表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第10章 甘いフィアンセ
136/195

~その5~ 強引な一臣さん

 夕飯が終わり、一臣さんは私の手を取ってさっさとダイニングを出た。私はドキドキしながら歩いていた。

 一臣さんの手、なんか熱い。


「先にお風呂、入っていいですよ」

 一臣さんの部屋に入り、私がそう言うと、

「あほ。一緒に入るって言っただろ。あ、着替えはいらないからな。どうせ、脱がせるんだし、朝まで裸で寝るんだし」

と言われてしまった。


「でも、下着だけ持ってきます」

 私はそう言って、そそくさと自分の部屋に戻った。なにしろ、まだ終わっていないし。ベッド汚したら悪いし。


「はあ…」

 お風呂も一緒に入るんだ。ダメだ。心臓がバクバクしてきた。

 顔の火照りも、心臓のバクバクも感じながら一臣さんの部屋に戻ると、

「はあ?なんだと?!」

という一臣さんの大きな声が聞こえてきた。


 何?いきなり私、なんで怒られたの?下着取りに行ったから?とびっくりすると、一臣さんは電話中だった。

 なんだ。私に怒ったわけじゃなかった。びっくりした。でも、なんで電話中?それもなんで怒ってるの?


「あ~~~。悪い。細川女史、ずっと残っててくれていたのか」

 細川女史と電話?

「それで?なんとかなりそうなのか。ああ、わかった。バックアップはとってある。家のパソコンでどうにかするから、もう帰っていいぞ。ああ、大丈夫だ。弥生もいるし朝までにはなんとかなるだろ」


 まだ、会社に細川女史残っていたんだ。何か問題でもあったのかな。あ、私、なんかしでかしちゃったかな。

「鴨居にも帰るよう言ってくれ。ああ、ご苦労様」

 そう言って一臣さんは電話を切った。


 もしかして、鴨居さんのミスかな。でも、すんなり帰らせたし、怒らなかったみたいだな。一臣さん、寛大になったのかな。と思った矢先、

「くっそ~~~~~~~~~~~~~~~!!!」

と一臣さんは、地響きでも起こりそうな低い声で唸った。


「今夜は弥生を抱きまくる予定だったのに、なんだってこういう日に限って、ミスるんだよっ!!ったく、新人は使えねえな!!!」

 やっぱり、鴨居さんのミス?でも、今なんて言った?私を抱きまくるって聞こえたけど。


 だ、抱きまくる?!!


「弥生!」

「はひ?!」

 突然、大きな声で呼ばれて、私は飛び上がった。


「風呂、入るぞ。出たら仕事だ」

「はい」

「でも、風呂場でいちゃつくぞ」

 はあ?!


「い、いちゃつくって、えっと?」

「とにかく、すぐ入る!あ、部屋着かパジャマ持ってこい。出たら仕事だからな」

「はい!」

 私は一目散にまた自分の部屋に戻り、パジャマを持って一臣さんの部屋に戻った。一臣さんはすでにバスルームに入っていた。


 ドキドキ。お風呂でいちゃつくって何?まさか、今日も体洗われちゃったりして?

 ドキドキドキドキ。ダメだ。もうぶっ倒れそうだ。


 裸になって、タオルで前を隠しながらもじもじとバスルームに入った。一臣さんは自分の体を洗い、

「ちょっと待ってろ」

と言って、髪まで洗い出した。


 わあ。映画のワンシーンのよう。立ったまま、シャンプーをつけて髪を洗い、それを豪快にシャワーで流すと、顔を上に向けて顔についていた泡も洗い流し、前髪をかきあげた。


 はう。素敵。 

 私はうっとりと一臣さんを眺めていた。でも、

「お前の番だ」

と言われて我に返った。


「じ、自分で洗います」

 そう言って椅子に座ろうとしたが、阻止された。私の体にシャワーをかけ、手につけた石鹸で一臣さんはさっさと私の体を洗い出してしまった。


「自分で洗えます!!!」

 そう言いながら、一臣さんから離れようとした。でも、

「黙ってろ。それからじっとしてろ」

と怒鳴られた。


 なんだってこうも、強引なの?私をきっと、犬か何かのように思っているよね。きっとランのこともこうやって、洗っていたんだよね?


