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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第8章 フィアンセの噂話
112/195

~その16~ 「どこが好き?」

 大きな門をくぐり抜け、大きな噴水の横を通り抜け、そしてお屋敷の前で車は止まった。

「おかえりなさいませ」

 国分寺さん、喜多見さん、亜美ちゃん、トモちゃん、そして日野さんがお屋敷から現れた。

「喜多見さん、まだ、如月氏は来てないよね?」


「はい。まだでございますよ」

 一臣さんの質問に、喜多見さんは微笑みながらそう答えた。

「弥生、特に如月氏は好き嫌いはないよな」

「ないです」


「和食でいいのか?」

「はい。喜ぶと思います」

「そうか」

「一臣お坊ちゃまのリクエスト通りのものを、コック長は作っていますよ。ご安心ください」

「リクエスト?」

 いつの間に。


「アメリカに住んでいるんだったら、和食が恋しくなると思ってな。懐石みたいな感じのものを用意させたんだ。あと、天ぷらや、刺身も」

「わあ!如月お兄様、そういうの好きだから喜ぶと思います!ありがとうございます。一臣さん」

「…べつに、礼を言われるようなことじゃない。これも作戦のうちだ」

「作戦?」


「いい印象を与えたほうがいいに決まってるだろ?お前らも、粗相のないように気をつけろよな。弥生の大事なお兄さんなんだからな」

「はい。十分承知しています」

 亜美ちゃんと、トモちゃんが元気にそう答えた。日野さんもにこりと微笑み、頷いた。

 

「弥生。部屋に行くぞ」

 そう言うと一臣さんは私の背中に腕を回して、ゆっくりと歩き出した。

「あ、あの、あの」

「なんだ?」


「私の大事なお兄さんって言ってくれて、すっごく嬉しいです」

「…ああ」

 私は嬉しくて、思わず一臣さんの背中に腕を回し、べったりとくっついて歩いてしまった。


 そして、階段を上りつつ、あ、私、今、思い切り恥ずかしいことしてる!と気がつき、腕を離した。でも、一臣さんのほうが、私の腰にしっかりと腕を回し、体を離してくれなかった。

 きゃあ。これじゃあ、みんなが、私と一臣さんがべたべたにいちゃついていると勘違いしちゃうじゃないか。


「…」

 ん?屋敷に帰ったらいちゃつくって、そういえば言っていたなあ。だから、いいのかな。

「弥生。このくらいべったりとくっついたら、如月氏もいい加減、俺らが仲がいいってわかるよな」


「……え。でも、ちょっと嫌がるかも。ここまでしたら」

「なんだよ。じゃあ、どう見せたら、仲がいいってわかるんだよっ」

「…。さあ?い、いつも通りでいいかと思うんですけど」

「いつも?部屋で二人でいる時みたいにか?」

「い、いいえ。そうじゃなくて」


「いつも、食堂にいる時みたいにか?俺ら、仲いいどころか、いつもそっけないだろ」

 そういえば、そうなのかな?

「あ~~。面倒くさいよな」

 とうとう面倒になったか。ほんと、一臣さんは面倒くさがりだよなあ。


 部屋に入ると、さっさと上着を脱ぎ、ネクタイも一臣さんは外した。

「弥生も着替えるんだろ?ミニスカートとかやめろよな」

「履きません」

 私も一臣さんの部屋から私の部屋に抜け、着替えをした。


 兄から見て、清楚に思える格好がいいよね。そう思いながらサマーニットの半袖のセーターに、7分丈のパンツを着た。鏡に映すと、どこか野暮ったい感じになっていた。


「おかしいな」

 またクローゼットの中に入り、どれにしようか迷っていると、

「弥生、遅いぞ。まだ着替えていないのか」

と一臣さんが私の部屋に来てしまった。


「どれにしようか、考え中です」

「……もう着てるじゃないか」

「でも、なんか変な組み合わせですよね?」

「ああ。ださいな」

 やっぱりね。ちょっとグッサリ。そんなにはっきり言わないでもさあ。


「そのセーターなら、このスカート。そのパンツに合わせるなら、こっちの服だな」

 一臣さんが選んだスカートは短いしひらひらしたものだ。確かに、そのスカートならキュートな感じになりそう。

 でも、そんな可愛い恰好を兄に見せるのもなあ。


「じゃあ、このカットソーを着ます」

 一臣さんが選んだ、半袖の白いカットソーを手に取った。だぼっとしていて、会社には着ていけそうもない服だけど、可愛い感じもするし、色が白だから清楚にも見えるかも。


「じゃあ、万歳して。弥生」

「万歳?」

 なんで?わあいって喜ばないとならないのかな。と思いながらも両手をあげ、

「万歳」

と言うと、一臣さんは私のセーターの裾をつまんで、一気に脱がしてしまった。


 うわ!脱がすために万歳させたの?きゃ~~~。下、ブラジャーだけなのに!

