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ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第8章 フィアンセの噂話
110/195

~その14~ 信頼関係

 生八つ橋を食べながら、濃い緑茶を飲んだ。

「ほう…」

 なんか、落ち着いた。


 一臣さんは、お茶を飲んで書類を見ている。すごく真剣な目で見ている一臣さんは、さっきまでのスケベさをみじんも感じさせない。

 「できる男!」がスーツを着ているっていう感じだ。ブランド品にまったく音痴な私だからわからないけど、スーツもネクタイも、靴も全部きっと高級品なんだろうなあ。


 時計はロレックスって言っていたっけ。如月お兄様もそうだ。でも、卯月お兄様や葉月は、そんな高級品を買えるほどの稼ぎがない。

 卯月お兄様は昨年ようやく、車が買えた。それに、結婚資金を貯めるのも大変だったようだ。


 葉月に至っては、車もなく移動手段は自転車。もちろん、運転手なんてついているわけもない。


 生八つ橋を食べ終わり、レーズンクッキーはどうしようか悩んだ。

 ちら。また一臣さんを見てみた。は~~~。なんだってこんなんにかっこいいんだか。よく一臣さんに花より団子だなって言われるけど、絶対に団子より一臣さんだよ。


「なんだ?」

「え?なんでもないです」

 びっくりした。いきなりこっちを見て話しかけてきたから。


「また俺に、見惚れていたのか」

「はい」

「…まあ、いいけどな。だけど、お前の視線ってなんでそう強力なんだ」

「は?」


「見られているっていうのが、ビシバシ伝わってくるぞ」

「ごめんなさい」

 目からビームでも出ちゃうのかな。でも、なんのビーム?ラブラブ光線とか…。ああ、これ、口に出して言っていたら、呆れかえっちゃうね、きっと。


「一臣さん…。さっきの」

「さっきの?ああ、またあの甘いキスが欲しくなったのか?」

「違います!!!そうじゃなくて。ああいうことを、頻繁にしていていいのかなって、疑問に思っただけです。それも、オフィスでなんて…、仕事にならなくなっちゃうし」


「そんなことないだろ?今でも俺は仕事をしているぞ。お前はおやつタイムみたいだけどな」

 う…。おやつ食うか?ゆっくりと食っていていいぞって言ったのは一臣さんのほうなのに。


「でも。今だけですよね?こんな甘々でいちゃいちゃしているのなんて」

「え?」

「そのうち、落ち着きますよね?」

「まさか。こんなんで、終わるとお前、思っているのか」


「は?」

 一臣さんが書類をテーブルに置いて、私に顔を近づけた。

「え?あの?」

「こんなのは、序の口だ。まだまだ入門編だ。前にもそう言ったよな?」


「……」

 ひく…。ほっぺが今、引きつっちゃった。これが入門編だったら、これから先はどうなるってこと?

「あ、あの。入門編で終わりでもいいんですけど」

「なんだと?」


 ひょえ?怒った?

「で、ですから。もうこれで十分くらい幸せなので、これ以上のステップアップはしないでもいいです」

「俺が嫌だ」

「は?」


「これでもお前のレベルに合わせてやっているんだ。まだ、ぜんっぜん不完全燃焼だ。物足りない。こんなで終わらせてたまるか」

 は~~~~?!


 絶句。何も言い返せない。なんて、わがまま。いや、すけべなんだ。

 待って。これが普通の男の人なの?ああ、もう!免疫ゼロだから、わからないよ。普通の基準が!


 こんな話を、先輩たちと高校時代したこともないし、大学の時だって、周りにいた人は、アニメやゲーム、物理やアイドルの話ばかりで、こんな恋愛事情を知っている友達もいなかったし。


 あ!!いた!邦ちゃん!彼氏がいて、他の彼氏持ちの友達とあれこれ話してた。私にはさっぱりわからなかったし、そんなに興味のある内容でもなかったから、あの時には話に加わらなかったけど、よく彼氏のアパートに泊りに行くとか、旅行に行くとか、そんな話をしていた気がする。