 だけど…。一臣さんの手、優しくて、くすぐったい。じっとしていられないよ。

「あ…」

 胸洗ってきた!きゃわ~~~~!!


「感じてるなよ。洗えないだろ?」

 ひょえ!ばれてる。うわ~~。心臓が、バクバクバク!

 バクバクの、ドキドキの間に、一臣さんはさっさと私の体を洗い終え、

「座れ。髪を洗うぞ」

と言って、私を椅子に座らせた。


 それからも、優しい手つきで私の髪を洗ってくれた。

「い、いいんでしょうか」

「何が?」

「この前も思ったんです。緒方財閥の御曹司に髪なんて洗わせてしまって、申し訳ないなあって」


「へ~~~。体を洗ってもらうのは申し訳ないと思わないのか?」 

 ギク。それは、一臣さんのエッチって思っているかも。

 一臣さんはそのあと、何も言わずに髪を優しく洗い、タオルで優しく拭いてくれた。


「ほら。ジャグジーに入るぞ」

「はひ」

 全身、それに髪まで優しく洗ってもらって、私はふわふわした気持ちで一臣さんとバスタブに入った。


 そして、私は一臣さんの隣に座ろうとした。でも、

「弥生はこっちだ」

と一臣さんの真ん前に座らされた。それから一臣さんは後ろから抱きしめてきた。


 きゃ~~~。なんか、バスタブでこんなふうに抱きしめられるのって、すごくエッチな感じがしちゃう。

「あ、あ、あの」

「なんだ?」

「鴨居さんが何かミスをしたんですか?」


 私はなんとか話でもして、一臣さんがエッチなことをしてくるのを阻止しようとした。

「そうだ。カモのやつ、今日頼んでおいたデータ入力、ミスってどうにかそれをあいつは、細川女史にも誰にも報告せず、必死に自分で直していたんだそうだ」


「え?そうなんですか?」

「で、何をどう操作したんだか知らんが、ファイルのデータ全部消しちまったらしい」

「え!?」

 ファイルのデータを消した~~?!それって、頼まれていた箇所だけじゃなく、他のも全部ってこと?うわ。一大事だよ、それ。


「回復させようにも、何をしても無理だったらしいし、秘書課でバックアップもとっていなかったらしい。それで、細川女史が、俺がバックアップとっていないかって、聞いてきたんだ」

「そ、そうだったんですか。あ、それでちゃんとバックアップは」

「とってある。家のパソコンにも送ってあったしな」


「さすがです、一臣さん」

「当たり前だ。会社のパソコンがウィルス感染したり、ぶっ壊れたらおしまいだろ?特に翌日必要な急ぎの分は、USBメモリーにコピーしておく。それもちゃんと、持ち帰ってきたぞ」


「さすがです」

「たまに、間抜けな秘書課の新人が、とんでもないミスをしたり、データ消したりするからな。前にも一回あったんだ。まあ、そいつはちょっと鬱になっていたし、ミスは頻繁にしていたな」


 あ、もしかして、鬱でやめちゃったっていう人かな。

「お前みたいに、秘書課に移ってから、大塚や三田にいじめられていたんだろうな。そいつの携帯もトイレに水没していたらしいし、それでまいっちゃったみたいなんだよなあ」

「それで、ミスも多くなったんですか?」


「ああ。仕事に思い切り支障をきたすようになっていたっけな。秘書課から移動させるか、療養させるか、樋口とも相談して、あと、秘書課の内部も調べようとしていた矢先に、退職届出して、とっととやめちまったんだ」