「……。服、着せるのもったいないな」

「は!?」

 きゃあ。一臣さんがいきなり抱きしめてきた。


「あの、あの、あの?!」

 それに首筋にキスしてる。

「駄目です。着替えている最中なんです」

「ああ、そうだな」


「じゃあ、離してください!」

「キスマークでもつけておくか?見えるところに。それ見たらさすがに俺らが仲がいいってわかるだろ?」

「駄目!」

 何を言っているんだ、もう!


「そういえば、俺がつけたキスマークは?」

 一臣さんが私の胸元を覗き込んだ。

「消えたか。さすがに…」

 そう言うと、ブラジャーすれすれのところに、いきなりキスをしてきた。


 きゃ~~~~~~~!

 ドキドキドキドキ!あごに、一臣さんの髪がかかる。くすぐったいし、心臓が大変なことになってる!


「うん。また、ついた」

 キスマーク付けていたの?

「ここなら服着たら見えないだろ?」

「う…」

 確かに。見えないだろうけど…。


「胸まで真っ赤だな」

 一臣さんはそう言うと、私にまた「万歳」と言って、カットソーを着せた。

「服、自分で着れますから」

 なんだか恥ずかしくなってそう言うと、一臣さんはにこりと笑い、

「いいだろ?弥生可愛いから、そういうこともしたくなるんだよ」

と、そんなことを耳元で囁いた。


 うひゃあ!耳、くすぐったいし、そんなこと言われたらどうしていいか。

 あ~~~~~~~~~~。最近、ずうっと一臣さんのペースだ。

 いや、最近どころか、会ってからずっとかも。


 私ばかりがずっとドキドキしてて、泣いたり喜んだり、恥ずかしがったり、落ち込んだり。

 一臣さんは?ドキドキとかしないの?

 あ、でも前に、胸に手を当てさせられた。あの時、一臣さんもドキドキしていたっけ。


 一臣さんに手を引かれ、一臣さんの部屋に入った。私は手を繋げたのが嬉しくて、なかなかその手を離したくなかった。

「あの」

 手を離されそうになり、

「このまま、手、繋いでいてもいいですか?」

と、こわごわ聞いてみた。


「……ああ、いいけど。じゃあ、手を繋いだまま、食堂にも行こうな?」

「はい…」

 うわあ、嬉しいかも!


 そして手を引かれ、一臣さんはソファに座ると私を膝の上に座らせようとして、

「やっぱり、手、離していいか?」

と聞いてきた。


「え?はい」

 一臣さんは手を離すと私を膝の上に乗せ、後ろから抱きしめた。

 これ、一臣さん好きだよなあ…。私はいまだに慣れなくて、ドキドキしているけど。


「なあ、弥生」

「はい?」

「こんなにしょっちゅう、弥生とくっついていていいと思うか?」

「……よくないですよね?」


「ま、いっか」

 あ。いいことになっちゃった。

「そういえば、兄のことでいろいろと考えるんですっけ?どうするかを」

「面倒くさいからもういい。なんとかなるだろ」

 

 ああ。本当に面倒くさがりだよなあ。

「あの、一臣さん。私、思ったんですけど」

「なんだ?いい作戦でもあるのか?」

「兄のことじゃなくて」


「ん?なんだ?」

「こうやって、一臣さんはいつも私と一緒にずうっといてくれますけど」

「ああ、うん。そうだな。最近はずっと一緒だな」

「そのうち一緒にいるのも飽きて、別行動をし始めたりしませんか?それで、忙しくなって、全然会えなくなったり」

「飽きて?お前のことを?飽きるかな。こんなに可愛いのに」


 ひょえ~~~~~~~~。そういうことを耳元で囁かないで。くすぐったい!

「だ、だから。可愛いって見えるのも今だけで、そのうち、なんでこんなのが可愛く見えたんだろうって、俺は魔がさしていたのかもなって、そう気がついて、私と一緒にいるのも嫌になる時が来たりしませんか?」


「ああ、来るかもな」

 え……。肯定した?そんなことはないって、そう言ってくれるとちょっと期待したのに。


「なんだってこんなみょうちくりんが、可愛く見えたんだって、目が正常に戻る日がくるかもな…」

「じゃあ、今は異常なんですか?」

「ああ。病気だ。前にも言ったろ?目が変になったって」

 酷い。


「でも、一生このままかもしれないしな」

「え?」

「一生、お前のことが可愛く見えるかもしれないだろ?そんな先のことは俺にもわからない」

「…」


「お前だって、ある日突然、なんで俺のことが素敵に見えていたんだろうって、がっかりする日がくるかもしれないぞ」

「ないです!そんなこと、絶対に」

「…なんで、言い切れるんだ?わかんないだろ」


「でも、ないです。だって、今までもずっと一臣さんはかっこよくて、素敵だったし、今も素敵でいつもうっとりしちゃうし、これからはもっと、一臣さんは大人の男の人になって、かっこよさが数倍増して、おじさまになったら、ダンディになって、すっごく素敵なおじさまになっちゃうんです。あ、おじいさんになっても、かっこよくって」

「わかった。もういい。聞いてて久々に鳥肌が立った」


 ストーカー発言?気持ち悪かったとか?

