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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第10章 甘いフィアンセ
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~その14~ 甘美な世界へ

 翌朝、薄ぼんやりと目が覚めた。まだ、頭がぼ~~っとしている。

 あれ?布団だ。ふかふかの布団で寝てる。っていうことは、ここは家かなあ。まだ家にいるんだっけ?私。


 違う。私、一臣さんのお屋敷に戻ったんだよ。

 そんなことを思いながら、顔を横に向けると、そこに人肌があった。

 あ、一臣さんだ。そうだよ。一臣さんの腕の中にこうやっているじゃない。あれ?でも、なんで一臣さんのコロンの匂いがしないの?


 って、私、まさか、知らない人の腕の中で寝ているわけ?!

 バチ!思い切り焦って目がしっかりと覚め、私を抱きしめている人を確認した。

 あ。やっぱり、一臣さんだった。


 でも、いつものコロンは?

 あ、そうか。昨日、露天風呂に入った後、すぐに和室に来たから、一臣さん、コロンつけていないんだ。

 

 …………。

 どわ~~~~~~~~~~~~~~~!!!なんか、昨日のことを思い出しちゃって、顔から火、出た!

 昨日の私、とんでもないこと言っちゃった気がする。それに、それに、それに…。

 露天風呂で、思い切り一臣さんといちゃついた!!


 それに、露天風呂で私がのぼせそうになると、一臣さんはバスタオルを持ってきてくれて、私の体を拭き、お姫様抱っこをして和室まで運んでくれた。そうして、布団に寝かされ、そのあとも思い切り愛されちゃったんだ!!!


 きゃわ~~~~~~~~~~~!

 今、思い出しただけでも、顔が熱い。


「ん…」

 一臣さん、起きたのかな。今、ちょっと頭をもぞもぞっと動かして布団に潜り込んだ。と思ったら、なんでだか、私の胸に顔をうずめて、またスースー寝ちゃった。


 可愛い。思わず、一臣さんの癖のある髪を撫でた。

 わあ。愛しい!


 きゅわん。

 

 って、何を一臣さんの頭を私は撫でているんだ。一臣さんってば、朝っぱらから私の胸に顔をうずめて寝ちゃっているっていうのに。

 でも、このままでいたい。ちょっと胸が一臣さんの息がかかってくすぐったいけど、小さな子供を抱きしめているみたいで、とっても可愛いんだもん。子供がいたらこんな感じかな。


 ほわわん。


 幸せ気分に浸っていると、もぞもぞっとまた一臣さんの頭が動いた。と思ったら、いきなり私の胸に頬ずりをして、そのあとチューっとキスまでしてきた。


「あ…」

 何で胸揉んでるの?思わず声出ちゃったよ!

「一臣さん、ダメです」

 そう言っているのにやめようとしない。

「か、一臣さん、起きてるんですよね?」


 これ、寝ぼけているんじゃないよね。

「気持ちいいんだろ?」

 起きてた!っていうか、朝っぱらから何を聞いてくるんだ。

「も、もう!朝っぱらから何をしているんですか」


「今日は工場の視察も午後に1件だけだし、チェックアウトの時間まで、いちゃつくぞ」

 え~~~~~~~~~~!  


 一臣さんはようやく顔を私の胸からあげると、

「スイッチ、俺が入れていいんだろ?」

とにやついた顔で聞いてきた。


 そうだった!!そんなとんでもないことを私は言っちゃったんだった!恥ずかしい!!

 なんで、あんなこと口走ったんだろう。

「甘美な世界、朝から連れて行ってやるぞ」


 ぎゃあ。

 朝から、とんでもないこと言わないで、一臣さん。でも、それも私が昨日、口走った言葉だ。


 なんで、私はそんなとんでもないことを言ったんだ。恥ずかしげもなく。


「それとも、また露天風呂でするか?」

「い、いえいえ」

「そうだな。もしかすると今頃、隣の隣で菊名が入っているかもしれないしな。そうしたら、声、聞かれたらやばいもんな」


「こ、声は出しませんけど、とにかく、朝からそんなことしません」

「声出さないだと?」

「はい」

「出しただろ。昨日の夜は、しっかりと」


 ぎゃ~~~~~~~~~。やめてくれ。それも思い出したくなかった。顔から、何度も火を噴いている気がする。


 あれ?また布団に潜り込んだ。

「あ!」

 また胸にキスしてる!もう~~~。

「起きましょうよ、一臣さん。朝ご飯運んでくるかもしれないですよ」


「運んでこない」

「え?なんで?」

「朝飯はいつも食わないって言っておいたから」

「私が食べます!」


「俺はいらない。弥生を食べるから」

 だから~~~。私が朝ご飯を食べるんですってば。って、また胸揉んでる?