「大変だったんですね」


「そいつはな。弱かったんだろうな、もともと。お前と違ってな」

「……ですね」

「お前、へこたれなかったもんなあ。大塚の新人いびりも、三田のいじめも、へでもなかったろ」

 また、汚いこと言った。時々、口悪くなるなあ、一臣さんって。


「はい。びくともしませんでした」

「やっぱりな。そんなお前が、俺のことになるとからきし弱くなっちまうんだもんなあ」

 そう言って一臣さんは、私の胸をなぜか触ってきた。


 やばい。エッチなことをしようとしてるよね、これって。なんか、話でもして阻止しないと。

「そのデータ入力を、明日の朝までにしないとならないんですね」

「ああ」

「じゃ、さっさとお風呂出て、仕事しましょう」


「ダメだ」

「な、なんでですか?」

「まだ、いちゃついていない」

「うきゃあ!胸、揉まないでください」


「いちゃついてるんだ。いいだろ」

「よくないです!」

 なんとか、一臣さんの手を両手でどかそうとした。でも、まったく動かない。


「ん~~~~!!」

 どんなに力を入れても無理だ。

「諦めろ。お前より俺の力のほうが勝っているんだからな」

 

「で、でも、お風呂でこんな…」

「弥生、ちょっとこっちを向け」

 そう言われ、顔を後ろのほうに向けると、一臣さんがキスをしてきた。


 うわ。それも、大人のキス!ダメだ。腰ぬける!

 唇を離すと、次は首筋やうなじにキスをしてきた。きゃわ~~~~~!!!

「やばいなあ」

 え?!


「仕事ほったらかすか。このまま、ここでエッチしまくるほうが、ずっといい」

「は?!」

「弥生、可愛いし、抱き心地いいし、キス気持ちいいし…」

 はあ?!


「ダメです。仕事しないと!明日までにデータ入力するんじゃないんですか?」

「ああ、そうだ。10時からの会議で使う」

「じゃあ、ちゃんとしないとっ!」

「………」


「一臣さん!」

 もう!胸からいい加減手を離して。私だって、疼いちゃって大変なのに。

「くそ~~~~~」

 また唸りだした。


「絶対に、今度温泉に行ったら、露天風呂でいちゃついてやる。今日の分までいちゃついてやるぞ」

 ひょえ~~~~。露天風呂でって、何、それ!!それも、今日の分までって?!