 今度、連絡取って聞いてみようかな…。うん。他に相談できる人もいないし。まさか、会社の人に、「私のフィアンセがスケベで困っているんです」なんて言えないし。


「4時に、Aコーポレーションの専務が来るからな。そろそろお前も用意しておけ。さっきのキスで口紅も全部取れてるぞ」

「うわ。はい!」

 慌てて、口紅を出して手鏡も出した。


 が、隣に一臣さんが座ってきて、口紅を私の手から取り、

「塗ってやる」

とそう言って、左手で私の顎を持った。


 これ、けっこうドキドキしちゃうんだよね。でも、嬉しいんだけど。と思っていると、一臣さんが顔を近づけてきた。

 え?

 キス?


 なんだってまた?それも、舌まで…。

「ん~~~!」

 長い~~。また腰抜けそう~~。


 唇を離すと、一臣さんはくすっと笑い、

「お前、ニッキの味がした」

とそう囁いた。


 う!生八つ橋のニッキの味?!

 うひゃ~~。

「ほら、ちゃんとこっちを向け。口紅塗れないだろ?」

 もう~~。キスして来たのは一臣さんなのに。それも、すごく濃厚な。


「あの…」

 口紅を塗ってもらい、私は口紅を片づけながら一臣さんに聞いてみようとした。でも、「変な質問してもいですか」と聞こうとしていたので、口に出す前に止めた。どうせ、変な質問は受け付けないと言われるだけだ。


 じゃあ…。

「あの…。素朴な疑問なんですけど」

「なんだ?」

 あ。これなら受け付けてくれるんだな。


「一臣さんのキスは、男の免疫ゼロの私でも、上手だなって思うんですけど、上手なんですよね?」

「そうか?もしかして今も、腰抜かしたか?」

「はい」

「そうか。お前が感じやすいんじゃなくて、俺が上手なのか」

 そう言って一臣さんは、にやりと笑った。


「…え?でも、他の人も私みたいに、腰抜かしたり、うっとりしたり、キスが上手だって言っていませんでしたか?」

「一回もないし、言われたこともない。逆に、キスが簡単すぎるだの、もう終わりなの?とか、そういうことならよく言われてたけどな」


 え。あ、そうか。淡泊なんだっけ。じゃあ、私にだけ?まさか。

「キスして気持ちいいと思ったのも初めてだし…。なんでかな?お前の唇が気持ちいいのかな。ふっくらとしててマシュマロみたいだし」

 ぎゃわ~。だから、そういうこと言わないで。恥ずかしい。顏、きっと真っ赤だ。


「あと、甘いしなあ。あ、そうか。お前とキスすると甘いのは、お前が甘いもんばっかり食ってるからか」

 ガク…。

 一気に、火照った顔の熱が冷めていった気がする。


「でも、そうか。俺のキスは上手なんだな?」

 あれ?また一臣さんが顔を近づけてきた。

「駄目です。今、口紅塗ったばかり」

「あ、そうだったな」


 そう言うと一臣さんは、私の首筋にキスをしてきた。

 うぎゃあ。その辺も、感じちゃうから駄目なのに!

 ドキドキドキドキ!


 うわ~~!今度は耳?

「駄目です!もう、14階に移動しないと!」

「…そうだったな」

 一臣さんはようやく私から離れてくれた。


 ドキドキ。胸はバクバクだ。もう~~。やっぱり、こんなじゃ、私の心臓が持たないよ。これから先、もっとレベルアップしたら、私、絶対に一度は心臓停止すると思う。そしたら、死んじゃうかも…。


 愛している人に、愛されて死んじゃうの?うきゃ~~~~~~~~~~~!

 駄目だ!ますます顔が火照って行く。火照った顔のまま、一臣さんとエレベーターに乗った。

「おい」

「はひっ?」


「顔、赤いぞ」

「は、はい。わかってます」

「もう14階に着くぞ。顏、引き締めろよ」

 う…。もともとの原因は一臣さんなのに~~!