「お前のその思い込みはいったいどこから来るんだ?」

「ごめんなさい」

 やっぱり、怖かったのかな。ちょっと落ち込んだ。


「そんなに俺に惚れ込んでいるのか」

「…はい」

「俺のどこが好きなんだ?」

 一臣さんは横から顔を覗き込むようにして聞いてきた。だから、私の頬に一臣さんの頬がくっついた。


 きゃあ。ドキドキする。顏、近すぎだよ。

「お前のほっぺ、やっぱり柔らかいな…」

 う。そんなこと言うし…。


「えっと。一臣さんのどこが好きかっていうと」

「ああ」

「ぜ、全部かも…」

「………」


 あ。黙っちゃった。また怖い発言しちゃったかな。

「俺の性格、自分で言うのもなんだが、かなりわがままだし、嫌な性格していると思うけどな」

 あれ?自分でもそう思っていたんだ。


「でも、好きです」

「お前って、変な趣味しているんだな」

 ガク。

「ああ、俺もか?こんなへんちくりんが可愛いんだから」 

 グサ。


 ピト。ほっぺ、くっつけたままだ。

「ほんと、マシュマロだよなあ」

「…太ってるって言いたいんですか?」

「気持ちがいいって言ってるんだよ。触り心地が気持ちいい」


 微妙に恥ずかしい。

「弥生」

「はい」

「お前、やっぱり…」


 ドキン。

「可愛いな」

 そう言うと一臣さんは後ろから、また思い切り抱きしめてきた。

 うわ~~~~~。苦しいってば。


 トントン!

「一臣おぼっちゃま、お食事の用意ができました。如月様もおいでになりました」

 喜多見さんの声だ。


「ああ、今、弥生と一緒に行く」

 そう一臣さんは大きな声で答えると、私から腕を離した。

「さて、いちゃついているところを見せつけるか」

 いえいえ。見せつけはしません。でも、仲がいいってことはわかってもらわないと。


 一臣さんと手を繋いで階段をおり、ダイニングに入って行った。するともう、如月お兄様が席についていた。

「あ」

 私と一臣さんが手を繋いでいるのを見て、兄がちょっと目を丸くして驚いた。


「こんばんは」

 一臣さんがすごくクールな声でそう言った。

 兄は椅子から立ち上がると、一臣さんに軽くお辞儀をして、

「お言葉に甘えて、お邪魔させてもらっています」

と、一臣さんに負けないくらいの冷静な声でそう言った。


 でも、そのあとにまた、私と一臣さんの手を見た。

「ずいぶんと仲がいい…というところをアピールしているんだね」

 兄はそう言いながら、また椅子に座った。


「ああ、これですか?弥生が僕と手を繋いでいたいっていうものですから」

「あ!それは…!」

 ば、ばらさなくても!