「仕方ない。風呂から出るか」

 一臣さんはそう言うと、ようやく私の胸から手をどかした。私はすぐさま立ち上がった。


 そして、さっさとバスタブを出て、さっさとバスルームからも出た。体を拭かれる前に、自分でさっさと拭いた。

「あ~~~~あ。その気になっていたのにな。どうしてくれるんだよ。あ~~~~あ」

 一臣さんは、ぶつくさ言いながらバスルームから出てきた。


「先に、髪、乾かします」

 私はそそくさと下着をつけ、パジャマとドライヤーを持って、部屋に行った。でないと、パウダールームで一臣さんに襲われる可能性もある。


 それからパジャマを着て、ようやくほっとしながらチェストの前の椅子に座り、髪を乾かしだした。

「弥生~~~」

 一臣さんは、なんでだか、パジャマの下だけを履き、部屋にやってきた。


「俺のパジャマも持っていかなかったか?」

「いいえ」

「じゃあ、出し忘れたか」

 鏡に一臣さんの上半身が映った。バスタオルでゴシゴシ頭を拭いている。ああ、かっこいい筋肉だ。腕にもお腹にも、綺麗な筋肉がついている。うっとり。


「俺の裸に見惚れるなよ。やっぱりお前も、抱いてほしいんじゃないのか?」

「い、いいえ!違います。ただ、見惚れていただけです」

「うそだ。抱きしめてほしいんだろ?顔に書いてあるぞ」

「え?うそ!!!」


 思わず鏡を見てしまった。

「あはは!お前、顔真っ赤だな」

 ひょえ~~~。本当だ。さっきより赤くなってる。


「ほら、弥生、立てよ」

 一臣さんに椅子から立たされた。そしてギュッと抱きしめられてしまった。

 わあ、わあ、わあ!一臣さんの素肌に直接顔をうずめちゃったよ~~。もうすでに、一臣さんからは、いつものコロンの香りがする。


 うっとり。ダメだ~~。離れたくないかも。

 つい私も一臣さんの背中に腕を回し、べったりと一臣さんに張り付いた。一臣さん、あったかい。

 ドキドキするけど、安心できる。


「お前も裸だったらよかったのにな」

「え?」

「裸で抱き合いたかったぞ」

「……」

 もう、何を言い出すんだか。


「で、いつまでお前は俺に、くっついているんだ?」

「ごめんなさい。でも、もうちょっと」

「早くに仕事するんだろ?」

「はい。でも、あと1分」


「キスはいいのか?」

「い、いいです。腰砕けちゃうから」

「そう言いつつ、してほしいんだろ?」

「いいえ」


「してほしいくせに」

 そう言うと、私の顎を持ってキスをしてきた。

 うわ~~~~~~~~~~。足、ガクガク。

 ヘナヘナ。キスが終わり、崩れそうになると、一臣さんが私の腰を支え、椅子に座らせた。


「ほら、さっさと髪乾かせよ」

 一臣さんはクールにそう言うと、クローゼットにパジャマの上着を取りに行ってしまった。

 ああ。もう。なんだって、一臣さんは大人のキスしても平気な顔をしているの?なんでいつも、私だけが腰抜かしているの?私がおかしいのかな。


 髪を乾かそうとして鏡を見た。私の顔はゆでだこのようになっていた。

 ああ、真っ赤だ。恥ずかしい。


 ブオーー。真っ赤になりながら、私は髪を乾かした。それにしても、一臣さんとこんなにいつも一緒にいたら、私からも一臣さんのコロンの匂いがしているかもしれないな。


 ドライヤーを止めて、くんくんと自分の腕や手を嗅いでみた。

「あ、するかも」

 自分から一臣さんのコロンの香りがして、また顔を赤くしていると、

「何してるんだ?お前」

と、ちょっと呆れながら一臣さんが聞いてきた。


 わ。もうクローゼットから出てた。パジャマもしっかりと着ている。

「あ、あの。私からも一臣さんのコロンの香りがしてて、ちょっと恥ずかしくなったっていうか」

「なんで恥ずかしいんだ?別にいいだろ?」

「はい」

 一臣さんに抱きしめられたからかも。いや、正確に言うと、抱きしめていたからかも。


「さて。仕事始めるか。で、明日はカモのやつ、どうとっちめてやろうかな」

「とっちめるだなんて、ダメです。そんな」

「だけど、ちゃんと叱るなり、注意するなりしないとならないだろ?データ消したんだぞ?普通に考えても、とんでもないミスだろ?」


 そう言って一臣さんは、デスクに座ってパソコンを起動させた。

「で、ですが」

「あいつ、体育会系なんだろ?だったら、かなり強く叱っても大丈夫だろ?」

「で、ですが…。まだ、秘書課に来てすぐですし、あんまり怒り飛ばすのも…」


「だけどな、カモのせいで俺はお前を抱けなくなったんだぞ」

「公私混同はよくありません。です…」

 私が言い終わる前に、ぎろっと一臣さんに睨まれ、変な日本語になってしまった。


「わかったよ。細川女史から注意させる。それでいいだろ?」

「はい」

「データ入力、お前のほうが早そうだな。得意だろ?」

「はい!」