 14階の応接室に着いた。もう中には江古田さんがお茶の用意をしていた。

「あれ?上条さん、顔が赤くありませんか?熱でもあるんじゃ…」

「いえ!大丈夫です!」

 ひゃあ。赤いのばれた。そんなに赤いんだ。私の顔。


「江古田。冷たい水でも上条に持って来てやれ」

「あ、はい。わかりました」

 そう言うと、江古田さんはすぐに応接室を出て行った。


「だから言ったろ?顏、赤いぞって」

「か、一臣さんのせいです。ずるいです」

「……」

 あ。怒ったかな。片眉あがった。


「そんな可愛いこと言ってると、またキスするぞ?」

「駄目ですっ!」

「ぷっ。冗談だ。するわけないだろ、ここで」

 も、もう~~~~~!!!もう、もう、もう~~~~!!!


 冷たいお水を江古田さんが持って来てくれたので、それをゴクンと飲み、どうにか気持ちを落ち着けた。でもまだ、顔が熱かった。

 Aコーポレーションの専務が、樋口さんに連れられて応接室に来た。私はすぐにぺっこりとお辞儀をして、なるべく顔をあげず、顔が赤いのを見られないようにした。

 

「Aコーポレーションの赤羽です。それから、うちの秘書の戸田です。よろしくお願いします」

 赤羽さんはソファの前で立ったまま、胸ポケットから名刺を取り出した。一臣さんはそれを受け取った。

「どうも初めまして。緒方一臣です。…あ、それからこっちが秘書の上条です」

 こっち…。いいけど。


「よ、よろしくお願いします」

 私はそう言って深くお辞儀をした。

 それから、あれ?そのセリフは一臣さんのセリフだったかな?と、慌てて一臣さんを見た。でも、一臣さんは涼しい顔をして、

「まあ、お掛け下さい」

と、赤羽さんと戸田さんにそう言った。お二人はソファに腰かけた。


 それから一臣さんもソファに座り、私も座った。

「それで、今日はどんなご用件ですか?」

「はい。実はですね」

 いきなり、本題?一臣さんって、今までも数回しかないけど、こうやってお客さんが尋ねてきて同席した時、突然、本題に入ることが多かった。


 そして、本題が終わるとすぐに話を終わらせ、ではまた、と言ってお客さんをさっさと帰してしまう。長いこと話しこむこともないし、世間話なんか、一切しない。


 相手の説明が終わると、一臣さんは、もらった資料に軽く目を通したり、軽く質問をして、

「では、検討してみることにします。またこちらから、改めて連絡を入れさせてもらいますので」

ととても冷静にそう言った。


「いや~。緒方さんの噂は聞いていますよ」

「緒方と言うと、僕ですか?父ですか?」

「ああ。君…、一臣さんのほうですよ」

 相手の人は、50代かな?痩せ形で、背も高く、髪もまだふさふさだ。けっこうかっこいいおじさんの部類に属するのかもしれない。


「どんな噂ですか?」

「次期社長として申し分のない器だと。仕事もできるし、女性にもとてももてると」

 何が言いたいんだ。


「…へえ。そうですか」

 あ。一臣さん、全く興味がないようだ。手元の資料をトントンと揃え、応接室からそろそろ出るか…っていう雰囲気を漂させている。


「そちらの秘書の方は、一臣さんの秘書ですか?」

「ええ、そうですが」

「うちの戸田も、僕に付いている秘書なんですよ。我が社では専務以上にもなると、こうやって一人ずつ秘書がつくんです」


 そう言って赤羽さんは、隣に座っている秘書の膝の上に手を置いた。

 げ!セクハラ!でも、戸田さんは、表情も変えない。


「なかなかの美人でしょ?」

 赤羽さんはそう言うと、戸田さんを見てから私を見た。そして、ふっとほくそ笑んだ。


 何?今の笑み…。

 それに、戸田さんも私を見ると、ちょっと目の奥でバカにしたような笑みを浮かべた。


 なんでかなあ。もしかして、比較されてるの?

