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変月  作者: ムー
6/7

意味深な問い

 あっという間に時間は流れ、嫌だ嫌だと思っているうちに約束の時間が来てしまった。

 教室のドアを開けるともう芹澤さんは着いていて、机の上には参考書やらプリントやらが広げられていた。


「お、おはようございます」


 挨拶するのが精一杯、本当は走って逃げ出したい気分だ。


「おはよう、今日はよろしくね」


 こちらこそ、と答えながら芹澤さんを横目で見る。

 ……綺麗な横顔。


「じゃあ始めようか」

「あ、はい」


 まずは簡単な文から、と言って黒板に何か書いていく。


「読んでみて」

「えっと……うたた寝に、恋しき人を見てしより、夢てふものは頼みそめてき…??」


 意味不明だ。

 みそめてきって何……!?

 そんな私の脳内を察したのか、芹澤さんが解説を始めた。


「これは恋の歌なんだ」

「うたた寝に好きな人が出てきた……って感じですか?」

「そう。ある日うたた寝をしていると夢の中に恋しい人が現れた、それからというもの夢を頼りにするようになってしまった……って歌」


 強い視線に顔を上げれば、芹澤さんが真摯な瞳で私を見ていた。


「可愛い歌だよね、女の子はこうゆうロマンチックなの好きなんじゃない?」


 軽い口調とは裏腹に、視線は私を威圧するようだった。


「そ、そうですね」


 教壇からゆっくり近付いてくる気配がする。


「南月ちゃんの夢にも出てきたりするのかな?」

「え……!?」

 机のすぐ側で立ち止まり、緩慢な動作で私の顔を覗き込む。


「出てきたりしない?」


 息遣いが聞こえるほど近くで問いかけられる。


「だ、誰がですか」


 かろうじて出した声は自分でも情けないほど掠れていた。

 射抜くような瞳が私を見ている。

 篝と同じ色の瞳が。 


「彼氏」


 ……へ?


「かれし……?」

「そう」


 そう言って芹澤さんは悪戯っ子みたいな顔で笑った。

 なんだ……隼人のことか。

 篝のことじゃなかったんだ。

 何も知らないような顔でからかう芹澤さんに、何故か寂しさを感じた。

 そう言えば……

 制服のポケットを探り、携帯電話をチェックする。

 メールの着信を知らせるライトが点滅していた。

 まさか隼人?


「どうかした?」

「あ、いえ……」


 わざわざ勉強教えてもらってるんだし、目の前で携帯チェックしちゃ悪いよね。


「なんでもありません、続きをお願……」


 そう言いかけた時だった。

 ドアが乱暴に開けられ、馴染みの顔が現れた。

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