュウ。一臣さんも私を強く抱きしめてきた。


 このまま、ずうっと抱きしめていてほしいなあ。一臣さんの温もりの中で、そんな思いがどんどん強くなっていった。




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