「そうなんですか。それはすごいですね。我が社では、社長と副社長、それから僕にしか、専属の秘書はいないですよ」


「ほ~~~。それで、一臣さんの秘書はこの子ですか?まだ、若そうですねえ」

「…上条は、最近僕に付いて、いろいろと仕事を覚えてもらっています。僕の第1秘書は、さきほど専務を案内した樋口ですよ。大学生…いや、幼少のころから僕に付いていて、いろいろと仕事のことを教えてくれたり、サポートしてくれています」


「幼少?」

 赤羽さんではなく、戸田さんが驚いた顔をした。

「ええ。ですから、ものすごい信頼関係があります。僕は、側近には本当に信頼した人間しか置かないんです。それは父もですけどね」


「では、そちらの秘書の子も、信頼関係がおありなんですか?」

 また、戸田さんが聞いてきた。

「ありますよ。でなきゃ、僕の補佐などしてもらいません。彼女とはものすごい信頼関係で結ばれていますから」

 一臣さんはそう言うと、にっこりと微笑んだ。


 すると、赤羽さんはバツが悪そうな顔をして、戸田さんも、眉をひそめ、なぜか膝の上にあった赤羽さんの手をさっと払いのけた。


「よ、よろしいですね。上司と部下がそんなに信頼関係があって」

「おや?赤羽さんとあなたは違うんですか?」

 戸田さんの言葉に、一臣さんは聞き返した。


「え?」

 戸田さんはたじろいだが、

「何を言うんだい。信頼関係がないわけないじゃないか」

と、赤羽さんは思い切り作り笑いをした。


「そうですか。そうですよね。おひとりにお一人ずつの秘書。信頼関係がないわけがないですよね。いやあ、羨ましいですね。そんなに美しい人と信頼関係で結ばれていて」

 え。美しいって言った?グサリ。


 私はかなり落ち込んだ。でも、目の前にいる戸田さんの顔色が曇り、ますます赤羽さんが変な作り笑いをしたので、落ち込んだ気持ちもすぐに吹っ飛んだ。

 なんでかな。相当この二人は、信頼関係がないのかしら。


「では、またこちらから連絡を入れますので。今日はどうぞ、お引き取りを」

 一臣さんはそう言うと、ソファを立ちあがった。

「あ。いいお返事をお待ちしていますよ」

 そう言いながら、赤羽さんはソファから立ち上がり、応接室を出て行った。


 応接室の前には樋口さんがいた。

「樋口、車は?」

「はい。今、ハイヤーを呼びました」

「え?いやいや。一臣さん、電車で帰りますからいいですよ」


「いいえ。わざわざご足労いただいたんだから、社までハイヤーでお送りしますよ。樋口、ちゃんと車まで送ってあげてくれ」

「はい。どうぞ、こちらに」

 樋口さんはそう言うと、専務の斜め前を歩いた。


 ところが、戸田さんはまだ、応接室の中にいた。

「あの…。一臣さん、いえ、一臣様」

「はい?」

「一度、お話をさせてもらえませんか?」


「…仕事のですか?それは僕は専務と話をしますが、秘書のあなたとはしませんよ」

「いえ、仕事というか」

「プライベートのことですか?」

「……時間、取ってもらえませんか?」


 ものすごく小さな声でそう戸田さんが聞いた。

「無理です。あなたとは、なんの接点もないし」

「相談に乗っていただきたいんです、私の仕事のことで」

「秘書の仕事の相談ですか?では、樋口か、うちの秘書課の人間が話を伺いますが」


「はい。ぜひ」

 そう言うと、戸田さんはほんのちょっと一臣さんに寄り添い、

「一臣様のような方のもとで、働けたら幸せですよね」

とそう囁いた。


 囁き声だけど、私も一臣さんのすぐ後ろにいたから聞こえてしまった。

「…あの専務のもとで働くのが、嫌なんですか?」

「……先ほど言われていたような、信頼関係はありませんから」

「なるほど。なんとなく見ていてわかりましたけどね」


「え?」

「でも、相談に乗っても、あなたのことを我が社で引き受けるわけにもいきませんし、あなたに僕の秘書をしてもらうわけにもいきませんよ」

「……」


 戸田さんはちらっと私を見た。

「あなたは、信頼できませんからね」

 一臣さんははっきりとそう言うと、

「どうぞ、お引き取りを」

と言って、戸田さんのことも応接室から追い出した。


 バタン。

 戸田さんが出て行くと、一臣さんはすぐにドアを閉め、ソファにドスンと座った。そして、まだ残っている私の冷たいお水をゴクゴクと飲んでしまった。


「ああいう女は苦手だ」

「え?」

「でも、ああいうふうに言い寄ってくる女と、今まで平気で俺は付き合っていたんだよなあ」

 え?!なんですと?