 私は一臣さんと席を替わり、さっさとデータ入力を始めた。

「なんか飲むか?」

「えっと、じゃあ、お水を」

「口移しでか?」


「普通にグラスで」

「つまんないやつだな」

「話しかけないでください。どこ、打っていたかわからなくなるので」

「……」

 一臣さんは黙り込んだ。そしてコップに水を注ぎ、デスクの上に置くと、静かにソファに座った。


 パチパチと私がパソコンを打つ音と、時計の音、それから時々一臣さんが、本のページをめくる音だけが部屋に響いた。


 2時間たった頃、

「目、疲れないか?途中で休憩を入れろよ」

と一臣さんが私のそばに来てそう言った。

「あ、はい。じゃあ、ちょっと休みます」


 すると、一臣さんが肩を揉んでくれた。

「相当こってるな、お前」

「あ、気持ちいいです。ありがとうございます」

「今度、胸を揉んだ時にも、それを言え」

「嫌です」


「なんでだよ。気持ちいいんだろ?」

「セクハラ!」

「違うだろ。まったく~~」

 まったく~~と言いたいのはこっちです。


「目、赤いぞ。目薬さすか?」

「はい」

 一臣さんが、なんと目薬までさしてくれた。なんなんだ。やけにかいがいしいなあ、今日の一臣さん。いたれりつくせりだ。


「じゃ、再開します」

 5分立って、私はまた仕事を再開した。一臣さんはまたおとなしく、ソファに座った。


 それから1時間後、

「終わりました」

とすべてを終わらせて一臣さんに言うと、一臣さんはすでにソファで眠っていた。


 あ、静かだと思ったら、寝ていたのか。どうしようかな。でも、ベッドで寝たほうがいいよな。だけど、気持ちよさそうに寝ているしな。


 ソファに近づき、一臣さんの顔を間近で見た。綺麗な鼻筋と長い睫。それに端正な形のいい唇。

 キス、したいなあ。してもいいかなあ。

 私はそっと一臣さんの唇に触れた。


 きゃあ、キスしちゃった!でも、一臣さん、起きない。スウスウッて寝息立ててる。可愛いかも。

 私はほっぺにもキスをしてみた。それからおでこにも。していると、どんどん愛しさがこみ上げてきた。


 寝ているすきにキスしても、触ってもいいって言ってたよね。

 ビト…。私は一臣さんに抱き着いた。一臣さんのコロンの香りに包まれ、うっとりとした。それに胸、あったかい。


「ん?重いぞ、弥生」

 あ、気が付いた?それも、私が抱き着いているのもわかってた?

「終わったのか?」

「終わりました」


 私は一臣さんから離れ、そう言った。でも、一臣さんが私の腕を掴んできた。

「今、何時だ?」

「え?12時半ですけど」

「まだ、そんな時間か?本当にもう終わったのか?」


「はい」

「…お前、ほんと、仕事早いよな。カモが1日かけてたものを、たった数時間で終わらせたのか?」

「えっと。簡単な入力だったので」

「そうか」


「でも、見直していないので、一回見直さないと」

「いい。明日の朝、細川女史がするって言っていたから、細川女史のパソコンに送信しておいてくれ」

「はい」

 私はもう一回パソコンを開き、データを細川女史のパソコンに送った。


「弥生」

 ソファから立ち、一臣さんが私にキスをしてきた。

「明日、俺が遅刻を許す」

「え?遅刻って?」


「10時の会議に間に合えばいい。だから、抱くぞ」

「え?今からですか?」

「ああ」

 そう言って一臣さんは、椅子に座っている私を、ひょいっと抱き上げ、ベッドに連れて行った。

 今、軽々と抱き上げた。やっぱり、一臣さんってかなり腕の筋肉あるんだ。


 って、そこに感心している場合じゃないよ。予期していなかったことだよ。きっと今夜は何もせず、寝るんだろうなって思っていた。なのに!


 ベッドに寝かされ、私の心臓は早く鳴りだした。ドキドキ。ドキドキ。でも、抵抗もできない。拒む理由もない。

「弥生も、寂しかったんだろ?寝ているすきにキスしたり、抱き着いてきたもんな?」

「え?起きていたんですか?」

「半分な」

 ひゃあ!恥ずかしい。


「思い切り、抱きまくる予定ができなくなったが」

 え?っていうことは、しないのかな?でも、抱くぞって言った気がするんだけど。

「一回だけな?」

 一臣さんはそう言って耳にキスをしてきた。


 えっと…。それはもしや、いきなりの仕事が舞い込まなかったら、何度もしたっていうことかな?

 ちょっとだけ、冷や汗が出た。仕事が舞い込んでよかったかもしれない。だって、抱きまくるって、恋愛初心者の私には想像もできないことで。


 うわ。耳、うなじ、首筋とキスをされ、もうふわふわ夢心地だ。

 やっぱり、私も一臣さんに抱かれたかったんだ、きっと。思い切り愛され、幸せいっぱいになって、一臣さんの腕に抱かれながらそうしみじみと思っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