「ダメです!」

「何でダメなんだよ」


 もぞもぞっと一臣さんは、顔を布団から出した。

「だって…」

「疼いちゃうからか?」

「はい」


「別にいいだろ?」

 そう言って今度は耳にキスをしてきた。

「ひゃ…」

 また、耳たぶ噛んだ。


「弥生…」

「え?」

「そろそろスイッチ入っただろ?」

「い、いいえ」


「なんだ。まだか…」

 そう言うと、今度は首筋にキスをしてきた。う。ひゃあ!舌でなぞるのはやめて!

「か、一臣さん」

 ダメだ。これはもう、やめてくれそうもない。しっかりと私の指に指まで絡ませている。


「弥生」

 顔をあげ、一臣さんが私を見つめた。うわあ。もう熱い視線になっちゃってるよ。そして、熱いキスをしてきた。

 くら…。眩暈がするくらい、一瞬にして溶けた。


 唇を離して、一臣さんは私を見つめた。そして、

「あ、その目だ。完全にスイッチ入っただろ」

と言って、またキスをしてきた。


 とろん。


 朝から、すっかりとろけてしまった。




「弥生、大丈夫か?起きれるか?」

 布団にうつっぷせて、朦朧としていると、一臣さんが私の背中にキスをして聞いてきた。

「へ?」

「汗かいたから、シャワー浴びるぞ。そのあと、露天風呂に入るぞ」


「え?ろ、露天風呂でまた?!」

「しない。さすがに俺も、そんな余力残ってない。ただ、自然見ながら入るだけだ」

 よ、よかった。

「夜は景色なんか見えなかったけど、朝なら見えるだろ。ちょっと曇っていそうだけど、曇っているくらいがちょうど良さそうだしな」


「はい。でも、もうちょっと」

「ん?」

「まだ、腰ぬけてる」

「まったく。しょうがないな」


 誰のせい?と思わず言いそうになった。

 つつー…。

「ひゃ!」

「背中指でなぞっただけでも、気持ちいいのか」


「や、やめてください」

「…今だから感度がいいのか?それとも、前より感度が上がったのか?」

 なんの感度よ~~。変なこと聞いてこないで。

「なあ、どうなんだよ」


「知りません!」

「ふうん。教えないなら」

 そう言って、今度は背中を舌でなぞってきた。


「一臣さん!」

「また、スイッチ入ったか?」

「入っていませんけど、でも、ダメ」

「で。どうなんだよ」


「きょ、今日がきっと特別です」

「感じやすい日だったのか」

「……え。えっと。多分、その」

「俺にあれだけ愛されたら、感じやすくもなるってもんか」


 もう~~~~~~~~~~。変なことばっかり言ってないで。

「先にシャワー浴びててください。私もあとから行きます」

「わかった」

 一臣さんはようやく立ち上がり、すたすたと部屋を出て行った。


 ああ。もう。なんだって朝からスケベ親父になっているんだ。

 ぐったり。なんか、起き上がれない。疲れてるっていうか、くたくたになっている。マラソンでもしたあとみたいに。


 マラソンしているようなものなのかな。もしかして。それも、昨日の夜から。

 でも、起きないと。あんまり遅いとまた一臣さんがへそ曲げそう。

 

 どうにか布団から起き上がり、浴衣を着ようとした。でも、ない。

 あ。そうか。パウダールームで脱いだまんまだっけ。


 裸のまま小走りでパウダールームに行った。一臣さんはすでにシャワーを浴び、露天風呂に入っているようだ。

 急いで私もシャワールームでシャワーを浴びた。そして、ガラス張りのシャワールームから、露天風呂のほうに目を移すと、しっかりと一臣さんが露天風呂に入って、私のほうを見ていた。


 ひゃあ!丸見えだった?なんか、一臣さんの目、にやついているけど。

 うわ。恥ずかしい。

 私はすぐにシャワーを止め、タオルで体の前を隠して、そっとドアを開けた。


「なんで、隠すんだか」

 一臣さんがそう言って、片眉をあげて私を見ている。

 恥ずかしいもん。と口だけ動かして私は言うと、ゆっくりと露天風呂に近づいた。


「早く入れよ。気持ちいいぞ」

「はい」

 そっと露天風呂に入った。あ、本当だ。気持ちいい。


 そよそよと吹く風も気持ちよかった。それに、渓谷を流れる川のせせらぎ。そして、どこからか聞こえてくる鳥のさえずり。

「ふわ~~~~~~~。気持ちいいですね~~~~~」

 そう言いながら、空を見上げた。空は曇っていたけれど、でも、やっぱり気持ちいい。


 木々の青、葉っぱが揺れる音。

「ああ。気持ちいいな」

 そう言って一臣さんは私に近づくと、私の肩を抱いた。


「きょ、今日は、エッチなことはしないんですよね?」

「してほしいのか?」

「違います。期待したわけじゃ…」

 私が慌てて首を振った時、

「あ~~~。気持ちいい~~~!」

という、菊名さんの声が聞こえてきた。


「あ…」

 一臣さんと目を思わず合わせて、二人で黙り込んだ。菊名さんも、露天風呂に入ったんだな。

「あいつ、こんな時間に呑気に風呂入ってて、大丈夫なのかよ」

 一臣さんはそう呟いた。


「そういえば、今、何時ですか?」

「部屋の時計は、9時近かったぞ」

「え?そんな時間?」

「ああ。多分、7時過ぎくらいに起きて、それから2時間近くお前と甘美な世界に行っていたから」


 え?!