「お前も見てわかっただろ?きっと遊び慣れてる。あの専務とも信頼関係はなくても、肉体関係はあるかもな」

「ええ?!」

「平気で自分の膝の上に、専務の手も乗せていたし」

 ああ。そういえば。


「そんな会社と取引するわけないだろ。この資料も見てみろ。どこまでが本当のことかもわからないし、ここ数年で伸びてきた会社らしいが、裏でどんなあくどい事をして伸びたのかもわからないような会社だ」

「はあ」

 私も隣に座って、資料を見てみた。


「若い社長ですね」

「ああ。それにしても、自分の秘書を、どうだ、美人だろうと自慢した奴は初めてだ。それも、弥生と見比べたりして…。むなくそ悪い」

 あ、わかってたんだ。一臣さんも。


「あの」

「なんだ?」

「ああいう女性とばかり、付き合っていたんですか?」

「そうだな」


「…じゃあ、真面目に一臣さんのことを好きになるような人は?」

「もちろん、付き合わない。あとあと面倒なだけだろ?」

「じゃあ、私みたいな子とは?」

「まるっきり、無視だな」

「………」

 そうなんだ。無視なんだ…。


「ん?お前みたいなってだけで、お前のことを言ったんじゃないぞ。そこで落ち込むなよ」

「はい。ただ」

「ん?」

「私が婚約者じゃなかったら、絶対に一臣さんと話をすることもなかったんだろうなって」


「そうだな。会う機会もないだろうしな。でも、お前がたとえば、フィアンセでもなんでもなくて、秘書として緒方商事に入って来ていたら…」

「へんちくりんで、みょうちくりんなやつが来たって思うだけですよね。それも、私が一臣さんを好きになったら、無視されちゃうんですよね?」


「あはははは」

 なんで笑ったの?

「それでも、惚れてるかもな?他に俺のフィアンセがいたら、お前って何になっていたんだろう。俺の愛人か?でも、そんなタイプでもないし。お前と駆け落ちでもするか」

「え?!」


 駆け落ち?

「でも、お前なら、親父に紹介したら、即気に入られそうだな。ははは。結局どのみち、お前は俺と結婚するんじゃないのか?どんな出会いをしていたって」


「それって、どんな出会いをしていても、一臣さんが私を好きになってくれるってことですか?」

「ああ。認めたくなくても、きっと最後には認める。お前がそばにいないと駄目だって、きっと思い知らされて…」

 え?


 ギュウ~~~~~。

 うわ!抱きしめてきた。

「今の俺に何を言っても無駄だ。俺はお前以外の、誰にも惚れないって自分でもわかっているから」

「え?」

 ドキ!


「お前以外は考えられないんだよ」

 そう言うと、一臣さんは私のことをまた、ギュッて力強く抱きしめた。


 トントン。

「失礼します。片づけに来ました」

 そう言って、江古田さんがドアを開けた。


「うわ!!!」

 そして、私が一臣さんに思い切り抱きしめられているのを、見られてしまった。

「え、こ、だ!返事が聞こえてからドアを開けろって言っただろ!?」


「す、すみませんでした!」

「俺はこうやって、これからも弥生といちゃつくことがあるんだから、いちゃついてるところを見て、驚くくらいなら、絶対に勝手にドアを開けるな!!」

「はい~~!」

 そう言って、江古田さんはドアを閉め、廊下を走り去って行ったようだ。


 ああ!見られた。それも、まだ、私を一臣さんは抱きしめたままだ。それも、これからも、弥生といちゃつくことがあるって宣言までした…。


 顔が赤くなったり、青くなったり、真っ白になったり…。もう、わけわからない。

「まったく、あいつは…」

 一臣さんはまだ、ぶつぶつ言っているのに、いまだに私を離しれくれない…。





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