「なんだよ。本当のことだから、そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ?」


 うわあ。本当のことだから恥ずかしいのに。きっと、私、顔赤い。


「弥生様、どうぞ」

 国分寺さんが椅子を引いてくれた。

「ありがとうございます」

 一臣さんと手を離し、私は椅子に座った。


 一臣さんも、ぐるりとテーブルを回り、国分寺さんが椅子を引くまで待っていて、それから座った。

 なるほど。自分で椅子を引いて座ったりはしないんだ。そういうふうになっているんだなあ。


「如月さんは明日アメリカに帰るんですか?」

 唐突に一臣さんは聞いた。

「ああ。明日の飛行機で帰るよ」


「アメリカにご家族がいるんでしたっけ?」

「妻と子供がいる」

「こんなにしょっちゅう、日本に来ていて、寂しがらないですか?」

「そんなにしょっちゅうは来ていないさ。それに、アメリカに戻れば、家族サービスは思い切りしているよ」

「へえ…」


 そんな会話をしている中、どんどんお料理は運ばれてきた。

「今日は和食にしてくれたんですよ。お兄様のために。天ぷらや、お刺身、あんまりアメリカで食べられないですよね?」

 私がそう聞くと、

「ああ。そうだな。天ぷらはたまに奥さんが作ってくれるけど、お刺身はあんまり美味しいのがなくて。ああ、本当に美味しそうだな」

と、兄は顔をほころばせた。


「奥さんがお料理を作るんですか?」

 一臣さんがそう聞くと、

「ああ。もちろんだよ」

と兄は答えた。


「料理学校にも通っていた。なかなか上手なんだよ、うちの奥さんは。弥生も料理が得意だから、君も食べてみたらどうだい?」

「食べたことはあります。弁当でしたけど。確かに美味しかったですよ」

「そうだろう?その辺のお嬢様は料理もできないみたいだが、弥生は違う」


「自慢の妹ですか?」

「ああ。もちろんだ」

「……でしょうね」

 一臣さんはそう言うと、お料理を食べだした。


「でしょうね?なんだ?その言い方は。嫌味が言いたいのかい?一臣君」

 兄はまだ料理に手も付けず、顔をしかめて一臣さんにそう聞いた。

「いえ。本当に如月さんが自慢するのもわかると言いたかったんです。僕にとっても自慢のフィアンセだし、結婚したら自慢の妻になると思いますので」


「え?!」

 兄は思い切り目を見開いた。相当驚いたらしい。

「それも、あれか?口からでまかせか?そう言って僕を油断させる気なのか?」

「…まさか。本心ですよ」

 兄の言葉に、一臣さんはまたクールに答えた。


「信じられないな。この前会った時には、弥生のことをさんざんひどく言っていただろう。へんちくりんでみょうちくりんだとか、こんな女を好きになるやつは変態だとか」

「ああ。言ってましたね」

 一臣さんはそう言うと、まだ疑いの目で見ている兄をくすっと笑いながら見た。


「何がおかしいんだ?」

「ですから、僕はその変態になったみたいなんですよ。自分であんなこと言ったのに、そんな弥生に惚れちゃったんだから、自分でも笑えるよなって思いまして…」

「え?」


 兄は、今度は目を点にした。

「惚れた?弥生に?」

「はい。惚れましたよ。でもあの時、ああ言って良かったと思っています。少なくともトミーって人は、弥生を諦めましたよね?一人ライバルが減りましたし」


「ああ。トミーか。弥生とはもっといろいろと話がしたかったとは言っていたが」

「ですが、もう近づけさせないでいただきたいですね。弥生は僕のフィアンセですから」

「本当に弥生のことをちゃんと思ってくれているのか?君は」


「思っていますよ。大事ですし」

 そう言うと、しばらく兄と一臣さんは無言で見つめ合った。そして、先に兄が視線をそらして私を見た。

「本当なのか?弥生」

「はい」

 私は深く頷いた。


「は~~~。父と卯月からも、一臣君が弥生と結婚したいとそう言ってきたと聞いたが、内心どうしても信じられなくてね。本当なんだな?一臣君。本当に弥生に対して、ちゃんと君は想いがあるんだな?」

「ありますよ」


「弥生のどこが気に入ったんだ?どこを好きになったんだ?前はあんなに否定していたじゃないか」

「う~~~ん。そうですね。たくさんありますけど」

 たくさん?ドキ!なんか聞くのが怖い。でも、聞きたい。


「弥生は本当にバイタリティがあるんです。ちょっとのことじゃへこたれないし、前向きだし、元気だし、明るいし。この屋敷も弥生が来てがらっと変わりましたし、会社での新しいプロジェクトも弥生のおかげで、これからもうまく機能していくと思います」


「仕事の面の話か?」

「はい。弥生は僕の仕事の補佐を、しっかりとしてくれていますし、一緒に緒方商事を改革していってくれると確信しています」

「……他には?」


「他?そうですね。誰にでも好かれちゃうし…。なんでしょうね?持ち前の明るさと言うか、天真爛漫さですかね」

「そこに一臣君も惹かれたのかい?」

「ああ。まあ。そういうところにも惹かれましたけど」


「他は?」

「まだ聞くんですか?」

「たくさんあるんだろ?」

「……そうですね」

 あ、一臣さん、ちょっと嫌になって来てるのかな。片方の眉が思い切りあがった。


「僕に対して健気ってところですかね」

「健気?」

 ドキ!思わず、私が聞いちゃった。


「ああ。健気で一途で、一生懸命で、俺に関してだけはすぐに泣いて、落ち込んで…。そういうところが可愛いって思っちまったんだから」

 一臣さんは、兄にではなく私にそう言ってから、はっと気がつき、慌てて兄を見た。その時の一臣さんの耳は赤くなっていた。


 うそ。照れてる?!

「コホン。だからですね。まあ、弥生の可愛さを知ってしまったってことです…。以上。これ以上はもう、この件に関しては話しませんから。あ、冷めますよ。さっさと食べてください。天ぷら」


「え?あ、ああ」

 クールに見せながらも、まだ耳の赤い一臣さんの顔を見て、兄も何かを感じたらしい。それからは、静かにみんなで料理を堪能した。


 でも私は、なんだか胸がいっぱいで、お料理を思う存分味わうことができなかった。


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