 もう!なんだって、そういう恥ずかしい表現をするわけ?わざとだよね?


「綱島さ~~ん。お風呂入っています~~~?」

 菊名さんの声が聞こえた。そのあと、遠くのほうから「入ってるよ」と言う綱島さんの声も。

「気持ちいいですね!」

「気持ちいいな」


 二人でお風呂に入りながら、会話をしているのか。

「あいつら、呑気だな。まだホテル出発しないでもいいのかよ。本当に工場の視察行くのか?まさか、嘘ついて温泉に入りに来たんじゃないだろうな」

 いえいえ。人のことは言えません。二日目の視察は午後に一か所。ほとんど温泉目的で、ここに来たんじゃないかっていうのは、一臣さんのほうです。


「一臣様も入っていたりして」

 菊名さんのそんなるんるんする声が聞こえてきた。すると、

「一臣様~~~」

と、こっちに向かって呼んでいる声までしてきた。


「やめろって、菊名」

 遠くから、綱島さんの焦ったような声も。

「いいじゃない。一臣様~~。お風呂入っていませんか~~~?」


「うるせえやつだな。静かに自然を満喫していたのに、台無しだな」

 一臣さんが眉間にしわを寄せ、そう呟いた。

「か・ず・お・み・さま~~~!」

 もっと菊名さんは大きな声を出した。


「うるさいぞ!菊名!静かに風呂に入っているんだから、叫ぶな!!!!」

 あ、とうとう我慢できなくなったのか、一臣さんがそう叫んでしまった。

「おはようございます!一臣様も入っているんですね!気持ちのいい朝ですね!」


「お前らは早く、工場の視察に行け!」

「まだ、大丈夫です。11時のアポだから!」

 菊名さんの声が大きくなった。もしかすると、聞こえやすいようにお風呂から出て、こっちの部屋に近づきながら言っているのかもしれない。


「一臣様もまだ、行かなくていいんですか?」

「うるさい。静かにしろ」

 一臣さんはまた、声を大にしてそう言った。


「朝ご飯はもう食べましたか?あとでラウンジでコーヒーでもどうですか?」

「菊名、懲りないやつだな。あいつには、学習能力がないんじゃないのか」

 一臣さんは小さな声でぼそっと言うと、はあ、とため息をついた。


 そして、

「うるさい。静かにしろ。コーヒーなら部屋で飲む。今、弥生と静かに風呂に入っているんだよ!邪魔するな!!」

と、またとんでもないことを言ってしまった。


 う、ひゃ~~~~~~~~~~~~~。私と入っているってばらした!

「上条さんとですか?」

 菊名さんがそう聞いてきた。

「そうだ!自然満喫しながら、ゆっくりと入りたいって弥生が言うから入っているんだ。だから、黙れ!静かにしていろ!」


 わあ。わあ。わあ。もう、顔から火が出そう。

 でも、お風呂でいちゃついているって言われるより、まだ、ましかなあ。


 し~~~~~~~~~~~~ん。一気に静かになった。そのあと、ガラガラという、ガラスを開ける音と閉める音が聞こえてきたから、菊名さんは部屋に戻ったのかもしれない。


「ふん。ようやく静かになったな」

「…はい」

 もう。あんなこと声張り上げて言わないでよ。


「ふわ~~~~~~~~~~~~。気持ちいいな。もうしばらく、入っていような?弥生」

「…はい」

 私は一臣さんの肩にもたれた。


「弥生」

 一臣さんが私を優しい目で見た。

「はい」

「お前、寝癖ひどいぞ。あとでちゃんと直せよな」


 ………。

 もうちょっと、ムードあることを言うのかと思ったのに。

 確かに、鏡で見たら、すごい寝癖だったけど。でも、それを言ったら一臣さんだって、後頭部、はねまくっている。


 でも、いっか。

 そんな寝癖すら可愛く見えちゃうんだから。


「私の寝癖、そんなにみっともないですか?」

「ん?」

 一臣さんが、一回視線を前に向けたのに、また私のほうを見た。それから、優しい目をすると、

「いいや。可愛いぞ」

とそう言って、チュっと鼻の頭にキスをした。


 やっぱり。優しい目で見ている時は、そんなことを思っていてくれている時なんだな。

 嬉しい。

 ぎゅっと一臣さんの胸に抱き着いた。


「あ、スイッチ入っちまったのか?でも、俺はもう無理だぞ」

「入っていませんから。ただ、ぎゅってしたかっただけです」

 そう言うと、一臣さんも肩に回した腕に力を入れ、

「可愛いよな、弥生は」

と言って、私のほっぺにチュっとキスをした。




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